日本農業経営大学校は農林中央金庫が中心となり、JA全中、JA全農、JA共済連をはじめとする農業界や産業界のリーディングカンパニーの団体・企業の支援で2013年に開校した次世代を担う農業経営者と、地域農業のリーダーを育成する教育機関です。
本連載では全国各地で活躍する若き農業経営者である本校の卒業生をご紹介します。
「一人でも多くの人々のテーブルに花を届けたい」、そんな思いを胸に独立就農を開始した若者がいます。園芸の専門学校で学んだ農業技術を基に、日本農業経営大学校の学びで創りあげた将来の夢に向かって日々懸命な努力を続ける山口雅暁さんの今を紹介します。
<プロフィール>
氏名:山口雅暁(日本農業経営大学校第4期生)
就農地:岩手県盛岡市
経営内容:日本農業経営大学校を卒業後、2019年に実家の近隣の農地60aを賃借して独立就農を開始。ネギ、トマトとともに6aのハウスでトルコギキョウを栽培する。
農業経営を志すまで
飲食業を営んでいた父は祖父の亡くなったあとの農地を継ぎ、自分が10歳の時に盛岡に移住しました。高校を卒業した後、実家の農業を手伝いながら、自分も実家の農業をいつか継ぐのだろうな、とぼんやりと考えていました。
しかし、自分には農業技術も農業経営を行う力もなかったため、まずは現場の技術を学ぶために滋賀県にある園芸専門学校に入学し、様々な農産物に触れました。その中で、どんなに体が疲れていても、ハウスで栽培されていた花の管理をすることで、疲れを忘れるような癒し効果に気付き、自分が花を栽培し、皆さんに癒しを与えたいと思うようになったことが花を栽培するきっかけです。
特に、その後の展示会で見たトルコギキョウの色・形の豊富さ、美しさに心を惹かれ、いつか栽培したい花となりました。園芸学校での学びは畑での作業には非常に役立つものでしたが、それだけでは自ら農業を「経営」することは難しいと感じ、日本農業経営大学校に入学することにしました。
一生の出会いをくれた学びの場
■1年次の農業実習
日本農業経営大学校では、多くの貴重な出会いを得ることができました。1年次に行われる農業実習では、JAを通じ、岩手県内で大規模にトルコギキョウの栽培を行っている方を紹介いただき、2カ月間の実習を行いました。その方は、今でも自分の大切な師匠であり、また大きな目標でもあります。
■2年次の企業実習
2年次では企業実習先として東京の花き卸さんを選びました。そこでは花流通の実態や、流通業の立場から見た花農家の在り方を学ぶことができ、自分の経営がどうあるべきかを考える貴重な体験となりました。
■ゼミでの活動と仲間との貴重な時間
ゼミの活動では主婦や大学生へのアンケート、ヒアリングも行い、そこで得られた様々な意見は、自分の考えていた花の体験農園の実現性に自信を深めることとなりました。ゼミの先生、仲間との様々な活動は、本当に貴重なもので、現在でも先生を囲んだ付き合いが続いています。
同期生たちは、よく寮の談話室に皆で集まり、夜遅くまでああでもない、こうでもないと議論を戦わせました。思い起こせば、楽しく、そして貴重な経験でした。
■卒業研究は経営計画の作成
日本農業経営大学校では、卒業研究として将来の自分の経営計画を作成します。自分は、多くの先輩たちの話も聞き、何とか頑張れば実現可能な計画にしようと、悩みに悩んで作りました。
今でも、日々の作業に疲れ、心が折れそうになった時、その計画を見直すことがあります。読み返すと未熟さに多少気恥ずかしくもなりますが、当時の自分の夢を思い出し、また頑張ろうという新たな気持ちになれます。
夢の実現に向かって
就農直後には、収入の乏しい冬場を乗り切ろうと1、2月も休みなくハウスでのネギ栽培に取り組み、4、5月のピーク時に過労で倒れてしまいましたが、現在はすっかり回復し、元気になっています。
現状露地でのネギ、トマトに加え、2aのハウスを3棟建て、それぞれ、中生、晩生のトルコギキョウを栽培しています。多くの花農家は彼岸、盆といった需要の最盛期に合わせて生産を集中するやり方をとっていますが、自分は比較的長い期間で安定的な生産を目指しています。
トルコギキョウはそもそも割と高価な花ですが、中でもコサージュ仕立てといった種類は1本千円以上もする高価なものです。自分の昔からの思いは「多くの人々の家庭に花を」であり、そうした一部の人向けの高額な花を栽培するより、手頃で美しい花の生産を目指します。
経営計画にあげていた「花の体験農園」は絶対に実現したい夢です。そのためにはハウスの中だけではなく、ハウスの周囲にも多くの花を植え、きれいな環境を整えたいと思っています。また、切り花だけではなく、鉢植えなどの種類を増やすことも必要だと思っています。
生産する多くの花を全て個人に販売することはとうてい不可能であり、もう一つの柱に考えているのがJAを通じた出荷です。農業実習でお世話になった師匠である生産者さんはJAの生産部会でも大口の生産者であり、また、花の品質の高さから卸からも一目置かれている方です。自分もいつかは師匠のような存在になれるよう頑張りたいと思っています。
- 高度な農業経営者教育を提供する日本農業経営大学校-
次世代を担う農業経営者であり地域のリーダーとなる人材の育成を目指し、2年間・全寮制教育により少数精鋭の経営者教育を行います。
本校は、平成25年4月に開校し、定員20名を対象に全国から意欲のある学生を募集し、「経営力」、「農業力」、「社会力」、「人間力」の4つの力を、講義・演習(ゼミナール)や現地実習(農業、企業)、寮生活を含めた幅広い活動を通じてバランス良く育み、将来の事業計画を確立します。
アグリフューチャージャパン会員ネットワークを通じて、産業界・農業界・学界等多方面の講義・実習の展開や、卒業後のネットワークづくりなどをはかれることが、本校の大きな特徴です。
■ 詳しくは、本校のホームページをご覧ください。
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