地域への恩返し
1973年創設以来、ナカバヤシ株式会社 兵庫工場は兵庫県養父市で日本有数の製本工場として今日まで稼働し続けています。その恩返しがしたい、地域に貢献がしたい、私たちはそんな想いを持ち、にんにくの生産を通して地域活性化に取り組んでいます。
今回は、農業参入することでできた周辺地域への貢献の事例をご紹介します。また取り組みの中でSDGsとの繋がりも見えてきました。
▼兵庫県養父市
取組事例1:遊休地の活用
養父市では、高齢化に伴い耕作放棄地が年々増加傾向にありました。耕作放棄地を放置していると、雑草や害虫が発生して近隣の農地や生態系に悪影響を及ぼす、水害など災害時の危険性が高まるといった弊害があります。
私たちは、周辺地域の高齢化に伴い増加していた耕作放棄地になるおそれのある、使われなくなっていた農地を農家から引き受けて、活用し始めました。2020年までに引き受けた土地は、点在する70 か所に上ります。
使われなくなった土地を農地として活用する取り組みは、陸の生態系保護・持続可能な利用推進にも繋がり、SDGsターゲット2.4「気候変動や(中略)その他の災害への適応能力を向上させ、着実に土地と土壌の質を改善」、目標15.「陸の生態系を保護・回復するとともに持続可能な利用を推進」、ターゲット15.2「2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進」に繋がったとも言えるでしょう。
私たち企業の使命は、耕作放棄地を増やさないよう持続可能でレジリエントな農業を世の中に提案していくことであると考えています。
取組事例2:農業の雇用モデル創出
ナカバヤシの農業事業は、農業の新たな雇用モデルの創出や、近隣農家の支援にも結びつきました。
日本の農業は、個人経営の農家や、農家主体の農業法人による経営が主流です。平成31年 農業構造動態調査によると、日本国内の農業経営体の中でも、家族経営体が全体の9割以上を占め、法人経営などを含む組織経営体は1割以下にとどまることがわかります。
この中で、農業従事者の減少も大きな課題となっています。理由には、高齢化や都心化などが挙げられますが、上述の通り、就労状態が主に個人・家族経営となることも、減少の原因のひとつと考えられます。気象条件による収穫量の変動や農業にはつきものの不作など、自然の要因によって収入が左右される中、自営業を行っていかなければならない現状があります。
企業が農業事業を行うことは、企業ならではの就労環境や福利厚生を提供できるなど、 農業に携わる人の雇用の安定や多様性を作ることができると考えています。
ナカバヤシで農作業を行うのは、ナカバヤシの社員・パート社員です。農業の閑散期や天候不良時には、製本業をはじめ工場内で別業務を行うことで、一年を通して安定した就労環境を作りました。
取組事例3:近隣農家の支援
ナカバヤシは農場周辺に、収穫したにんにくの処理や選別・乾燥作業を行う「夏梅にんにくセンター」、貯蔵・出荷作業を行う「大屋にんにくセンター」を開設し、生産から貯蔵、出荷まで一貫して手掛けられるよう整備しました。
これらの施設では、自社の圃場の収穫物はもちろんですが、近隣の地元農家が作るにんにくを、現在約20t受け入れています。
個人では負担が大きい乾燥機や冷蔵庫などの設備を企業が投資することで、企業と近隣農家が連携した農業を実現しています。周辺地域の方もにんにく栽培に取り掛かりやすい環境ができ、地域の農業の促進にも繋がりました。
▼夏梅にんにくセンターで根切り・葉切り作業をしている様子
「不揃い品やサイズが小さすぎるにんにくは、個人農家で販路を見つけることが難しかった。しかし、業務用や加工品の製造など、企業ならではの方法で市場へ回している。」と農場担当者は話します。地元農家の方から受け入れたにんにくを、企業のスケールメリットを活かして、販売へ回しています。
このような近隣農家をサポートする取り組みは、SDGsターゲット12.3「収穫後の損失を含めて生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減らす」に繋がってきます。
農業とSDGs
遊休地の活用により持続可能でレジリエントな農業を実践すること、農業と製本業の両立により地元の雇用を創出すること、近隣農家の不揃い品を受け入れ食品ロスを減らすこと、こういった地域と連携した取り組みが、結果的に様々な側面からSDGsの達成にも関連しています。
『SDGs(持続可能な開発目標)』(蟹江憲史 著・中公新書)によると、SDGs目標2では、食料生産について、経済、社会、環境の3側面を横断するターゲット設定が行われていると述べられています。農業においては、単なる大規模な食料増産を目指すのではなく、小規模農家や環境、伝統と相互共存していく方法が模索されているとあります。
ナカバヤシの農業事業は、特にターゲット2.3にある農業以外の就業の機会にアクセスできるようにすること、近隣家族経営の農家の生産性の向上などに結びついたと言えるでしょう。
これからも農業参入企業として、地域のためにできること、持続可能な社会を実現するためにできることに邁進していきたいと思います。
参考文献・SDGs訳引用『 SDGs(持続可能な開発目標)』蟹江憲史 著・中公新書
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