- 国産農産物に関する輸出・インバウンドの専門家である株式会社JTB 西川太郎さんが、外国人の日本食購買行動に関するデータをもとに戦略を読み解きます。
1.はじめに
2020年東京オリンピック・パラリンピックを控え、国・自治体そして観光関連事業者によって、訪日客の誘客だけでなく、訪日客の消費需要を吸収する取り組みが盛んに行われ始めています。
それは、日本滞在中の消費(訪日消費)だけでなく、帰国後の消費(訪日後消費)にもつなげていくことで、地域産業の持続的な成長を図っていくことを目的にしています。
他方、外国人の訪日観光目的の多くは、地域の自然・景観、そして日本の食を求めていて、まさしく地域で育まれた食文化、地域の食材がキラーコンテンツとなっています。
今まさに、訪日消費から訪日後消費という好循環を構築することが、地域産品の海外販路創出・拡大の重要な鍵と言えます。
<資料① 訪日消費から訪日後消費の好循環>
2.国産農林水産物等の輸出動向
ここがポイント!
①国産農林水産物等の輸出額が、2018年9,068億円を超え、政府目標の1兆円達成が目前
②和牛、日本酒、果物の輸出が好調に推移
③2018年の輸出額上位は、1位香港(2,115億円、構成比23.3%)、2位中国、3位米国の順
④アジアへの輸出額が全体の輸出額の72%以上
⑤TPP、EPA等経済連携の拡大
<資料② 国産農林水産物等輸出額推移>
※財務省「貿易統計」を基に農林水産省作成したものを引用
3.外国人観光客の訪日動向
ここがポイント!
①2018年の訪日客数は、3,119万2千人
②2018年の訪日数の上位は、1位中国(838万人、構成比26.8%)、2位韓国、3位台湾
③中国、韓国、台湾、香港等アジアの訪日客数は、全体の訪日客数の84.6%
④訪日の最も多い目的は、アジアでは、四季の自然探訪と食、欧米豪では、伝統文化・日本食文化の体験
⑤続く国際イベント
2020年東京オリンピック・パラリンピック、2021年ワールドマスターズ、2025年大阪万博
<資料③ 訪日客数推移>
※観光庁及び日本政府観光局(JNTO)資料を基に農林水産省が作成した資料を引用
4.訪日客の消費動向
ここがポイント!
①2018年の訪日客の消費額は、4兆4,161億円
②そのうち、食品・農産物の土産物消費額が、3,075億円
③関西空港国際線制限エリア内の農産物販売では、高価なシャインマスカット、桃の販売が好調
④越境ECサイトによる販売事業者が増加
⑤農林水産省「食かけるプロジェクト」「Savor Japan」など訪日客に対して地域の食を絡めた魅力発信、体験コンテンツ支援、輸出拡大への取り組み
<資料④ 訪日客消費動向>
※観光庁及び日本政府観光局(JNTO)資料を基に農林水産省が作成した資料を引用
5.訪日客の購買動向を輸出につなげる
訪日客は、飲食、調理、生産、そして購入等の食を絡めた体験や日本食文化に触れることで、日本独特の農山漁村の多様性の魅力を感じ帰国します。帰国後、再購入行動を引き出すために、地域産品を海外に流通させることが不可欠です。
従来は農林中央金庫の定期刊行物『輸出の芽』を通じて、輸出実現に向けた食習慣や輸出規制等の実務的な情報を提供してきましたが、2019年度は、「海外の消費者に日本の食をいかに食べてもらうか」をコンセプトに、香港、マレーシア、台湾の海外消費者に対して、日本食購買行動のマーケティング調査を実施し、海外消費者の購買行動を可視化させて、輸出販売可能な商品つくりに生かしていただくために情報を提供します。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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