更新日
年度更新
労働保険(労災保険・雇用保険)の保険料は、毎年4月1日から翌年3月31日までの1年間を単位として計算されることになっており、その額はすべての労働者に支払われる賃金の総額に、その事業ごとに定められた保険料率を乗じて算定します。
労働保険の保険料は、年度ごとに概算で保険料を納付し、保険年度末に賃金総額が確定したあとに精算するという方法をとっています。
したがって、事業主は、前年度の保険料を精算するための確定保険料の申告・納付と新年度の概算保険料を納付するための申告・納付の手続きが必要となり、これを「年度更新」といいます。
何をいつまでにどうするのか
あらかじめ労働保険番号、事業の所在地・名称、保険料率等が印刷された「労働保険概算・確定保険料/石綿健康被害救済法一般拠出金※申告書」(以下「申告書」といいます。)が都道府県労働局から各事業主あてに送付されるので、この書類を使用します。
この申告書に必要事項を記載、事業主印を押印のうえ、保険料等を添えて、金融機関又は所轄都道府県労働局及び労働基準監督署のいずれかに、6月1日から7月10日までの間に提出します。
※一般拠出金とは、石綿による健康被害の救済に関する法律により石綿(アスベスト)健康被害者の救済費用に充てるため、事業主に負担してもらうもので、平成19年度の年度分より申告・納付することとなりました。
手続上の留意点
年度更新において納付する労働保険料の算定については、その事業で使用されるすべての労働者に支払った賃金総額に、その事業に応じて定められた保険料率を乗じて算定します。
また、一般拠出金の額については、賃金総額に一般拠出金率(一律1,000分の0.02)を乗じて算定を行います。
分割納付ができる場合
概算保険料額が40万円以上の場合、(ただし、労災保険か雇用保険のどちらか一方の保険関係のみ成立している場合は20万円)又は労働保険事務組合に労働保険事務を委託している場合は、労働保険料を3回に分割して納付することができます。
農業は、二元適用事業といい、労災保険と雇用保険の保険料の徴収事務を別々に行っているので、労災保険、雇用保険のそれぞれで20万円以上の場合に、それぞれ分割納付が可能です。
前年度以前に成立した事業場 | 4/1〜5/31に成立した事業場 | 6/1〜9/30に成立した事業場 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
第1期 | 第2期 | 第3期 | 第1期 | 第2期 | 第3期 | 第1期 | 第2期 | |
期 間 | 4/1 〜7/31 |
8/1 〜11/30 |
12/1 〜3/31 |
成立した日 〜7/31 |
8/1 〜11/30 |
12/1 〜3/31 |
成立した日 〜11/30 |
12/1 〜3/31 |
納期限 | 7月10日 | 10月31日 | 1月31日 | 7月10日 | 10月31日 | 1月31日 |
成立した日の 翌日から50日 |
1月31日 |
社会保険料の決定方法等
社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、従業員各々の標準報酬月額をもとに決めています。いちいち毎月の報酬をもとに社会保険料を算出していたのでは、事務が非常に煩雑になります。
そこで、報酬の額をいくつかの等級に区分して仮の報酬を定め、各々の従業員について原則として1年間はその報酬をもとに毎月の保険料の計算を行うようにしています。
標準報酬月額・標準賞与額
健康保険や厚生年金等の保険料は、被保険者の報酬に保険料率を掛けた額を、被保険者と事業主が折半します。ただし、事務を簡略化にするために、月給も賞与も1万円単位や千円単位の切りの良い数字に直した上で計算します。このように置き換えた月給を標準報酬月額、賞与を標準賞与額といいます。
標準報酬月額の決定方法
イ 資格取得時決定
被保険者資格を取得したとき(入社時)にその人が受けるであろう報酬額により決定します。
1 月給制:その額をもとに標準報酬月額を決定します。
2 日給、時間給:雇入れの前1ヶ月間に、その事業所で同じ形態で報酬を受けた人の平均額をもとに標準報酬月額を決定します。
ロ 定時決定
標準報酬月額は、実際の報酬額との間に大きな差が出ないように、毎年1回、4〜6月に支給された報酬に基づき決められます。これを定時決定といいます。
事業主は、全被保険者の4〜6月の報酬を「算定基礎届」に記入し、7月1日〜10日の間に保険者に提出します。この定時決定で決められた新しい標準報酬月額は、その年の9月から翌年8月まで使用されます。
【報酬月額の計算方法】
報酬月額は、4〜6月の3か月間に支給された報酬について、基本的には次のように計算します。
- 支払基礎日数※が17日未満の月は、計算の対象から除く
- 月々支給されるもので、現物は標準価額などにより金銭を換算し、各月の報酬月額を計算する。なお、4〜6月に年3回以下の賞与があれば計算から除く。(年4回以上賞与などが支給される場合は標準報酬月額の対象となり、報酬月額の計算にその月割額を算入します。)
-
対象月の報酬総額を対象月で割る。
※支払基礎日数とは、給与計算の対象となる日数をいいます。日給制の場合は、出勤日数が支払基礎日数になります。月給制や週給制の場合は暦の日数となりますので、土曜日、日曜日、祝日などの休日も含みます。ただし、欠勤日数分だけ給与が差し引かれる場合は、就業規則、給与規程等により事業所が定めた日数から欠勤日数差引後の日数となります。なお、有給休暇は支払基礎日数に含まれます。
【定時決定を行わない者】
- 6月1日から7月1日までの間に被保険者の資格を取得した者
- 7月から9月までの間に随時改定または育児休業等を終了した際の改定が行われる者 その他の注意点
-
病気療養中のため無給の被保険者の場合
算定基礎届は、4〜6月の3か月間の実際の給与をもとに算定しますが、この期間病気欠勤中で無給となっている被保険者であっても、9月以降の標準報酬月額が実情に合わないものとすることはできません。
この場合も算定基礎届は提出し、保険者において従前の標準報酬月額と同じ月額として決定されます。
-
通年の月平均額と著しい差がある場合
「当年の4月、5月、6月の3か月間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」と「前年の7月から当年の6月までの間に受けた報酬の月平均額から算出した標準報酬月額」の間に2等級以上の差を生じた場合であって、当該差が業務の性質上例年発生することが見込まれる場合(いずれも支払基礎日数が17日未満の月を除く。)には、前年7月から当年6月までの間に受けた報酬の月平均額から算定した標準報酬月額にて決定します。
ハ 随時改定
基本給等の固定的賃金に著しい変動があり、継続した3か月間(各月の報酬支払の基礎日数は17日以上)に受けた報酬の総額を3で除した額が、その者の標準報酬月額の基礎となった報酬月額と比べて、著しく高低を生じた場合に、その額を報酬月額として、固定的賃金の変動が生じた月から4月目に新しい標準報酬月額に改定されることになります。これを随時改定といいます。
※固定的賃金の変動とは、ベースアップ、ベースダウン、賃金体系の変更(時給から月給に変更など)、基礎単価の変更、役付手当がついた場合などをいいます。
固定的賃金 | 月給・日給・時給・役付手当・家族手当・住宅手当など |
---|---|
非固定的賃金 | 残業手当・休日勤務手当・皆勤手当・宿直手当など |
ニ 育児休業等終了時改定
育児休業または育児休業制度に準ずる休業を終了した被保険者が3歳未満の子を養育している場合に、保険者(社会保険事務所等)に届け出れば、育児休業等の終了日の翌日の属する月以降3か月間の報酬の平均額にもとづいて標準報酬月額を改定します。
-
標準報酬月額の下限と上限
健康保険・・・・58,000円(1等級)から1,390,000円(50等級)
厚生年金保険・・88,000円(1等級)から650,000円(32等級)
賞与に対する保険料
賞与からも毎月の賃金と同様の保険料を納めます。
保険料の対象となる賞与の額は、被保険者に支給される賞与の1,000円未満を切り捨てた額で、これを標準賞与額といい、各々の保険料は、これに各保険料率を掛けて求めます。
-
標準賞与額の上限
標準賞与額には支給1回ごとの上限が次のように定められています。
健康保険・・・・・・・・ 標準報酬額の累計額(4月〜翌3月)が540万円まで
厚生年金保険・・・・・・ 150万円
社会保険料の控除の仕方
社会保険料は、被保険者負担分を毎月の給与から控除して、会社負担分と合算したものを会社を管轄する社会保険事務所に納めます。給与からの控除することができる保険料は、前月分の保険料になります。
イ 入社時の社会保険料の控除
社会保険の資格取得日は入社した日です。そして入社した日の属する月から社会保険料がかかります。社会保険料は月単位に徴収するので、月の途中入社だからといって日割計算はしません。
例えば、8月1日に入社したAと8月31日に入社したBの月額給与の額が同じであれば、8月分の保険料は同額です。また、A、Bどちらの8月分の社会保険料も9月に支給される給与から控除します。
ロ 退職時の社会保険料の控除
【月の途中に退職する場合】
被保険者資格の喪失日は、退職した日の翌日になります。資格喪失日の属する月の社会保険料は徴収せず、前月分まで徴収します。
例えば、Cさんの退職日が8月29日とすると、資格喪失日は8月30日となり、8月分の社会保険料は徴収しません。Cさんの8月分の給与から控除するのは7月分の社会保険料のみです。
【月末に退職する場合】
月末に退職する場合、資格喪失日は退職日の翌日なので、翌月1日となります。社会保険料は資格喪失日の属する月の前月分まで徴収しますから、退職日の属する月の社会保険料は徴収します。
例えば、Dさんの退職日が8月31日とすると、資格喪失日は9月1日となり、8月分の社会保険料は徴収することになります。退職の場合に限り、当月の給与から当月分も控除できますので、Dさんの場合、8月に支給される給与から7月分と8月分の2か月分の社会保険料を控除することになります。
ハ 賞与の社会保険料の控除
賞与にかかる保険料は、資格取得月(資格取得日前を除く)以降に支給された賞与から保険料の対象となり、資格を喪失した月の賞与は対象となりません。
例えば、8月15日に賞与が支給された場合、上のCさん(退職日8月29日⇒資格喪失日8月30日)の賞与からは社会保険料の控除はしませんが、Dさん(退職日8月31日⇒資格喪失日9月1日)の賞与からは社会保険料を控除します。
ニ 介護保険の資格取得日と喪失日
介護保険の被保険者の資格取得日は、40歳の誕生日の前日になります。また、資格取得日の属する月の保険料から徴収することになります。
例えば、Eさんは9月1日が誕生日で40歳になる場合、資格所得日は前日の8月31日となり、8月分の保険料を9月の給与から控除することになります。また、介護保険の資格喪失日は65歳の誕生日の前日となり、資格喪失日の属する月の保険料は徴収しません。Eさんの場合は、資格喪失日は8月31日となり、保険料の最終控除は7月分まで(8月給与からの控除)です。
当該コンテンツは、「キリン社会保険労務士事務所」の分析・調査に基づき作成されております。