(ニュージーランド大使館商務部/ニュージーランド貿易経済促進庁)
総人口500 万人で 4,000 万分の食糧を生産する、世界に冠たる農業輸出大国ニュージーランド。その高い生産性を実現する優れたテクノロジーが輩出される背景には、イノベーションを育む土壌である「アグリテック・エコシステム」の存在があります 。今回は、2回に分けてご紹介している「アグリテック・エコシステム」の後編となります。
ニーズ起点の研究開発:効果的な産学連携を推進するニュージーランドの研究機関群
ニュージーランドのアグリテック・ エコシステムの源流には、イノベーションの萌芽を継続的に生み出し続ける優れた研究機関の存在があります 。
オークランド、ベイオブプレンティ、ワイカト、クライストチャーチ、サウスランド、マナワツ地方など、ニュージーランドの各地に研究機関が存在し、ネットワークを形成し、それぞれ連携を深めています 。
公的資金によって運営されているクラウンリサーチ研究所群(旧産業科学研究庁を出自とする独立研究機関群)は、輸出向け農産物の付加価値創造に注力しており、持続可能な農業バリューチェーンの構築、生産性向上、気候変動への対応 バイオ・セキュリティなどの今日的な産業ニーズに対して、 最先端の AI 技術を応用した解決策の研究を行っています。
ニュージーランドの各地に立地する大学もまたアグリテックにフォーカスした研究開発を展開しています。
リンカーン大学では特にプロセス技術や新材料を用いた環境負荷低減に関する研究に強みを持ち、民間企業向けにコンサルティングサービスの提供や保有する特許の商業化、スタートアップの設立を行うなど、研究成果の事業化・実用化を積極的に行っています。
カンタベリー大学のロボット制御技術グループでは、企業との間で多数の共同研究を展開しており、特に剪定作業の自動化による農業生産性向上・収穫ロスの低減において高い研究成果を上げ、商用化実現への主導的な役割を果たしています。
これらアカデミアにおける研究成果の実用化・商用化への橋渡し支援として、ニュージーランド政府は研究費の手厚い補助を行っている他、キャラハン・イノベーション( Callaghan Innovation :ニュージーランド政府におけるイノベーション推進機関 )プログラムを通じて各種専門家の紹介、商品開発支援、人材育成 ・ スキル開発支援、研究開発資金プログラムの提供などを行っており、日々研究成果の社会実装が推進されています。
有機的なエコシステム: NZ アグリテック・エコシステムの仕組み
各地に存在する優れた研究機関の存在、実用化・事業化を強く念頭においた産学連携への政府の支援策に加え、これらエコシステム内の活動を有機的に結びつける「コネクター」機能が、 ニュージーランド アグリテック・エコシステムの進化に貢献しています。
アグリテック・ エコシステムの中にあってイノベーター、投資家、研究者、規制当局等の各プレイヤーをつなげ、エコシステムの発展を牽引する「コネクター」の役割は、従来、 Zespri 社を始めとした大手農業生産企業が担ってきました。
こうした大企業に加え、2018 年には「コネクター」機能を強化することを目的に、会員制の非営利組織「AgTech NZ」が設立され、第三者的立場から、エコシステムへの参加者に対する支援を展開しています。
このような「コネクター」を介してエコシステム内でつながったプレイヤー達は、アカデミアの研究成果の商用化、スタートアップの創設、スタートアップの持つ新技術・新サービスのエンドユーザーへの提供までシームレスに行うことができるよう、「コネクター」によるサポートや政府組織・公的研究機関からのサポートが受けられようにエコシステムが設計されています。
基礎研究から応用研究、実用化・事業化まで一連のプロセスとして整備されたエコシステムの存在が、ニュージーランド・アグリテックの競争力の源泉になっているのです。
ニュージーランド・アグリテック2021のご紹介
ニュージーランド大使館商務部が主催するオンライン・ビジネス・マッチング・プラットフォームは、日本の企業や農家の皆さまとニュージーランドのアグリテック企業が交流し、お互いのニーズを最大限にサポートできる場所を見つけて頂ける便利な「場」を提供しています。
各種ウェビナーも開催しております。8月17日より、いよいよウェビナーシリーズが始まります。ご参加頂くためには、事前に登録が必要です。
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ご登録は無料であり、ご登録頂いた皆さまにはニュージーランドの農業技術の「今」がわかるアグリテック・ストーリー(小冊子)の電子版をダウンロード頂くことが可能です。
■オンライン・セミナー(ランチタイム・ウェビナー)スケジュール
時間はすべて12時から13時までの1時間を予定します。また、ウェビナーはすべて日本語、または日本語通訳付きで実施します。
次回から、6回に分けて、いよいよ「ニュージーランドのアグリテックが貢献する分野」について継続して取り上げていきます。ご期待ください。
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