農業法人への出資を通じて経営をサポートするアグリビジネス投資育成株式会社が、前シリーズ「成長を導く資本政策」に続き、地域に根差しながら成長を続ける農業法人の経営者へのインタビューを紹介します。
第2回目の今回は、前回に続き、(有)マロンライフ(愛知県愛西市)の栗木社長にお話を伺います。今回は、いちご狩り農園へのこだわりと将来の夢についてお尋ねしました。
第2回 夢は、いつも人が集う場所に!
(有限会社 マロンライフ)
■ 会社・経営者の紹介
(有)マロンライフは、愛知県愛西市でトマトのハウス栽培といちご狩り農園を運営する農業法人です。代表取締役の栗木和夫氏はもともと、父親が立ち上げた、創業 60 年を迎える運送会社、栗木運輸(株)の経営者でもあります。
栗木社長はハウスを引き受けてトマトの栽培を始めました。法人として農業を営んでいる実績が見込まれ、さらに遊休ハウスの話が舞い込み、栗木社長は長年の夢でもあったいちご狩り農園を作ることにしました。
2017 年冬にオープンしたいちご狩り農園「いちご夢ファーム愛西」の施設は、解放感があふれ、女性や子どもだけではなく、高齢者や障がい者のかたも多く訪れます。年々来客数は伸びており、敷地内に育苗ハウスも増設中です。
(有)マロンライフは事業を進めるうえで、資本を増強し信用力を高めるためにアグリビジネス投資育成(株)の出資を受けました。同社はトマトも生産していますが、今回は特に栗木社長のこだわりがつまっている『いちご狩り農園』を中心に、同社の魅力をお伝えしていきます。
1.栗木社長のこだわりが詰まったいちご狩り農園
— 2017 年 12 月に開催した「いちご夢ファーム愛西」のオープンセレモニーには、プロのシンガーを呼び、近隣も含めた市長 3 名、議員 2 名、そして JA の役員らが駆けつけるなど、盛大に行われたそうですね。このいちご狩り農園は、設備などさまざまなこだわりがあるそうですが、ハウスを取得してから、実際に営業を始めるまでのことを教えてください。
ハウスはもともと葉物野菜用に使われていて、高設栽培をしていた跡や段差が残っていました。はじめはすべて段差を取り除こうかと思ったのですが、「ちょっと待てよ、この高さにいちごがなったら、子供はいちごを下からも見ることができてすばらしいのでは」と思い、そのまま残すことにしました。
また、一部いちごの列の間隔を広くとり、車いすでも通れるようにしました。それから、ふつう、ハウスは管理のために一〜二山で分離させるところを、つなげて一つのハウスにしました。実際にお客さんがハウスに入ると『わー、広い!』と喜ばれます。
メインのハウスは新規技術をすべて導入したものにしています。また、トイレは女性目線で乳幼児と使いやすいようにとお金をかけました。
また、一番良かったと思うのは券売機ですね。オープン当初から導入していて、受付作業とお金の管理、来客数などすべてがわかります。券売機のおかげで一日 350 人くらい来ても、二人で受付を賄っていけます。また、本社で数値を確認できるので、人の流れや販売した券の価格がわかるので、分析にも 使えます。
— 奥様のご実家がいちご農家であったとのことですが、やはり栽培では協力を得たのでしょうか。
それはもちろん。いちごの栽培を始めた当初から、特に甥から技術指導を受けるなど、妻の実家には力を借りています。いちごが豊作になった時の対策まで考えていたのですが、予想に反して 1 年目は計画の 35%くらいの収量で、オープン記念の式典の際は一人 2 粒と制限しなくてはならない状況でした。
— いちご農家の技術指導を受けたにも関わらず 1 年目の栽培がうまくいかなかったのは、何か理由があったのでしょうか。
一つは土耕と水耕の違いですね。害虫が大量に発生してしまったんです。どうにかせんといかん、ということでいろんな人に話を聞きました。
そしたら、近隣で上手くやっているいちごの生産者がいましてね。それで、使っている農薬や、散布方法を聞いて、さらに岐阜県にある農薬のメーカーを訪ねてきました。そのメーカーでもいちご狩り農園をやっていたので、これは信頼できると思い、メーカーの担当者に実際にうちのハウスの一角を見てもらうようお願いしました。
そしたら、きちんと成果が出て、おかげで今年はスタートから好調です。
2.当社の経営方針と将来の夢
— 栗木社長の今後の夢や目指すところを教えてください。
栗木運輸、マロンライフ、プランニング・クリキからなるKURIKI グループは今年グループ全体で 40 周年を迎えます。経営は順調ですが、今後衰退に向かわないよう、今は改革の年度だと考えています。
具体的には、各社の売り上げ上昇と社員の増員、事業承継等を含め、外部のコンサルタントに依頼して、3 か年計画を立て取組みはじめ、今年度はその 1 年目です。
自分自身はまだ 68 歳で、生涯現役と考えています。ただ、自分の感性でやっているところは、後継者にそのまま引き継ぐことは無理だと思うので、今マニュアルを一生懸命作っています。
夢はいつか、ここを通年で人が来られる場所にすること。そのために、来る方々とのご縁を大切に、次の展開を考えています。
インタビューを終えて
いちご狩り農園で地元の方から買い上げた野菜を来場客にふるまったり、一年を通して人が集まる場所を作ることが『夢』と語る栗木社長は、職業体験の受け入れや子供食堂に野菜の寄付を継続するなど、地域とのつながりを大切にされています。
「夢」の実現に向けて、「チャンスは来るんだけど、いいチャンスばかりは来ない。時にはわかっていても、悪いチャンスを掴まなあかん」という社長の言葉から、栗木社長の経営者としての人柄と覚悟が伝わってきます。
しっかり「夢」を見据えて、地域と仲間との関係を大事にしながら、リスクマネジメントを意識するバランス感覚が経営を着実な成長に導くポイントなのでしょう。
「いちご夢ファーム愛西」は、12 月から 6 月上旬まで開園しています。解放感のあるいちご狩り農園に、ぜひ一度お立ち寄りください。
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