国産農産物に関する輸出・インバウンドの専門家である株式会社JTB 西川太郎さんが、外国人の日本食購買行動に関するデータをもとに戦略を読み解くシリーズ。
第3回目の今回は、「日本食材に関する調査」をもとに香港の消費者の購買ポイントを解説します。
「日本産の食材に関する調査」香港編
日本に関心の高い香港消費者向けに、日本産の食品の購入に関する調査を実施しました。調査概要及びその結果は、以下の通りです。
調査の概要
日本産食材調査 香港編.pdf結果の概要
ライフスタイルについて
Q1. あなたの性別と年齢は?
性別:男性61名、女性89名
年代:①30代 34.7%、②40代 29.3%、③50代 22.0%、④20代 12.0%
(扶養する子供がいる家族世帯がボリューム層)
Q2. 食品を購入する際、重視する点は?
① 価格74.7%、② 品質73.3%、③ 鮮度65.3%、④ 賞味期限42.7%
Q3. ギフトとして食品を購入する際に最重要視するのは?
① 品質 32.0%、② 鮮度 16.7%、③価格 14.0%
Q4. 店舗で販売される食品のラベル表示項目のうち、食品を購入する際確認する項目は?
① 消費期限・賞味期限83.3%、② 生産国・生産地70.7%
Q5. ギフトとして贈る食品を購入する際に最重要視するのは?
① 消費期限・賞味期限37.3%、② 生産国・生産地30.0%
Q6. 食品をギフトとして渡す/買うシーンは?
① 旅行土産65.3%、② 春節54.7%、③ 中秋節46.7%、④ クリスマス38.0%
Q7.直近の1年間で食品をギフトとして渡したシーンは?
① 旅行土産54.0%、② 春節33.3%、③ 中秋節25.3%、④ クリスマス14.0%
Q8. 直近の1年間で「日本産ブランド」の食品をギフトとして渡したシーンは?
① 旅行土産58.6%、② 春節19.5%、③ 中秋節15.8%、④ クリスマス9.8%
Q9. 直近の1年間で「日本産ブランド」の食品をギフトとして渡したものの価格は?
① 旅行土産(78名):3000円未満60%、3000円以上40%
② 春節(26名):3000円未満31%、3000円以上69%
③ 中秋節(21名):3000円未満43%、3000円以上57%
④ クリスマス(13名):3000円未満62%、3000円以上38%
Q10. 直近の1年間で(日本産品以外の)食品をギフトとして渡したものの価格は?
① 春節(22名):3000円未満50%、3000円以上50%
② 中秋節(17名):3000円未満59%、3000円以上41%
③ クリスマス(8名):3000円未満38%、3000円以上63%
Q11. 食品ギフトのうち、もらうとうれしい食品は?
① お菓子57.0%、② 果物53.7%。③ スイーツ38.9%、④ 酒類30.9%
調査結果の深堀!〜香港消費者の購買ポイント
(1) 日常的な食品購入のポイント
「価格と品質のバランスが大事!」
Q2では、価格と品質を重要視する消費者が70%超、鮮度重視も65%超となっています。香港の消費者にとって、品質とは、広い意味で安全安心、美味しさの他、形状や鮮度も含まれます。
特に農産物の産地のない香港では、青果等新鮮な食品は、毎日使用する量だけをスーパーマーケットや市場で購入することが多く、香港の消費者にとって、鮮度は付加価値と考え、価格は付加価値と連動しています。
☑品質に包含される「鮮度」保持の工夫は、商品の付加価値を高める手段となります。
☑生鮮食品は、毎日使用する分を購入するので内容量を考慮する必要があります。
(2) 非日常的な食品(ギフト)購入のポイント
「ギフトは、品質が一番!」
Q3では、品質が、価格を大きく引き離して最重視されています。香港消費者は、贈答先に喜んでもらえる、より良いものを贈るという面子気質があることが理由と言えます。また、贈る側も贈られる側も食品ギフトのニーズの上位は、お菓子、果物で一致していることから、香港消費者の嗜好が現れています。
☑ギフトには高品質のお菓子、果物のニーズが高い
☑贈る側の面子をくすぐる、商品コンセプト、パッケージの工夫が付加価値に
(3) ラベル表示が購入を決める大きなポイント
Q4、Q5では、ラベル表示項目のうち、「消費期限あるいは賞味期限」と「原材料の生産国・生産地」を確認している消費者が7割以上の結果となっています。それは「生産国・生産地」がその商品の品質に関わる根拠となり、「消費期限あるいは賞味期限」が安心に関わる根拠として、購入の判断をしているからと言えます。
香港は、ほとんどの食品が海外からの輸入に頼っていますので、ラベル表示内容を確認する意識は高いと理解しましょう。
☑食品ラベルは、日本国内の表示義務項目以外に必要な項目がある場合がありますので、事前に確認しましょう。
☑「国名」表示だけでなく「都道府県名」までの表記が必要な場合があります。
(4) 「ギフトとして購入するシーンの変容」
香港には、中秋節(9月)、春節(1月〜2月)という2大ギフトシーズンがあり、その他クリスマスもギフト需要が高いです。Q6、Q7では、旅行土産が中秋節や春節より最上位という時流に合った結果でした。
香港の旅行シーズンは、1月〜2月の旧正月(春節)、3月〜4月のイースター休暇、7月〜8月の夏休み、12月のクリスマス休暇です。そして日本国内での香港人に対するギフト商戦とも言えます。
また、旅行土産がギフト商品として捉えられるようになり、現地小売において「訪日旅行土産商品」が販売され、常態化しています。
☑訪日観光客が増えたことにより、ギフト需要が通期に亘っています。
☑訪日土産商品のうちお菓子が、香港市場を席捲しています。
<月・年別 訪日香港人の推移>
引用:日本政府観光局(JNTO)

<香港の小売での訪日土産商品の販売シーン>

香港消費者のニーズ収集
香港消費者にとって、日常的な食品と非日常的な食品(ギフト)の購入の共通点は「品質を確認して購入する」ことです。そしてその品質を確認する上で、「ラベル表示」見ていることが調査結果として表れています。また、訪日経験を経て、食品に求める価値やギフトシーンが変わってきています。
今後、超高齢化社会を迎える香港市場では、現在の状況からさらに変容していくことが考えられますので、常に香港消費者のニーズの収集を心がけることが香港市場の進出には不可欠です。
<香港消費者のニーズの主な収集方法>
・香港FOODEXPO(香港貿易発展局主催、8開催)等の国際食見本市への出展
(ジェトロHP:https://www.jetro.go.jp/j-messe/)
・香港の小売(SOGO、AEON、一田百貨、Citysuperなど)フェアへの出品
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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