(テラスマイル株式会社 代表取締役 生駒祐一)
今回は、弊社デジタル基盤「RightARM」(ライトアーム)の自治体での活用事例・相談実績から見られる2021年の地域政策(総合化事業計画)の変化についてご紹介します。
営農支援における自治体の役割
県もしくは農業に力を入れる国内の自治体では、担い手育成等に力を注ぐ、『普及指導員(もしくは農業技師)』が配置されています。
詳しくは農業改良助長法に基づく協同農業普及事業の運営の中で役割が定められており、「直接農業者に接して農業生産方式の合理化その他農業経営の改善又は農村生活の改善に関する科学的技術及び知識の普及指導を行うこと等により、主体的に農業経営及び農村生活の改善に取り組む農業者の育成を図るとともに、農業の持続的な発展や農村の振興等を図るものである。」と冒頭に定義され、様々な活動が行われています。
〔農林水産省 普及事業ホームページ〕
自治体にデジタル基盤が導入される目的
「データを活用した営農支援」について、弊社では創業時から試行錯誤と改善を繰り返し、今の形へと進化しました。2018年までは主に宮崎県での実績を積み、2019年から熊本県・鹿児島県へサービスの範囲を広げ、今年度からはオンライン環境を活用して全国に展開していきます。
〔みやざきスマート農業推進方針〕
図 テラスマイル社RightARM自治体向けサービスの概要
(営農支援を高度化するクラウドサービスを60万円〜提供している)
そんな弊社への相談・実績から考察した場合、大きく三つの「デジタル基盤を導入する目的」が浮かび上がってきます。
【県市町村にデジタル基盤が導入される理由】 ① 農業普及員・農業技師の営農指導の高度化(DX化) ② 試験・実証研究でのデータの蓄積と、分析工程での生産性向上 ③ 産地農作物の(デジタルでの)マニュアル化 |
①営農指導の高度化
一つめの「①営農指導の高度化」は、10年前の農業ITの時代から必要性が騒がれていました。環境モニタリング等のデータの集計に膨大な時間がかかり、充分な分析と満足のいく普及指導ができないという課題をどの地域も抱えていたからです。
デジタル基盤が導入されることで、「データの組み合わせ」や「データの集計」、「分析レポートの作成」はクラウド上で自動処理され、普及員・技師の方は検討・調査に充分な時間を割くことが可能になります。
②研究での活用
二つめの「②研究での活用」でも、用途は違えど県の専門技術員(専技)の方々は同じ悩みを抱えていました。「データに基づいた報告書作成」や「多面的な分析」を行うためには、データの整理・集計の工数を削減することが求められていたからです。
今後、リーダークラスの世代が1970-80年代生まれへと移っていくにつれ、デジタル基盤(クラウドでの自動処理)の必要性は高まっていくことが想定されます。
③マニュアル化
三つめの「③マニュアル化」は、①②とは少し目的が変わり、「担い手育成・若手育成のための経営指標のデジタル化」が目的となります。詳しくは「農業経営指標DX」の中でご紹介します。
具体的な「営農支援DX」の導入プロセス
では、どのように自治体において、RightARMを導入して、営農支援を高度化・デジタル化するのでしょうか。そのプロセスについてご紹介します。弊社では、県市町村や(JA部会を含む)生産者グループと取り組みを行う際、以下のプロセスで営農支援の高度化を進めていきます。
【自治体におけるRightARM導入の7つのステップ】 STEP1 フレームワーク(FW)を用いた達成優先順位の可視化 STEP2&3 分析項目のピックアップ及び、現状実績の可視化(FWを使用) STEP4 入力項目の決定 ※入力フォームは以下のもの等から選択。既存Excelがある場合は流用できるか調査 プロファインダークラウド STEP5 営農支援環境の準備(タブレットや分析画面、予報する気象情報の準備) STEP6 営農支援を行うためのRightARM分析レポートの発行及び調整 STEP7 運用開始 |
STEP1からSTEP4は必要に応じて現地に赴き関係者ワークショップを行います。STEP5からSTEP7は昨年度からオンラインで実施しています。運用開始までには基本的に3か月かけますが、作型・品目に応じて柔軟に対応しているのも特徴です。
図 STEP1-3で用いるフレームワーク(FW)の例
国の未来に向けた取り組み農業支援サービス育成対策事業「農業経営指標DX」
今年度、弊社では農林水産省からの委託を受け、農業を支援する新たなデータ分析サービスの開発に取り組んでいます。私たちのテーマは、主に自治体の方々向けの「農業経営指標のデジタル化」です。
弊社にとっての新規事業立上げであり、今年度中のビジネス確立を目指しています。5年に一度、農業センサス作成時期にアップデートされる営農の指標をデジタル化し、農業改良普及事業の高度化を目指そうという取り組みになります。この秋から冬にかけ、実証産地・市町村での取組みを含め、徐々に公開していきますので、もう少しお待ちください。
本事業(農業支援サービス事業)は「専門作業受託型」「機械設備提供型」「人材供給型」「データ分析型」「その他」の5つから構成されています。
弊社は「データ分析型」のモデル企業となり、知や経験を国に還元し、教育等を通じて次の世代への芽を育てていくことを目指しています。
〔農業支援サービス関係情報〕
〔農業支援サービスに係るPR動画(データ分析型は弊社と大崎農園の取り組み)〕
図 農業支援サービス事業育成対策の概要
Society5.0(未来社会)での自治体農政と農業データ活用
今年は、攻めの農業政策を打ち出す自治体が増えてきました。例えば広島県は独自のスマート農業実証プロジェクトを、千葉市は「千葉市農林業成長アクションプラン」を策定し、スマート農業の活用に取り組み始めています。
【千葉市 経済農政局農政部長 表谷拓郎さまコメント】
千葉市農政センターは未来への熱い思いと、ワクワクする!という気持ちを共通して持っています。
農政センターリニューアルの1番重要なところは、やっぱり人材。技師の皆様は農業者とデータとの橋渡しを行う重要な役目を果たします。
テラスマイルとのこの事業は、まさにリニューアルの根幹たる分析力・思考力をさらにパワーアップしてくれると改めて思いました!
図:千葉市農政センターのデータ活用型経営サポートのためのワークショップ準備(内部勉強会の様子)
図:RightARM 自治体パッケージのサービス内容 オンラインサポートが人気(金額は50万円〜)
私自身も今年は、「地方創生・SDG’s」や「スマートシティ・スーパーシティ」といったまちの総合化事業計画の中に、「スマート農業/一次産業でのデータ利活用」を組み込む活動を進め、データという資産を国の未来に繋げていきたいと考えています。
〔地方創生>国家戦略特区>スーパーシティ>スーパーシティ型国家戦略特別区域の指定に関する公募の応募状況について〕
〔地方創生ポータルサイト〕
次回は、『JAグループと進めるデータ活用の取り組み』についてご紹介します。
シリーズ『データ活用による農業経営の高度化』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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