アグリウェブ読者のみなさま、六回目となる今回は、アメリカ輸出の現状と展望についてお話させていただきます。
みなさまの今後の取り組みにお役立ていただけますと幸いです。
輸入規制が非常に厳しい国 アメリカ
当社は、2021年6月現在アジアに20店舗・アメリカに65店舗出店しております。
アメリカは、ハワイに28店舗(Don Quijote:3店舗・Marukai Wholesale Mart:1店舗・Times(BIG SAVEその他含む):24店舗)、カリフォルニアに10店舗(MARUKAI MARKET:5店舗・TOKYO CENTRAL:5店舗)を元々出店しており、そこに今年高級スーパーGelson’s 27店舗が加わり、今年合計65の店舗網となりました。
世界一のGDPを誇り、世界最大級の市場を有するアメリカですが、貿易においては輸入規制が非常に厳しい国でもあります。
たとえば当社青果の主要品目の内半分が輸入禁止品目(※1)であり、輸入可能品目においても植物検疫の栽培条件をクリアする品目が少なく、実質的に輸入できない品目も多くあります。
(※1)カリフォルニアのみ輸入禁止の品目もふくむ
アメリカのこの現状について、今回はすこし趣向を変えて、当社北米カンパニー プレジデント坂元康之のコメントを交えながら紹介してまいりたいと思います。
- PPIH 北米カンパニープレジデント 坂元 康之より -アグリウェブ読者のみなさま、はじめまして。私は北米事業の事業責任者を務めております坂元と申します。 私は昨年3月末に渡米し、コロナ禍でのアメリカにおける消費動向の変化を目の当たりにしてきました。 みなさまご存じの通り、アメリカはコロナの蔓延により度重なるロックダウンが敢行されてきました。現在感染者数は世界一となり、累計感染者数は3,348万人(※2)を超えています。 (※2)(※3)2021年6月16日時点 (※4)2021年6月13日時点 このような状況下で飲食店もほとんど稼働していないため、自炊や弁当・惣菜の需要が伸び、米国の食生活は驚くほど変化しました。そんな中、当社の北米事業は創業以来の過去最高益を達成することができ、ピンチをチャンスにすることができたと自負しております。 〜 コロナ禍における客単価と客点数の上昇 〜その要因の一つは、客単価と客点数の上昇です。 ロックダウン期間中はお客さまの来店数が微減しましたが、ご来店いただくお客さまの購入点数と単価が上がりました。一部店舗では営業時間を延長するなどの対策も行い、社会インフラとしての使命を果たせたと自負しております。 〜 客層の変化に伴う新規顧客の獲得 〜またもう一つ大きな要因が、客層の変化に伴う新規顧客の獲得です。 コロナ前までは客数の9割が日系人(東洋系)だったところ、コロナ禍においてはローカルのお客さまに多数ご来店いただき、結果的に現在ではローカルのお客さまが全体の3割程を占めており、新規顧客の開拓につなげることができました。 実際に白人商圏に立地し、ローカル比率が非常に高いTOKYO CENTRALヨーバリンダ店は、売上前年対比で150%を超える月もあり、ローカルのお客さまからの高い支持がうかがえます。 ワクチン接種が進んだ現在では、コロナ禍に来店されたお客さまのリピートもあり、結果的には現在来店客数も上がっていることを言い添えておきます。 〜 “圧倒的なおいしさ” で人気の日本の青果 〜さてこのようなローカルのお客さまから特に人気が高いのが、日本の青果です。 現地の日本人担当者も、“日頃食べているアメリカのリンゴとは圧倒的に違う!特にフジは、半分に割った時の蜜の入り具合に感動しました!”と、日本産のリンゴにいたく感動しておりました。 このリンゴの事例を見てわかるように、日本産の青果は“圧倒的なおいしさ”が大きな強みです。日本産の青果が支持を受けているのは、アジアだけではありません。アメリカでも同等もしくはそれ以上のポテンシャルを秘めていると、私は考えております。 〜 アメリカ輸出の課題と展望 〜しかしながら今後、定期的に多くのリンゴを日本から輸出するとなった場合、まだまだ数多くの課題があります。 例えばアメリカ輸出用のリンゴを栽培いただく場合、害虫の問題から一つ一つ袋をかけての栽培や、通常のリンゴとアメリカ向けリンゴを区分けする設備が必要になります。 このような高いハードルをクリアする生産者さまは、まだまだ日本に少なく、我々も苦心しております。しかしながら、アメリカでまだ十分に流通していない品目をいち早く輸出できれば、その商品は間違いなくその品目を“代表するブランド”としてアメリカで認知されると思います。 これはつまり、人口3億人のアメリカという市場を独占できるということでもあります。 アメリカの輸入に関しては、確かに高い壁が存在しますが、生産者さまと小売である当社がタッグを組めば、必ず乗り越えられるものと信じております。 何卒、ご協力の程よろしくお願い致します。 |
日本産品の“価値”をアメリカへ
当社は、2024年までにさらに10店舗強の出店を計画しており、3年後には75以上の店舗網になります。当社海外事業においてもアメリカ事業は売上の過半数以上を占めるエリアであり、アメリカの経済力・消費量も加味すると非常に大きなポテンシャルを秘めた市場であることは間違いありません。
これからも当社は、日本産品の“価値”を海外へ発信し、みなさまが丹精込めてつくられた農産物を海外で販売してまいります。
ここまでご一読いただきました本コラムの読者のみなさまにおかれましても、ぜひとも、お力を貸していただければ幸いです。
当社の海外事業にご興味をもっていただけましたら、ぜひ海外輸出に携わる会員組織PPIC(ピック)のホームページもご覧になってください。
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