日本農業経営大学校は農林中央金庫が中心となり、JA全中、JA全農、JA共済連をはじめとする農業界や産業界のリーディングカンパニーの団体・企業の支援で2013年に開校した次世代を担う農業経営者と、地域農業のリーダーを育成する教育機関です。
本連載では全国各地で活躍する若き農業経営者である本校の卒業生をご紹介します。
父の想いを受けて、農業経営を学ぶ道を選んだひとがいます。西岡源起さん、経営者である父自身が学びたいと希望した日本農業経営大学校での学び、現在について紐解きます。
【本編の最後にインタビューに関するYoutube動画へのリンクがあります】
<プロフィール>
氏名:西岡源起(日本農業経営大学校第2期生)
就農地:熊本県八代市
経営内容:日本農業経営大学校を卒業後、西岡養蜂園の生産部門を担う「株式会社蜂の郷にしおか」に就職。カフェや直売所などの新たな事業の柱を確立した。
先に入学したいと言ったのは、農家歴数十年の父だった
私たちが家族で経営している西岡養蜂園は、父が曽祖父から引き継いだ巣箱10箱から始まりました。父が会社を立ち上げ、それから約30年、会社の資産規模は11億円ほどになり、全国的にみてもかなり大きな養蜂園に成長しています。もともと農家だったこともあり、農家の視点でお客さんに寄り添いながら交配用ミツバチを販売し、支持されてきました。
ただ、家族経営的なスタイルのまま大きくしたような会社だったので、大きくなるにつれて人材や経営の問題などが出てきました。何をしたらいいのか明確になり始めたからこそ、課題が多く出てきたというタイミングだったと思います。
そんなときに経営について学べる日本農業経営大学校があることを、ハチを利用していただいているお客さまである農家さんが教えてくれました。
先に学校に興味を持ったのは、父の方でした。父はずっと会社のトップだったので、経営面で悩むことも多かったようで、いろんな会社の経営を知ることで、疑問や困りごとを解決できればという思いがあったのだと思います。
ただ、年齢的な問題もあり、父の代わりに私が入学することになりました。私も経営については知識がなく、正直なところ会社に入って経営する自信や会社組織を動かせる自信がなかったので、父の勧めは絶好の機会だと思いました。
日本農業経営大学校での学び
学校では教室で学ぶ講義のほかに学生が希望する実習先を決めて参加する実習があるのですが、その際に実習先企業の会員である農家さんのスキル向上のための勉強会の開催に関わる準備や会場設営という運営業務を経験させていただきました。
例えば北海道で開催したときは土の成分について、宮崎では有機についての勉強会を行っていました。講師の選定や内容の検討など、これまでそういった企画の作り込みの部分は経験したことがなかったのでとても楽しかったです。
勉強会の後に行われる生産者ごとで自分たちの課題を出し合うという場作りにも取り組みました。勉強会に集まった農家さんが、ただ作っている、売っているだけではなく、それぞれが課題を持って集まり、お互い話し合って解決のために協力する姿勢が素晴らしいと感じ、参加されていた農家さんをとても尊敬しています。
最も大きな学びは「お金」に関すること
私にとって最も大きな学びは、経営者の話を聞いて、お金の集め方や使う場所、タイミングなどを学べたことです。
農業経営者の方が特別講義に来てくださることが多くて、伸びている会社や若い会社が、どういったタイミングでどういった投資をしたのか、お金をどこに使い、どこで伸びたというのが明確になっている時期がやはりあるのだなと、話を聞いていて思いました。
学生時代にお金を稼いで貯めたりしていましたが、自分で稼いだお金だけではなく、いかにお金を上手に集めるか。そのお金をどう増やすか。そのタイミングと場所は常に転がっていると知りました。色々な経営者の話を聞いて、一番大事な部分だと感じました。
卒業後は、融資の獲得の仕方や、融資以外のところでの補助金の活用、クラウドファンディングの活用などの手段を考えられるようになりました。
学校でたくさんの経営形態や農業スタイルを見せてもらえたことも、とても参考になりました。いろんな業種を知ることで、「何でもできるな」ということを感じられました。学んだことを自分自身に置き換えて考え、その産業のスタイルを養蜂に落とし込んだときに何ができるかなど、考えの幅がすごく広がったと思います。
コロナ禍で生きた学び
新型コロナウイルスの影響が出る前から綿密にシミュレーションを行い、経営計画を立てて、テイクアウトや通販など伸びる要素がある事業に投資し、売り上げを拡大しました。いかに接触しなくても売り上げを上げることができる方法があるかを考え、今後伸びていくのはテイクアウトだと思ったので、早いタイミングでテイクアウトに切り替えることができました。
今後の目標
今後は熊本の中で一番働きたい会社になることを目指していきたいです。「この会社に入ってよかった」と思えるような会社、働き方ややりがいも含めて、どんな会社が良いかというとそれぞれみんなバラバラで難しいと思いますが、「私も入りたい」と思われる会社にしていきたいです。
【インタビューに関するYoutube動画へのリンクはこちら】
- 高度な農業経営者教育を提供する日本農業経営大学校-
次世代を担う農業経営者であり地域のリーダーとなる人材の育成を目指し、2年間・全寮制教育により少数精鋭の経営者教育を行います。
本校は、平成25年4月に開校し、定員20名を対象に全国から意欲のある学生を募集し、「経営力」、「農業力」、「社会力」、「人間力」の4つの力を、講義・演習(ゼミナール)や現地実習(農業、企業)、寮生活を含めた幅広い活動を通じてバランス良く育み、将来の事業計画を確立します。
アグリフューチャージャパン会員ネットワークを通じて、産業界・農業界・学界等多方面の講義・実習の展開や、卒業後のネットワークづくりなどをはかれることが、本校の大きな特徴です。
■ 詳しくは、本校のホームページをご覧ください。
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