国産農産物に関する輸出・インバウンドの専門家である株式会社JTB 西川太郎さんが、外国人の日本食購買行動に関するデータをもとに戦略を読み解くシリーズ。
第2回目の今回は、「日本食材に関する調査」をもとに台湾の消費者の購買ポイントを解説します。
「日本産の食材に関する調査」台湾編
台湾は、日本産食材の人気が非常に高く、日本の農産物の輸出相手先として、知っておくべき重要な国のひとつです。本章では、日本好きの台湾の消費者(FUN!JAPANのWEBサイト会員)を対象に、2019年9月に実施した「日本産の食材に関する調査」について解説します。
※「FUN!JAPAN」とは、株式会社Fun Japan Communicationsが運営するアジア467万人の日本好きコミュニティサイトです。
調査の概要
日本産食材調査.pdf結果の概要
ライフスタイルについて
Q1. あなたの性別と年齢は?
今回の調査回答者は、男性は30代、女性は40代の回答がボリュームゾーン。
Q2. 普段の外食の頻度は?
普段の外食頻度としてほぼ毎日外食が最多(42%)となっており、ついで週2〜3回の外食。
Q3. 就労状況等あなたのライフスタイルは?
最多は自宅外でフルタイムで働いている層。男女問わずほぼフルタイムで働いている。
Q4. 自宅で料理をするのは主に誰?
自宅での料理は、同居する家族または近くに住む家族が行う、という回答が最多。次いで、自分で料理をする、という回答。
日本産食品について
Q5. 買ったことがある日本産の食品は?
買ったことがある人が最も多いのはスナック菓子。次いでカップ麺、弁当/総菜の順。買った経験が最も少ないのは生鮮食料品、次いで、米、冷凍食品など。
Q6. 日本産の食品をどこで買ったことがある?
現地のスーパー、デパート等での購入経験が過半数。健康食品、お酒やスナック菓子は、日本で買ってくる、買ってきてもらうという回答も過半数を超える。
食品を買うタイミングについて
Q7. 日本産の食品を買う頻度やタイミングは?
健康食品は「常時家に置いている」との回答が最多。健康食品以外は「たまに買う(思い出したら買う)」が最多。スナック菓子/総菜などは「なくなったら価格を調べて買う」という人も多い。
なぜ買う? どこで知った? なぜ買わない?
Q8. 日本産の食品を買った理由は?
健康食品については「機能が優れている」を選択した人が多く。健康食品以外はすべて「おいしい」が購入する最大の理由。
Q9. 「買ったことがある」「食べたことがある」食品を初めて食べた場所は?
「日本に行ったとき」が最多。台湾現地での流通も多い弁当や麺類は「自国で初めて食べた」も多い。
Q10. 「買ったことがある」「食べたことがある」食材を初めて知ったきっかけは?
ほぼすべての食品で「日本に行ったとき」が最多。弁当や麺類は、店頭での喫食がきっかけの人も多い。健康食品は、知人から聞いた、雑誌・テレビから知った、という人が他と比べて非常に多い。
Q11. 食べたことはないが知っている理由は?食べたことはあるが買わない理由は?
お酒・みそ/納豆/漬物・健康食品は日常的に摂取しない人にとって、あるきっかけで知っていたとしても、台湾現地で自ら購入する食品ではない。日本産を食べたことがない、買ったことがない理由として、冷凍食品や麺類、テイクアウトの食品については「試したことがない/知らない」を挙げた人が多く、生鮮食品については「価格が高い」を挙げた人が多い。
より販売拡大していくために
Q12. 今後、日本産の食品が、より台湾で広まるためには何が必要?
「手に入る店を増やす」、次いで「価格を安くする」、「店頭で試食を設ける」の順で、回答が多い。「レシピの紹介」や「共同購入」といった取り組みも有効との回答あり。
調査結果の深堀!〜台湾消費者の購買ポイント
今回の調査対象は、30代〜40代で、会社で働いている男女がボリュームゾーンです。つまり学生、ご高齢者ではなく、扶養するこどもがいる家族世帯ボリューム層と言えます。そのような家族世帯における日本食の購買ポイントについて、ご解説いたします。
食のライフスタイルの変化
調査データでは、「毎日外食する」と答えた方が多いという結果となっています。なぜなら台湾では、共稼ぎが一般的だからです。
しかし昨今、毎日外食という比率も高いとはいえ、以前と比べては低くなってきています。それは今、台湾のスーパーマーケット、特にコンビニエンスストアでは、電子レンジの利用などで手軽に調理できるお弁当、お惣菜など中食(購入食とも言う)の売り上げが拡大していることからも推測できます。
このように台湾では、食に対するライフスタイルが変容しつつあるのです。また、1週間の台湾の食卓調査でも、朝食においても、台湾伝統のお粥などではなく、生サラダ、ヨーグルト、パン、コーヒーなど西洋食を食べる傾向になってきていることが窺えます。
台湾食卓調査(参考資料)
(1)世帯-J氏 女性(既婚 36歳 会社員)/ 世帯携帯:本人+夫(39歳 会社員)+息子(8歳)+娘(5歳)
台湾の中食市場への参入の可能性
調査結果のとおり、台湾内での日本産食材・食品の購入は、スナック菓子、インスタント食品、手巻き寿司、お惣菜などの購入食が人気です。
それは、台湾のライフスタイルの変化に加えて、現地スーパーマーケット、コンビニエンスストア等小売店舗で、様々な種類を常時販売されるようになったことが大きな要因と言えます。
では、中食(購入食)に、日本産農林水産物・食品の参入のチャンスがあるのでしょうか?そのヒントが、69.1%の訪日外国人が利用している日本のコンビニエンスストアでの購入動向(日本政府観光局調べ)から読み取れます。
今、台湾を含むアジアの訪日観光客においてコンビニエンスストアで最も売れているのが牛乳です。日本の牛乳は、安全安心という高い評価を受けています。
また、観光地が記載されているお菓子類、例えばキットカットのご当地版や地域の果物を使ったポッキーなども人気を博しています。さらに「抹茶」を使った食品も人気です。
今後、日本のコンビニエンスストア等で売れ筋の企画商品及びコンセプトが、台湾での輸出拡大の可能性が高いことは、Q9、Q10のアンケート結果からも明らかです。
商品コンセプトとして、「安全安心の生鮮食品」「観光地名記載の食品」「抹茶のフレーバー等を使った食品」を開発してみてはいかがでしょうか?
今後の展望
2018年の台湾人訪日旅客数は、475万を超え、台湾人約6人に1人が日本に来ている計算になります。また、リピーターも多く、訪日目的として日本食が最上位となっています。
そのため、訪日客が利用するコンビニエンスストア等で、訪日客を狙った商品を参考に、自社商品の開発、改良に取り組むヒントを得ることができます。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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