日本農業経営大学校は農林中央金庫が中心となり、JA全中、JA全農、JA共済連をはじめとする農業界や産業界のリーディングカンパニーの団体・企業の支援で2013年に開校した次世代を担う農業経営者と、地域農業のリーダーを育成する教育機関です。
本連載では全国各地で活躍する若き農業経営者である本校の卒業生をご紹介します。
難関である公認会計士の資格を得ながら、農業経営者の道を選んだひとがいます。石川法泰さん、監査法人での勤務から農業の道を選んだ理由と日本農業経営大学校での学び、現在について紐解きます。
【本編の最後にインタビューに関するYoutube動画へのリンクがあります】
<プロフィール>
氏名:石川法泰さん(日本農業経営大学校第3期生)
就農地:愛知県安城市
経営内容:日本農業経営大学校在学中の2年間と島根県海士町での研修を合わせて約3年間農業を学び、2018年に就農。農業の持つコミュニケーションの場としての可能性を目にし、農園事業を展開することで人が集まり・学び・育つ「場」づくりを目指して「株式会社teranova」を立ち上げる。
公認会計士が感じた農業の魅力
(家系に教師が多く、ご両親もどちらも教師という環境で、ご自身も大学時代に教員免許を取得されたという石川さん。大学時代は理学部で数学を学ばれたそうです。就職活動する時も、農業を検討したことはありませんでした。)
農業に興味を持ったきっかけは新聞のTPPに関する記事から、自分の家の周りにもある田んぼや畑に関心を持ったことでした。農業に対する危機感もありましたが、それより農業の魅力が上回りました。
監査法人に勤めていると、企業が一生懸命営業されたり、製品をつくったりなど、頑張ってきた成果を見る側の立場であったため、今度は成果をみる側ではなく、数字を作る側にまわりたいという思いがありました。農業というのは、生産から携わることができ、自分で農産物を売るところまで完結してできることに、とても魅力を感じました。
農業への挑戦について、職場や両親に伝えた際には非常に驚かれましたし、反対もされましたが、それでもやってみたいと思いました。経営に近い仕事をしていたことから、「いきなり農業の生産の現場へ行くよりも、自分の強みを生かせるところに行きたい」との思いで、日本農業経営大学校で勉強してみようと考えました。
日本農業経営大学校での学び
農業経営を学ぶことが必要だと思ったのは、自分のやりたい農業を長続きさせるため。農業を「業」としてやっていくには、経営力を身につけたうえで農業経営を実践しなければならず、経営大学校では事業を継続するためのいろんな力が身につき、現在の経営に活きています。
一番の学びは、農業の枠にとらわれず、視野を広げられたこと。農業の学校ですから、農業に関連することもたくさん学びましたが、それだけではなく、農業に直接関わらないような本や場所の紹介を受けましたし、学生一人ひとりに合った図書の紹介もありました。自分の可能性が広がりました。
また、東京や神奈川の都市近郊型農業で、お客さんとその畑の距離が近い農業をやってらっしゃるところがあって、そういうところでどんな農業をしているのか興味があり、見学させていただいたりしました。
それらの経験は実際に自分がどのように野菜を販売していくかを考えるうえで「こういう選択肢もある、こういうやり方もあるんじゃないか」のような引き出しを増やしてくれました。
同期生から受けた影響も大きかったです。休日も近くの農家さんに見学させてもらうなど、自発的に学びに行くような同期生が多く、とても刺激を受けました。
日本農業経営大学校では卒業時に自身の経営計画を発表します。そこで自らがやりたいことを2年間で見つけ、計画し検証する時間を繰り返したことが一番良かったと思っています。経営通りにいかないこともありますが、適宜何がいけなかったかを反省しつつ、気持ちを切り替えて修正していっています。
お客さんと畑の距離を近づける農業をめざして
自分自身もお客さんと畑との距離を近づけたいという思いで農業を始めたこともあり、お客さんとの関係を大事にして事業を展開しています。
具体的には野菜セットを近隣のお客さんに直接お届けする宅配事業と、あとはマルシェで対面販売の事業です。お客さんの反応を見ながら、野菜を紹介したり、料理の仕方を紹介したり。なるべくお客さんとのコミュニケーションが発生するようなカタチでの商品提供を目指しています。
少量多品目での栽培を行い、野菜セットをお客さんに直接お届けしながら交流するという考えは日本農業経営大学校での研修の際にお世話になった農家さんの影響を受けています。
その農家さんは「地域の中にあってこその農園」というお考えで、美味しく新鮮な野菜を求める人が農場に来たり、土に触れたい子供たちを集めたり、畑をフィールドに様々なイベントを開催して、人が集まり・学び・育つ「場」づくりをされていました。日本農業経営大学校での研修で、農業が持つコミュニケーションの場としての可能性を感じました。
これからの展望
今のお客さんは小さなお子さんをお持ちのお母さんがすごく多いので、20年後そのお子さんが自分で家庭を持ったときに「やっぱりteranovaさんの野菜を食べたいよね」「teranovaさんがこの地域にあって良かった」と言ってもらえるような、農業をやっていきたいです。
将来のお客さんに向けて農業の価値を提供できるようにするためには、やはり経営を学ぶことが必要だと考えています。
【インタビューに関するYoutube動画へのリンクはこちら】
- 高度な農業経営者教育を提供する日本農業経営大学校-
次世代を担う農業経営者であり地域のリーダーとなる人材の育成を目指し、2年間・全寮制教育により少数精鋭の経営者教育を行います。
本校は、平成25年4月に開校し、定員20名を対象に全国から意欲のある学生を募集し、「経営力」、「農業力」、「社会力」、「人間力」の4つの力を、講義・演習(ゼミナール)や現地実習(農業、企業)、寮生活を含めた幅広い活動を通じてバランス良く育み、将来の事業計画を確立します。
アグリフューチャージャパン会員ネットワークを通じて、産業界・農業界・学界等多方面の講義・実習の展開や、卒業後のネットワークづくりなどをはかれることが、本校の大きな特徴です。
■ 詳しくは、本校のホームページをご覧ください。
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