- 農業法人が成長するうえで重要な「資本政策」の位置づけ・考え方について、法人の成長をサポートするノウハウ・実績を多数持つアグリビジネス投資育成株式会社のコンサルタントがわかりやすく解説します。
資本政策の位置づけ、考え方
-本コラムでは、資本政策を通して、農業経営者の方が中長期的な経営観点を持って日々の経営にあたれるような考え方をお伝えしていきます。毎月、毎期のやりくりで精一杯な経営者の方、普段は決算書のことを税理士の先生に任せきりになっている方にこそ、決算書類を味方につけて今後の展開を考えていくヒントになればと思います。
そもそも「資本」とは
資本とは会社が事業を行う原資となる資金のことです。資本はその源泉で分けて考えられ、オーナーや経営陣、その家族など株主が出資した株主資本(資本金)や会社が生み出した利益の積立てである利益剰余金は「自己資本」として純資産に計上され、金融機関等から調達したお金は「他人資本」として負債に計上されます。
資本政策とは
資本政策とは、会社の経営において事業計画を達成するための「資金調達」と「株主構成」の計画のことを言います。
事業計画を立てる際に考える資金調達としては、金融機関からの借り入れや補助金・助成金が多いのではないでしょうか。これらのほかにも、資金を調達する方法として資本金を増やす、会社の利益を蓄えていく、という手段もあります。
資金は調達方法によりコストの大きさとコストが発生するタイミングが異なります。また、会社経営に関わる重要事項の決定(=経営権)は株主構成に委ねられているため、資本金を増やす場合は株主構成を検討することも重要です。
このように必要な資金をどうやって、どのタイミングで調達するかということは会社の将来に影響するため、純資産(自己資本)と負債(他人資本)のバランスや株主構成を考慮して計画を立てていく必要があるのです。
会社の経営においては緊急事態のために予定外の資金調達を行う場合もあり得ますが、本コラムでは中長期的な経営観点から資本政策を考える必要性についてご説明します。
法人の財産形成の意義
-農業経営者には、個人事業主の場合もありますが、本コラムでは法人の農業経営者向けに、会社として財産形成していくメリットをご説明します。
法人の決算書類のうち、貸借対照表の右下に純資産(自己資本)の欄があり、資本金のほかに利益剰余金という項目があります。
これは、会社が設立からその期までに会社に残した利益(損失)の累計を表し、当期純利益がプラス(黒字決算)の場合は増加、マイナス(赤字決算)の場合は減少します。
利益剰余金は配当を分配する源泉となるため、株主へ配当した場合も減少します。利益剰余金が増加すると、純資産全体の額も増加していくことになります。
節税対策の観点から、会社としてあえて利益を出さないようにする場合、法人税など目下の出費を抑えられたように見えます。
しかし、会社の利益を抑えすぎることで、いざという時の資金が手元にないだけではなく、金融機関等から経営が厳しい会社と評価されることになり、融資を受けにくくなる恐れもあります。
このように、会社の経営では毎期の決算が資本政策に与える影響は小さくありません。
中長期的な経営観点から会社の成長戦略や事業の展開を考え、それを踏まえたうえで資本政策を策定し、計画的に実行していくことが、経営の舵取りをしっかりと握っておくことにつながります。
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