(気象予報士 寺本卓也)
こんにちは寺本です。平日は天気予報を、週末は農業を、福島から農業と天気を盛り上げようとしている元気が取り柄な「農てんきな気象予報士」です。
さて、今年も残すところ、あとわずかとなりました。私は数年前まで野菜の商社で働いていましたが、コロナ禍以前のかつては、12月のこの時期は一年で一番忙しい時でした。
今回はそんな繁忙期の思い出話とともに、この時期ならではの青果業界の裏側を少しお話しようと思います。
青果業界は、人手が足りない上に仕事量増加
業界あるあるだと思いますが、12月になるとアルバイト・パートさんは年末年始の休暇に入る方が多く、会社は社員のみの人手が足りない状況となりがちです。
しかしながら、発注量は1年のうちで1番多い訳ですから、普段事務職をしている私のような人間も現場に応援に入ることが多々ありました。
クリスマスが近づくと、フライドチキンで有名なお店の発注量が激増します。
コールスロー(キャベツをみじん切りしたサラダ)に使用されるキャベツを延々切り続ける訳ですが、これが重労働です。キャベツ1個が約1㎏なのですが、これを100回持てば100㎏分体に負担がかかる訳です。腰が砕けそうになり、コルセットを巻いて仕事をしていたのを思い出します。
12月は国産イチゴ出荷スタート
また12月になると、一斉に国産に切り替える野菜がありました。それはイチゴです。
イチゴは春先で一旦シーズンが終わると、その後レストランなどに提供する物はアメリカなどから輸入しています。そして、12月1日からクリスマスシーズンにあわせて、再び国産イチゴの出荷に一斉に切り替えるのです。
イチゴの管理で一番重要なのは「発注量予測」
このイチゴが大変厄介でした。なんといっても傷むのが早い。冷蔵保存をしっかりしていても傷むのが非常に早く、鮮度を保つのがとても大変なのです。腐った粒が一つでもあると、あっという間に伝染してしまうので管理は徹底されています。
しかしながら、一番大切になってくるのは発注量の予測です。いくら繁忙期といえども毎日発注量は違いますから、一度に大量入荷しても消費できなければたちまち腐らせてしまいます。
そのため、日々データとにらめっこし予想を立てて、仕入れをする訳です。今考えると現在の私がしている天気予報とやっている事はあまり変わらないような気もします。
イチゴを食べて農家さんや業者を応援
物流部、営業部も、この時期ばかりはイチゴの代替え用員として毎日走り回るような状況でした。イチゴが無事みんなのもとに届けられる裏側には、こうした見えない所で頑張る方がいます。
現在は、コロナ禍で農作物全体の需要が減ってしまっていますが、今シーズンもたくさんのイチゴを食べる事で、農家さんを始め、仲介する全ての業種を応援しようと思います。
農てんきファームの冬野菜
私自身も福島市で市民農園を借りて野菜を栽培しています。いまは、冬野菜の白菜、ブロッコリーの他、セロリ、ルッコラ、パセリなどを育てています。
例年12月に入ると冬の本番を迎え、最低気温が0℃を下回る日が続くようになります。そうなると霜の影響を受け、野菜が傷む可能性がありますし、そろそろ雪による被害も心配なところです。
最新3か月予報 今季は大雪となるか
さて、今季の冬は雪がどのくらい降るのだろうかと気になる方は多いのではないでしょうか?気象庁の最新の3カ月予報を見ていきましょう。
12〜2月の降雪量を見てみると、今季は東・西日本で雪の量が多くなるかもしれないと予想しています。その一方で北日本は平年並みとしています。では、北日本は雪の備えに敏感にならなくてもよいかと思いそうなところですが、それは早計です。現在の予報技術ではいつ頃、どのような降り方をするかまでは分からないのです。
雪の降り方は分からない。一気に降る可能性も
各地で少しずつ雪が降ってくれたら大災害とはならないものですが、そんな都合よくいかないのが天気です。
この3カ月予報で示す平年並みの雪の量というのは、その期間の合計が平年と比べて多いか少ないかの予想の事です。予想される期間中、全然雪が降らず、ある日突然ドカッと一気に3か月分雪が降ったとしても、それがトータルで平年並みの量であれば「平年並みの雪の量」なのです。
地球温暖化が進むと、こうしたドカッと一気に雪が降るような事が今後増えていくのではないかと言われています。
上空の温度で分かる。雪が降る目安とは?
では、どんな時に雪が降るのでしょうか。それは上空の寒気がひとつの判断材料となります。
上空約1500メートルで-6℃の寒気が日本付近にかかるような時に予想される降水は雨ではなく、市街地でも雪が降るとされています。
冬が本格化すると、テレビなどで気象予報士達が「-6℃の寒気」と連呼し出すと思いますので、もし耳にしましたら、市街地など平地でも雪が降るかもというサインだと思って下さい。
大雪の目安は-36℃
さらに、大雪となる目安というのもあります。それは上空約5000メートルで-36℃の寒気が日本付近にかかるような時です。
特に多い所では24時間で100センチの雪が予想される事もあります。雪による交通障害はもちろん、雪の重みでハウスが潰されてしまうなどの被害も出てくるでしょう。
ラニーニャ現象で「厳冬、大雪?」
また、気象庁はラニーニャ現象が発生しているとの発表をしました。よく耳にするようになりましたが、この現象が一体日本にどんな影響を及ぼすのでしょうか。なんだかよく分からない方も多いのではないでしょうか。
結論から言うと、「日本はいつもより厳しい寒さや日本海側で雪が増える可能性がある」という事です。
ラニーニャ現象の仕組み
まず南米周辺の太平洋上では東風が吹いています。ここが始まりです。
【イラスト①】この東風が弱いと「エルニーニョ現象」、強いと「ラニーニャ現象」となります。
【イラスト②】この東風と一緒に海面の暖かい海水もどんどん西に蓄積します。
【イラスト③】そうするとインドネシア付近は普段より海面水温が暖かくなり積乱雲が発生します。積乱雲が発達する事で上昇した空気が、北の方の大陸へ向かって下降していきます。
【イラスト④】そうすると、上空を流れる偏西風もこの空気に押し上げられ蛇行するようになります。
【イラスト⑤】蛇行することで、日本付近に寒気が流れ込みやすくなります。
ラニーニャ現象が起こると、日本は厳しい寒さや、日本海側で大雪となると言われているのはこのような構図になりやすいからです。とは言え、ラニーニャだから必ず寒く大雪となる訳でもないので、やはり常に最新の気象情報で確認する事が大切です。
ここまで私の記事を読んで頂きありがとうございます。今後も最新の予想や、農業と天気にまつわる話を楽しくお伝えしていきますので、ぜひ来年もよろしくお願い致します。それでは皆さんよいお年を。
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