(公益財団法人日本生産性本部 コンサルティング部 平澤 允)
これまでのコラムでは、カイゼンについての考え方や、その効果と具体的な適用例を、酪農現場や他産業での事例を紹介してまいりました。
本コラムでは、酪農の現場で「何をどうやって実践するのか」という具体的な取り組みにつなげていくための支援ツールについて紹介をさせていただきます。
業務プロセスの問題を抽出し、対策を行うためのツール
私どもは2019年から酪農家の働き方改革実証調査を行い、カイゼンの考え方を酪農向けにアレンジし、5S+1Sの推進や無駄な動きを省く視点で各種作業を見直す際に活用できる「働き方改革簡易診断解決ツール」という名のチェックリストを作成し(2021年3月)、データ(表計算ソフト)を酪農家や指導機関などに無償提供しております。
これまでのコラムで触れていますが、酪農家の方々の労働時間は他産業と比べても多い傾向にありながら、労働負担軽減に関しては、機械化や外部化を進める考えが一般的です。
上記のツールはカイゼンの考え方をもとに、費用をかけずに実践できるよう人の動線や物の動きに焦点を当てているのが特徴となります。また、これには大型投資を必要とせず、機械化と比較して効果が出るまでのサイクルが短く、取り組みを柔軟にカスタマイズできるなど利点があります。
「簡易診断解決ツール」の活用方法
簡易診断ツールはチェックリスト形式になっており、「搾乳」「餌づくり」「牛舎管理」「幼牛舎」「5S」「安全」の6分野(図1)から全115項目を挙げています。それぞれの項目に対して、効率的な業務という観点で「やってはいけないこと」を表しております。
【図1 簡易診断ツールの目次】
【図2 チェックリストの例(搾乳【設備共通】作業者の移動時間を最短にする)】
例えば、搾乳に関する項目の一つには「消毒液やペーパータオルなど搾乳時に必要な道具を取りに行くために歩行している」とあり(図2)、該当する場合は「×」、近い場合は「△」、理想に近い手順で行っている場合は「○」を記入していただきます。
「作業者全員の歩行距離が最も短い場所に道具置き場を設置する」など対策も記していますので、一連の作業をご確認いただいた上で、×がついた作業項目に対して、どのような対策を行うと良いか本ツールを元にご検討いただけるようになっております。
また、搾乳作業に関しては使用している設備によって作業手順が大きく異なる為、設備ごとにやってはいけないことと対策を記載しております。各設備に合わせたチェックを行っていただけるよう記載することで、規模等に関わらず広くご活用いただけることを目指しております。
※本コラムにて紹介しております簡易診断解決ツールにつきましては、先述のとおり無償での提供を行っております。希望する場合は日本生産性本部経営開発センター(電話:03-3511-4030)までご連絡下さい。
シリーズ『カイゼンによる働き方改革と生産性向上』のその他のコラムはこちら
当該コンテンツは、公益財団法人日本生産性本部の分析・調査に基づき作成されています。
公開日