(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 田中航世)
野菜価格の高騰による消費動向への影響
こんにちは。インテージの田中です。
今年は、野菜の価格が安定しないと感じております。7月の長雨と日照不足によって収穫量が落ちた影響で野菜の価格が高騰しており、スーパーマーケットに買い物に行くと、“普段より野菜が高い!”と感じる毎日です。
そこで、今回は夏野菜をピックアップし、それらの価格変動と販売個数、また食卓での夏野菜の消費にどのような変化があったか調査しました。
<今回取り上げる夏野菜一覧>
アスパラガス、いんげん、えだ豆、おくら、かぼちゃ、きゅうり、ししとう、ジャガイモ、しょうが、ズッキーニ、とうもろこし、トマト、なす、にら、にんにく、パプリカ、ピーマン、やまいも、レタス、ゴーヤの20種類
夏野菜の店頭価格・販売個数の変化
全国のスーパーマーケット約600店より収集した、インテージSRI(生鮮・惣菜)のデータから、2020年7月の夏野菜の店頭での価格と販売個数の前年比を確認します。
▼SRI(生鮮・惣菜) 2020年7月 個数単価前年比・販売個数前年比
夏野菜の単価は前年と比べると上昇しています。やまいも以外の単価は前年を上回り、上昇率が10%以上の品目が20品目中11品目もありました。特に、じゃがいもは前年の約2倍と上昇幅が大きくなっています。
次に販売個数前年比をみると、単価の上昇が大きかった、じゃがいも・ピーマン・なすの販売個数は前年を割っています。
一方、単価の上昇が小さかった、にんにく・やまいもなどが販売個数を大きく伸ばしており、消費者は単価の上がっていないものを選んで、買い物をしていると考察できます。
価格変動によるカレーの具の変化
それでは、夏野菜の価格変動によって、実際の料理の中で使われる食材にどのような変化があったのでしょうか。夏野菜が多く使われているメニューの1つとして、カレーライスが挙げられます。カレーライスの具がどのような変化をしているのか、1,260世帯の食卓調査であるインテージ「キッチンダイアリー」にてみてみましょう。
▼キッチンダイアリー カレーライスの具 TI値
(エリア:京浜+京阪神+東海、期間:2019年7月・2020年7月)
※TI値:1,000食卓あたりの出現回数(回)
※2020年のTI値が1以上の野菜のみ抜粋
単価が大きく上昇した、じゃがいも・ピーマン・なすでは、カレーに使用される頻度が前年よりも低くなっています。一方、単価の上がり幅が比較的小さかったにんにく・しょうがでは、カレーに使用される頻度が高くなっています。
このことから、カレーライスの具材として、それほど単価が上がっていない野菜を選んで使用していると推察されます。
ただし、例外として、トマトは、単価上昇が小さくないにも関わらず、TI値が前年比114%と伸長しています。近年、トマトは栄養価の高い野菜として注目されており、比較的手軽に調理できることから、価格が上昇するなかでも、人気が根強いものと考えられます。
次に、“カレーライスの材料数”に着目します。
▼キッチンダイアリー カレーライスの材料数
(エリア:京浜+京阪神+東海、期間:2019年7月・2020年7月)
全体では、カレーライスの材料数が「1〜3種類」の構成比が前年よりも2.4ポイント増加する一方で、「7〜9種類」が1.9ポイント減少していることから、カレーライスに使用される材料数が減っていることが分かります。
また、子供あり家庭では、19年に30.2%を占めていた「7〜9種類」の構成比が、20年に5.5ポイント減少し、24.8%となっています。一方、「1〜3種類」の構成比が前年よりも4.9ポイント増加しています。
子供あり家庭では、子供の栄養のためにも具材を増やそうとする傾向が強いにも関わらず、野菜価格の上昇により、家計のやりくりのため、具材の種類数を減らしている様子が見て取れます。
今回の調査から、夏野菜の場合、店頭価格に変化が生じると、消費者もそれに合わせて購入品を変更していることが分かりました。また、カレーを取り上げましたが、料理に使用する材料を変更しながら、食費の中でやりくりする家庭内の努力も垣間見える結果となりました。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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