(気象予報士 寺本卓也)
はじめまして。気象予報士の寺本卓也です
はじめまして。今月からコラムを書く事になりました気象予報士の寺本卓也と申します。私がどんな人物なのか簡単に自己紹介しますね。
365日クレーム対応 天気に振り回された商社時代
私は農業大学を卒業後、青果の商社に入社し約7年働きました。レストランや業者に野菜を365日配送するのですが、天気に翻弄される日々でした。
台風や豪雨はもちろん、猛暑など晴れていても不作に繋がる事があります。取引先からは、「葉が傷んでいる。中が腐っている。それなのに値段が高い。」など問い合わせの電話が毎日ひっきりなしに来ました。対応に追われるつらい日々でしたね。
野菜は、そういった天災が起きた時ほど、生育が悪く、品質も落ちて値段も高くなるものです。
農業に役立つ天気「農てんき」予報士を目指す
そうした事から私は「気象を知り、農業に役立つ力を身につけたい。」という想いが強くなりました。それが気象予報士を目指したきっかけでした。
ただ、働きながらではなかなか受かりませんでした。そのため、会社を辞め猛勉強し、約半年後の2018年秋、8回目の受験でようやく合格する事ができました。
テレビユー福島で「農てんき予報士」として活躍中
現在はウェザーマップ所属のお天気キャスターとして、福島県のテレビ番組で天気予報をお伝えしています。なかでも「農てんき」というコーナーは好評です。
例えば、福島県は一日の寒暖差が大きい気候なのですが、今年の野菜や果実は寒さに負けないよう糖分をしっかり蓄えて、甘く美味しく育っていますよ。など、天気の視点から農作物の美味しさについて楽しく紹介しています。
また、自ら畑を借りて「農てんきファーム」と名前をつけて野菜作りもしています。
私のコーナーが少しでも日本農業の活性化に繋がればいいなと言う気持ちを密かに思っています。
そんな事から私のコラムは、農家さんに役立つ天気の情報を分かりやすくお伝えします。また読んで楽しんでもらえるような、まさに「農てんき」をモットーに発信していきます。ゆくゆくは、動画も配信できたらいいなとも考えています。頑張りますので、これから是非よろしくお願い致します。
9月スタート肌寒くも 暑さぶり返す?
今年は秋雨前線の影響で関東や東北で日中の気温が20〜23℃くらいと肌寒い9月のスタートとなりました。
ただ、近年は9月に入っても「暑いなー。」というイメージをお持ちの方は、多くいらっしゃるのではないでしょうか。では、各地の10年間のデータを見てみましょう。
9月に入っても各地で25℃の夏日を超える日が多く、またその日数も長いのが分かります。全国的に「残暑」は長期化している傾向にあります。
最新1カ月予報 今年も「暑い秋」に
下記に、最新の1カ月予報(9月2日現在)を載せました。1か月全体で見ると北陸や西日本は平年より暑くなりそうな予想となっています。
ちなみに週別でみると、9月18日以降は各地で気温が高くなりそうです。弊社ウェザーマップ独自の16日予報を見ても、今年も各地で残暑が予想されます。
(最新の予報はウェザーマップHPで確認する事ができます)
熱中症に引き続き注意
熱中症の起きやすい日々がしばらく続きそうです。
■ 日中の暑い時間帯での作業は避け、休憩をこまめにとる必要があります。
■ 汗で失われる、水分や塩分の補給をしましょう。
■ 通気性の良い服装で作業をしましょう。
■ 簡易の移動テントなどを使用し、日陰での作業ができるよう出来るだけ工夫しましょう。
熱中症は農作物にも起こる?
高温が続くと、稲は未熟な粒が発生しやすくなります。また、強い日差しによる日焼けや裂果などは野菜や果樹などでも発生します。農作物の熱中症とも言えそうですね。農作物の管理にも注意が必要になってきます。
9月は暑くても晴れない 秋雨前線と台風シーズン到来
ここまで9月は残暑が続くとお伝えしました。では、晴れる日が多いのかというとそうではありません。9月は秋雨前線と台風に気をつけなければなりません。
台風が日本列島に近づきやすくなる
9月になると夏の晴れをもたらす太平洋高気圧(暖かい空気)の勢力が弱まり、南下していきます。それにより秋雨前線が本州付近に停滞するようになります。
また太平洋高気圧は夏の間、台風が本州に来るのをブロックしてくれるのですが、勢力が弱まることで台風を抑えてくれる力がなくなります。台風は太平洋高気圧の弱っている所をついて日本列島に近づきやすくなるのです。
秋雨前線+台風=災害級の大雨に
そして、最悪の天気図のパターンは秋雨前線が本州付近に停滞している時に台風の接近が重なる事です。このような時は各地で災害級の大雨が予想されます。台風と秋雨前線が近づく予想の天気図の時は要注意です。特に太平洋側の地域で雨量が多くなります。
大雨となる仕組み
秋雨前線による雨が降っている所に、台風から大雨の素となる暖かく湿った空気が流れ込むと、雨雲がさらに活発化するという仕組みです。これは、例えるなら燃え上がっている火にガソリンがどんどん注ぎ込まれ大爆発を起こすようなものです。
警報級の大雨に
また、厄介なのは、秋雨前線は停滞性の前線です。台風からの暖かく湿った空気が送り込まれるような場合は、同じような場所でずっと大雨が続きます。土砂災害が多発的に発生したり、河川の氾濫が起きたり、ため池が損壊したりなど、警報級の大雨はこのような時に発表されやすいと言えるでしょう。
天気予報で、こんな言葉が出たらご注意
天気予報で気象予報士が、このようなキーワードを出したら危険な大雨へのサインです。
「台風」、「前線」、「接近前、上陸前から警戒してください。」こんな言葉が同時に聞こえてきたらいつも以上の大雨への備えが必要です。
台風・大雨は気象アプリで
また、「Yahoo!天気」などの気象アプリを利用するのもおすすめです。お住まいの地域を登録すると、雨雲の動きなどをプッシュ通知で教えてくれる機能や、台風による大雨や暴風への警戒時間をバーチャートで予報してくれるなどのサービスを無料で確認する事ができます。
各種の気象情報を上手に活用し、農業被害を防いでいきましょう。
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