- 農業にも携わる気象予報士 酒井紀子さんが、蓄積した気象データを分析し、これからの農場の天気を読み解きます。
1 オホーツク海高気圧がもたらす「低温」
先日のコラムで今年の夏は平年並みの暑さが予想されていると書きましたが、少し状況が変わりました。7月8日気象庁発表の早期天候情報によりますと、7月22日頃にかけて東北太平洋側、関東甲信、四国、九州で低温傾向になるとの見通しです。
少なくとも7月は去年と打って変わって涼しくなるところが多く、地域によってはひんやりな気配です。個人的には過ごしやすくていいのですが、この時期は農作物にとって大事な時期ですから、低温が続くのは困りますね。
(気象庁HPより)
四国と九州は梅雨前線の影響によるものが大きいようなのですが、東北太平洋側と関東甲信の低温の理由はズバリ「オホーツク海高気圧」の出現。
(気象庁HP画像に一部加工)
上記天気図を見ると北海道の北に高気圧があります。これがオホーツク海高気圧と呼ばれる高気圧で、その名の通り、オホーツク海周辺に現れます。梅雨時期に現れることが多く、冷たい空気を持っており、一度現れるとしばらく居座ることが多いのが特徴です。
オホーツク海高気圧が現れると、北日本〜東日本太平洋側には冷たく湿った気流の流れ込みが続くため、低い雲が広がりやすくなります。上記天気図の北海道から東北にかけて注目すると、北東から等圧線が垂れ下がっている部分があります(点線で○をつけた部分)。
これはオホーツク海高気圧の冷たい空気が北日本東日本へ流れ込んでいることを示しています。約2週間先までオホーツク海高気圧の影響を受けそうで、それに伴い気温も低めで経過する予想となったのです。
2 太平洋側と日本海側の気温差が拡大
(気象庁HP画像に一部加工)
7月8日14時の東北南部、新潟の気温を見てみると、太平洋側と日本海側で12度も差がありました。また、同じ時間の日照時間を見ると脊梁山脈の東と西でくっきり!太平洋側は雲が広がっていても、低い雲が背の高い山を越えられず、日本海側では晴れ間が広がっていたというわけです。
この時期に吹く冷たく湿った北東風を「やませ」と呼びます。私は仙台出身なので、やませになじみがありますが、西日本の皆様はあまりなじみがないかもしれませんね。
やませが続くと冷害になることが多いです。1993年の記録的な冷夏もこのオホーツク海高気圧から吹いてくる「やませ」によるものでした。
今後、天気図を見る機会があったら、オホーツク海高気圧に注目してみてください。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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