(ニュージーランド大使館商務部/ニュージーランド貿易経済促進庁)
⑥プレシジョン・ファーミング(精密農業):ニュージーランド アグリテックのIoTソリューション
ニュージーランドはその基幹産業である農業の生産性を、アグリテックという新たなテクノロジーを起点とする営農活動の抜本的な刷新(イノベーション)により高めてきました。
小さいながらもバラエティに富んだ地形・環境を有す国土は、多種多様かつ豊かな農産物の生産を可能にする一方で、農業従事者に様々な課題を突き付け、ニュージーランド アグリテックは、農業従事者と共に、それら課題を乗り越える度に進化してきた、ともいえます。
加えて、農業輸出国として、消費者嗜好や人口構造の変化、気候変動など、経済発展と共にダイナミックに変化し続ける世界の農業市場に対応していく中、農産品と共にアグリテックの質も磨かれ、更にはアグリテック単体として輸出されるようになり、各国で高い評価を得るに至りました。
本稿では、進化を続けるニュージーランド アグリテックの中から、データを徹底的に活用し、きめ細やかなオペレーション改善を目指す「プレシジョン・ファーミング」を支援するソリューションを提供する企業をご紹介します。
超高精度で耕作地・牧草地の環境を把握し、農場運営の効率化と生産性向上を追求する
ニュージーランドでは、地理情報や動植物の生体・管理データを徹底的に活用してきめ細やかな農場の管理・運営を行う “プレシジョン・ファーミング”が浸透しています。
具体的には、地理情報(GIS)マッピングシステムを活用した広大な農地の土壌や水分量の分析、放牧中の家畜の居場所及び状態のリアルタイム管理や遠隔操作、耕作地・放牧地の水質・栄養分モニタリングを行うIoTセンサーなどのソリューションが導入され、プレシジョン・ファーミングが実践されています。
Farmote Systems(ファーモートシステムズ)
(画像:Farmote Systems, NZ AgTechStory より引用)
衛星データを活用し、放牧地の管理や放牧中の家畜管理を行うサービスを提供しています。
放牧地の牧草量や状態を測定・分析することが可能で、放牧に最適な場所の選定、灌漑が必要な個所の特定などを精確に行うことが可能です。
Halter(ホルター)
(画像:Halter, NZ AgTechStory より引用)
GPSによるトラッキングが可能な太陽電池式の牛用首輪を開発しています。
牛が水路やその他危険な場所へ近づかないように、首輪から鳴る音によって牛を誘導することが可能です。この首輪は携帯やタブレットから操作することができ、直接牧場に行かなくても、牛の場所を管理し、さらには搾乳場所まで牛を移動させることも可能です。
Outpost Central(アウトポストセントラル)
(画像:Outpost Centralウェブサイト)
IoTセンサーとソフトウェアを活用し、耕作地・放牧地のモニタリングを行うサービスを提供しています。
灌漑に必要な水量や土壌における水分量、さらに、給水所や温度、雨量、火災リスクなど指標化したデータを所有し、ユーザーと共有しています。
Hivemind(ハイブマインド)
(画像:Hivemindウェブサイト, Satellite hub)
モニタリングによる蜂の巣の管理や蜂蜜の生産性向上に特化した技術を開発しています。
蜂の巣の重さを6時間ごとに記録し、さらに蜂の巣内の湿度や温度、蜂の巣の密度を1時間ごとに記録し、記録した内容のレポーティングを行います。
圃場の管理は広大なのでGIS、IoT/センサーを用いるというのは理由の一つにすぎません。日々の施肥・潅水・与餌など貴重な資器材の活用を少しずつでも更に有効にすることで、年間を通じて大きなコスト削減や品質向上を意図するものです。ニュージーランドですでに幅広く活用されているソリューションを是非ご参照ください。
シリーズ『日本とそっくりな島国。ニュージーランドの農業技術』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日