(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。
先月は列島に寒波がしつこく居座り日本海側を中心に大雪となりました。下旬に入りようやく暖かい日が増えてきましたが、今月もまだ大雪となる可能性は残っています。それも普段降らないような地域にです。
また気を付けたいのは雪だけではなく、大雨・暴風の危険も高まるのが3月です。年度末で働く皆さんが非常に忙しい時期に、天気も慌ただしくなっていきそうです。
今月も農業に役立つ天気情報をわかりやすく楽しくお伝えしていきます。それでは「農てんき」スタートです。
3月のライオン
以前もこのコラムでお伝えした事がありますが、「3月はライオンのように荒れた天気で始まり、子羊のように穏やかに去っていく。」というイギリスのことわざがあります。
日本も3月は季節の変わり目です。日本列島には冬の寒い空気と、春の暖かい空気の異なる性質の空気が混在するようになります。この二つは仲が悪くぶつかり合い、発達した低気圧ができて大雨・大雪・暴風をもたらす訳です。
3月は発達した低気圧が発生しやすい
こちらは、2021年3月2日の天気図です。
冬の名残の寒い空気と、春先の暖かい空気がぶつかり合って発達した低気圧が発生しました。この時、北海道札幌では一日で24センチの水分を多く含んだ湿った重い雪が降りました。
一方で全国的に暴風が吹き荒れ、東京では瞬間的に22メートルの風が吹き、建設中の足場が崩れたり、電車が止まるなどの影響が出ました。
このように季節の変わり目となる3月はまさに発達した低気圧が発生し、荒れた天気となりやすいのです。
今月は南岸低気圧に注意
一方でもう3月だし、雪は降らないかなと思っていると痛い目を見る可能性があります。こちらは、2014年2月8日の天気図です。
これは南岸低気圧と呼ばれるパターンです。名前の通り日本の太平洋側(南岸)を進む低気圧の事で、例年3月、4月まで度々日本にやってきます。しかも特徴としては、普段雪の降らない太平洋側の地域で降るということ、そして水分を含んだ湿った重い雪という点です。
2014年のこの時期は、東京でも大雪となり、当時野菜の商社で働いていた私もしばらく交通網が麻痺してお店に納品ができない、そのほか野菜の生育不良が多発するなど各方面の対応に追われました。
関東で大雪の可能性も
なぜ、こんな話をするかというと、南岸低気圧による大雪の可能性が出てきているからです。こちらは、今月4日(火)の予想です。関東・北陸・東北など白い雪の表示で、さらにピンク色の大雪の表示も出ています。
ただ、この南岸低気圧の雨雲雪雲の動きは非常に予想が難しい事でも有名です。移動する場所や勢力によって雨で降るか雪で降るか、風が強いかなど随分変わってきます。今後の最新予報をこまめに確認して頂くようお願い致します。
3月は日に日に気温上昇
今月は荒れた天気でスタートしそうですが、さらに先がどうなるか見ていきます。
先月27日気象庁発表の1か月予報(平均気温)です。この1か月の気温が今後大ざっぱにどうなるかを表しています。北・東日本を中心に例年より高く、西日本は平年並みか高い予想です。要するに全体的には暖かい3月になりそうという予想ではあります。
ただし、期間中ずっと気温が高いかというと、そうではありません。暖かい日と寒い日を繰り返しながら、日に日に暖かさが増していく見込みです。
今月前半は東日本で雨が多い
一方、1か月予報(降水量)を見ると、東日本で平年並みか多い予想となっています。低気圧や前線が近づきやすく、期間の前半1日〜10日頃にかけてまとまった雨や雪となる可能性があります。
先ほどの南岸低気圧などを含め、東日本では何度か雨雲雪雲の影響を受ける日がありそうです。発達した低気圧が接近するおそれもあるため、雨雪だけでなく強風にも注意していきましょう。
春は北・東日本で暑い春か
さて、今回はさらに先の長期予報を見ていきます。こちらは、気象庁が発表した3か月予報です。3〜5月の春の時期が全体的にどんな天気になるかを予想しています。
すると、3〜5月の平均気温は、西日本では例年並みですが、北日本や東日本は高い予想となっています。さらに読み解くと4月後半から5月は暑いくらいの日が多くなってくるかもしれません。
一方で、やはりまだ4月は寒の戻りもある時期ですから、野菜の生育が進み開花後に起きる霜被害には注意が必要です。摘花作業などはこまめに予報を確認しながら、行っていく必要がありそうです。
西日本は雨不足に注意
続いて、こちらは3〜5月の降水量の予想です。平年並みの暖かさとなる予想の西日本や南西諸島では、この春は穏やかな天気が続き過ぎて、反対に雨不足となる可能性が出ています。
偏西風が例年に比べて日本の南付近を通るような流れになり、低気圧や前線が近づきにくくなるため降水量が平年並みか少なくなるかもしれないのです。
どんなに晴れても雨がないと野菜は育ちません。ほどよく雨が降るといいのですが、干ばつの影響を意識しておく必要がありそうです。
今年の夏も記録的な暑さか
また、今回のコラムではさらにさらに先の予想も見ていきます。それは暖候期予報です。
あまり聞き慣れない名前ですが、今年の6〜8月の「夏の天気を大ざっぱに予想」しているものだと思ってください。結論から言うと、今年も猛暑の日が全国的に多くなるかもしれません。
昨年は記録的な暑さであらゆる農作物の生育不良が発生、現在も影響は根強く残り野菜の高騰が続いています。今年も再び昨年のような事態に陥る可能性が出てきているのです。
また降水量は平年並みの予想ですが、近年梅雨時期に頻発している線状降水帯などによる突然の豪雨の可能性は全国的に十分考えられます。
なぜ猛暑となる予想なのか
今年も暑さに警戒が必要なのはなぜか、3つポイントがあります。
①日本の南の海の温度が例年に比べて高く、周りの空気は暑く湿った空気で充満しています。
②夏の暑さの原因となるチベット高気圧、太平洋高気圧の張り出しも例年に比べて強いです。この二つの高気圧の特徴は、上空の暖かい空気を吹き下ろし、圧縮させて地上をどんどん暑くするという、エアコンと同じような仕組みがあります。
③そして偏西風が日本の北を流れる予想なので、それらの暖かくて湿った空気が日本全域に流れ込みやすい状況です。農作物の厳しい暑さ対策を今から進めていく必要がありそうです。
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