【 オーガニック 】米国スーパーマーケットの「オーガニック」トレンド(上)

1.拡大している「オーガニック」売場

米国の主要スーパーマーケット(以降、スーパーと表記)で、「オーガニック」商品の取り扱いが拡大している。野菜・果物などの生鮮食品はもちろん、日配品や惣菜、加工食品でも各社が専用売場や陳列棚を設置して、集客策の一つとして注力している。
「オーガニック」商品を取り扱う米国のスーパーと言えば、ホールフーズマーケット(Whole Foods Market)が有名である。厳しい社内基準を設けて、店内で取り扱う全商品を「ナチュラル」「オーガニック」で取り揃えている。このように書くと、ごく限られた利用者に利用される店であるかのような印象を与えるかも知れないが、米国の多くの州(42州)に出店し(1)、米国食品小売業ランキング8位にランクされるほどの事業規模を持つ企業である。売上高は154億ドル(2015年度)に達する(1ドル=101円換で、1兆5,554億円)。
しかし、現在の「オーガニック」トレンドは、このような一部小売業のみにとどまらない広がりを見せている。ホールフーズマーケット以外の主要スーパーでも、品揃えの魅力向上策として、「オーガニック」商品に注力している。ホールフーズマーケットほど商品調達の基準が厳密でなく、価格も廉価であるため、取引先の確保や品揃え上の自由度が高い。プライベート・ブランド(※小売業のオリジナル商品展開。日本のセブンプレミアムのような商品)による「オーガニック」商品の提供も盛んである。オーガニック原料による冷凍ピザなど、独自のこだわり商品を揃えることで差別化を図っている。

2.「オーガニック」売場拡大の背景

こうした一般的なスーパーでのオーガニック商品の取り扱いによって、利用者には、「オーガニック」商品もそれ以外の商品も一度の買物で購入できる利点がある。売場では、「オーガニック」商品とそうでない商品とが混在しているが、「オーガニック」商品専用のコーナーや棚を設けて、識別しやすい工夫がなされている。広いスーパーの店内でも「オーガニック」商品を効率よく見つけることができ、一般的なスーパーを「オーガニックスーパー」として利用することも可能である。
大手スーパーが、このように「オーガニック」商品に注力する背景には、業態内のみならず、他業態との差別化をも迫られている、という事情がある。米国の消費者は、日常の買物をもっぱらスーパーで済ませる、という傾向が弱まり、ドラッグストアやディスカウントストアなど様々な業態を利用するようになっている(2)。そこでスーパーでは、強みである生鮮食品、およびそれらを利用した惣菜、日配品や加工食品の売場で「食べる」楽しさ、おいしさ訴求を強化する方策の一つとして、「オーガニック」商品を重視していると考えられる。

■米国スーパーの「オーガニック」青果売場の様子

米国スーパーの「オーガニック」青果売場の様子

■米国スーパーの「オーガニック」加工食品の棚
※手前の湾曲した2つの棚が、オーガニック食品の専用棚

米国スーパーの「オーガニック」加工食品の棚

■米国スーパーの「オーガニック」プライベート・ブランド冷凍食品

米国スーパーの「オーガニック」プライベート・ブランド冷凍食品

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<注>
(1) 米国の他、英国、カナダにも出店している。
(2) 出所: FMI “US Grocery Shopper Trends 2016” (2016)

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