事業を承継するために必要な「農業の記録」
農業に定年退職はありませんが、事業を誰かに引き継ぐための準備は必要です。「俺は若いからまだまだ大丈夫」「息子に譲って経営が上手くいくか不安」など、引き継ぎを考えたくない理由はいろいろありますが、一度、事業承継について考えてみましょう。
事業承継で受け継ぐのは、財産や権利だけではありません。先代から、地位や精神、身分、仕事、事業などをすべて受け継ぐのが、承継です。民法など法律でも「事業承継」という言葉が使われています。
農業は事業ですから、経営権を含めて事業を承継することが必要となります。その中には、土地ごとの仕事のやり方や、先代から受け継いだ特別な栽培方法、土地に対する思い(マインドと呼ばれるもの)も含まれるはずです。それらも含めて、営んできた「農業の記録」という形で残してあげることが重要なのです。
事業を承継するためには、電子的に記録するアイテムが必要で、それがスマート農業の一部なのです。
「農業の記録」は事業承継の準備の入り口
農業の事業承継の形はひとつではありません。親から子へ農業を引き継ぐ事業承継もあれば、今営んでいる個人経営を地域の集落営農に引き継ぐのも事業承継です。また、企業など別な農業者へ引き継ぐパターンも今後考えられます。
子に渡すにしろ、集落営農に引き継ぐにしろ、事業承継には準備が必要です。その準備の入り口が、農業の記録です。
毎年同じように米や作物を作っていると、頭の中に情報は入っています。しかしながら、頭の中にあるままで、人に引き継ぐことはできません。
仕事を受け継いでくれる人が身近にいれば、ある程度一緒の年月を過ごし、仕事を覚えさせながら伝えていく方法もあるにはあるでしょう。
しかしながら、多様性が求められ、仕事も複雑になった現在では、数年一緒に仕事をしながら覚えることは不可能に近いですし、集落営農への事業承継ではこの方法はできません。
スマート農業と事業承継
現状を記録して分析する
やはり、何かの法則にしたがい、ノートやパソコンに仕事のやり方や考え方の記録を残さなければ、準備ができているとは言えないのです。
また、記録することで現状を把握できるという利点もあります。現在の経営で、この圃場はどの程度のポテンシャル(収量などの生産力や生産のしやすさのこと)があり、どの程度儲かるのか、また昨今の気候変動からくるアクシデントに、どの程度耐えられるのかなど、いろいろな情報が年毎の記録を残すことで把握できるのです。
また、事業承継以前に、「子供に農業を継がせたくない」という親の言葉があります。農業は儲からない、兼業農家は大変なだけで実入りが少ない、など継がせたくない主な理由は、「儲からない」です。ではなぜ儲からないのでしょうか?
事業改善はおこなったでしょうか?近隣の相談できる方にお話ししたでしょうか?また、現状を把握して改善する方向性を見出す努力をしたでしょうか?
すべての方が努力をしていないわけではありませんが、現状を分析せずにやみくもに儲からないと決めつけていることも多いものです。
記録に基づく品目ごとの農業収益の情報
現状を分析するためには、記録をもとにした、品目ごとの農業収益の情報が必要です。
JAやJAのTACのなかには、農家の経営面積や労働時間、各作物の粗収益、変動費、作業時間等を設定することで、所定の条件下で、最も農業所得を高める作付け計画案を容易に算出する営農計画策定支援システム「Z-BFM」を提供しているところもあります。
また、AgriweBの農業者会員の方は、アピネスアグリインフォからZ-BFMのダウンロードが可能です。それらをうまく利用することで経営状態の分析、改善がおこなえます。
記録が示す自分の圃場のポテンシャル
また日々の記録は、自分の圃場のポテンシャルを明確にし、現状を把握する機会をもたらしてくれます。日々の作業や、圃場の場所、どのような作物でどのような栽培方法か、どんな薬剤・肥料を使用しているかなど、農業経営に役立つ情報です。
ノートに書く方法もありますが、分析をするためには、パソコンやスマートフォンで入力できる営農管理システムが必要です。最初から、ある程度の経営診断をできるものもありますが、入力に制限がある場合や、圃場ごとの現状分析(処方箋のようなもの)を先に記入しないと使用できないものもあります。
使うのであれば、汎用性が高く、Excelがベースで今までの手書き入力を活かせるような、使い勝手の良いシステムが良いと思います。
スマート農業と事業承継は、一見離れているように見えますが、経営状況を分析するためには、パソコンやスマートフォンを使って記録する営農管理システムの活用が必要で、これも立派なスマート農業です。営農管理システムは、スマート農業の最先端とは言えませんが、スマート農業の第一歩として欠かせない技術なのです。
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