(『バイヤーズ・ガイド』編集発行人 永瀬正彦)
はじめまして。『バイヤーズ・ガイド』の編集発行人を務めております永瀬正彦と申します。これから1年間、商品開発や販路開拓に関するお話をさせていただこうと思っております。
まずは自己紹介をさせていただきます。約10年前から地域の食材や加工食品が売れるようになるためのお手伝い“販路開拓支援”を行っております。お陰様で47都道府県はすべて回っており、もう13周目となります。新型コロナウィルス感染拡大前は年間150日が出張で、年間100本講演を行っておりました。
今回はこうした商品開発、販路開拓に関するお話を「商談成功の秘訣」として、12回連載していきたいと思っております。
第1回目は「はじめに」ということで、展示会や商談会出展の目的を考え、また商談会には事業者指名型とバイヤー指名型があるのですが、こうした違いについてもお話をしていきたいと思っております。
展示会出展の目的はリード(見込み顧客)獲得
では始めに、販路開拓の方法についてご説明しましょう。
自分の商品を売り込もうと思っても、相手がいなければ始まりませんよね。一番シンプルなのは、お取り引きしたい小売店に直接売り込む方法です。
でも皆さんが商談をしたいと思うお店に電話をかけて「バイヤーさんに取り次いでください」と言って取り次いでもらえるでしょうか? もしも取り次いでもらえたとしても、「では資料送ってください」「次にサンプル送ってください」というように、なかなかバイヤーと面談することができません。
ところが、バイヤーが来場する展示会や商談会であれば直接話ができます。だからこそ、展示会や商談会を有効活用しようというのです。
では展示会と商談会の違いについてご説明しましょう。食品の展示会であれば『スーパーマーケット・トレードショー』『FOODEX JAPAN』『アグリフードEXPO』等は耳にしたことがあるかもしれません。このように展示会の場合、比較的大きな会場に皆様のような事業者が各自ブースを設けて商品を展示し、来場者にアピールすることになります。
ちなみに『スーパーマーケット・トレードショー』であれば、コロナ禍前は3日間にバイヤーや仕入れ担当者が88,412人も来場します。一方で、出展者も2,176社・団体が参加します(※2019年のデータ)。となると自分の商品を売り込もうと思った場合、バイヤーにいかに自分のブースに来てもらうかが重要となります。
来場するバイヤーはなんとなくヒントを探しにきていたり、お取引のある問屋やメーカーの挨拶まわりに来たりしています。その合間に商品を探すのですが、出展者が2,176社もあればすべての商品を真剣に見るのは難しいですよね。そのため展示会出展の目的はリード(見込み顧客)獲得、いわゆる名刺獲得となります。
このようにキッカケ作りが目的ですから、商談成約見込み率は約5%と言われています。でも100人と名刺交換すれば5件の成約チャンス、200人と名刺交換すれば10件の成約チャンスというように、数で商談成約見込みを増やすことができます。
事業者指名型とバイヤー指名型、2種類の商談会
続いて商談会です。こちらは事務局側があらかじめ商談時間割を組んで、その時間割に従って商談を行うスタイルです。商談会は2種類あり、事業者指名型とバイヤー指名型の2種類があります。
事業者指名型の場合、事業者側が参加バイヤーのリストを見て「私はこの百貨店と商談したい」「僕はこの高級スーパーと会いたい」というようにバイヤー指名を行い、その指名をもとに商談時間割が組まれます。この場合、事業者が商談机に座り、バイヤーが事業者の商談机を回って商談を行います。
ただし事業者指名型の場合、例えば事業者が水産加工会社なのに対して、相手側が青果担当バイヤーだった場合、カテゴリが違うため商談成約は難しくなります。したがって成約見込み率は約30%前後に落ち着いてしまいます。
一方、バイヤー指名型の商談会の場合、参加事業者のリストを見てバイヤー側が指名を行います。この場合、バイヤーが商談机に座り、事業者がバイヤーの商談机を回ります。バイヤー指名型の場合、バイヤー自身が担当カテゴリーの商品を指名するので商談成約見込み率は約60%近くになります。
ただし今まで述べてきた商談成約見込み率は、商談終了後のバイヤー・仕入れ担当者のアンケート結果で、「具体的な当日の商談成約」と「成約が期待できる商談ができた」を足した数値になります。
ちなみに「具体的な当日の商談成約」は10%にも満たず、いかに商談後のフォローアップが重要かお分かりいただけるかと思います。商談後のフォローアップについてはまた後日お話をしたいと思います。
展示会出展・商談会参加ともに積極姿勢でチャンスを掴もう!
さて、展示会と商談会2種類(事業者指名型・バイヤー指名型)があると説明してきましたが、展示会会場に個別商談スペースを設ける場合もあれば、逆に商談会会場に展示スペースを設ける場合もあります。
ちなみに前者の個別商談スペースがある展示会を「展示商談会」といい、通常は展示会会場のブースに立ち、個別商談にあわせて個別商談スペースで商談を行います。
後者の商談会会場に展示スペースがある場合は、商談の空き時間や休憩時間に展示商品を見るのですが、個別商談会の商談成約の約10%は展示スペースや商談後の交流懇談会から生まれています。
展示会はリード獲得の中に具体的な商談を組み込むことができ、商談会の展示スペースは予約商談以外の商品を見ることができます。このように狙いによって組み合わせる場合がありますが、チャンスを増やすという意味ではいずれも積極的に活用すべきでしょう。
最後にもうひとつマッチングの手法として「紹介」があります。仲介者はバイヤー・事業者の双方をよく知る人物で、なおかつお互いに損をさせては信用を失うので、きちんとした紹介以外はしません。
紹介してくれるということは、それだけ仲介者が良いご縁だと思って紹介するわけですから期待が持てます。バイヤー・事業者双方も仲介者に恥をかかせてはいけないので、しっかりと準備して成約させたい、そんな思いから商談を行うので非常に期待ができます。
今回は第1回目と言うことで販路開拓の方法について説明してきました。次回以降は、本格的に販路開拓のノウハウについてご紹介していきたいと思っております。今回の連載が皆様にとって非常に有意義なものとなるよう頑張りますので、今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
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