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従事分量配当の課税仕入れの時期
農事組合法人では、消費税の課税期間終了後に支払われる従事分量配当が当該課税期間の課税仕入れとなる点に留意する必要があります。
従事分量配当は 、①定款に基づいて行われるものであること、②役務の提供の対価としての性格を有すること--から、課税仕入れに該当するという見解が国税庁から示されました。
従事分量配当の「課税仕入れを行った日」とは、課税仕入れに該当することとされる役務の提供を受けた日をいい、これらの日がいつであるかは「資産の譲渡等の時期」の取扱いに準じます(消費税法基本通達11-3-1)。
また、「課税仕入れを行った日」は、法人税の課税所得金額の計算における損金の額に算入すべき時期に関し、別に定めがある場合には、それによることができますが(消費税法基本通達9-6-2)、法人税では協同組合等に該当する農事組合法人が決算確定の時に決議した、その組合員に対しその者が当該事業年度中にその法人の事業に従事した程度に応じて分配する金額(従事分量配当の金額)は、その事業年度において損金算入します(法人税法第60条の2)。
このため従事分量配当は、支払った課税期間(事業年度)ではなく従事した課税期間(事業年度)の課税仕入れとなります。
したがって、消費税の申告では、付表2-1「課税売上割合・控除対象仕入税額等の計算表」の「課税仕入れに係る支払対価の額(税込み)⑨」欄に、会計ソフトで集計した課税仕入れの金額だけでなく、従事分量配当の金額を加算した金額を記載する必要があります。
●従事分量配当の課税仕入れの時期
従事分量配当の経理
事業年度終了後に開催される通常総会の日付で次の仕訳を行います。
なお、消費税の一般課税による課税事業者が税抜経理方式により経理処理を行う場合において、配当の計算の対象となった事業年度の課税仕入れとするときは、従事分量配当に係る消費税額分納税額が減ることによって雑収入が生じ、その分、税引前当期純利益が増えることになります。
従事分量配当に係る消費税の適用税率
従事分量配当に係る消費税の適用税率について、「事業年度を単位とする役務の提供に係る対価と解することが相当」であるため、「従事分量配当金に係る消費税の適用税率は、農事組合法人の事業年度終了の時における税率を適用すること」となるという見解が財務省担当者から示されました。
このため、農事組合法人においては、事業年度終了の日が2019年10月以降であれば、事業に従事した日にかかわらず、消費税率10%で仕入税額控除を行うことになります。
決算の際の消費税差額についての留意点
税抜経理方式では課税期間の終了時に決算整理で仮受消費税の金額と仮払消費税の金額を相殺し、消費税が還付となるときはその差額の仮払消費税を未収消費税に振り替えます。相殺した差額と還付される消費税の額との差額(消費税差額)は、その事業年度の雑収入として経理します。具体的な仕訳は次のとおりです。
この場合の消費税差額の雑収入の金額は、通常は千円未満となりますが、従事分量配当を行う農事組合法人の場合、従事分量配当の金額の110分の10に相当する金額を若干超える金額となります。これは、税抜経理方式を採用している場合であっても、従事分量配当の金額は税込金額で課税仕入れの金額に加算するためです。
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