(気象予報士 寺本卓也)

こんにちは、農てんき予報士 寺本です。今年は寒波による大雪に度々見舞われましたが、2月の終わりになってようやく福島も暖かくなってきました。やっと春が来たという感じがします。
さて、春の風物詩と言えば「さくら」ですよね。今回はさくらが開花するこの季節と「霜害」の関係について深堀していこうと思います。とても楽しい内容となっていますので、ぜひ今回も最後までお付き合いください。
3月はこの時季らしい暖かさか

2月24日発表の1か月予報によると、3月は寒気の影響を受けにくく、暖かくなる所が多くなる見込みです。また日本海側の雪も落ち着きそうな予想となっています。3月はようやく各地で春らしい天気になっていきそうです。
さくらの開花予想
さて暖かくなってくると楽しみなのは、さくらの開花という方もいらっしゃるのではないでしょうか。ウェザーマップでは、毎年全国のさくらの開花予想をしています。今のところ、今年は2月の寒さと3月の暖かさを考慮して全国的に平年並みの開花になるのではと予想しています。
桃はさくらの1週間後に開花
実はさくらの開花予想から、他の果樹の開花もある程度予測する事ができます。
例を挙げると、福島のさくらの開花の平年値は4月7日ですが、同じ落葉樹の桃(あかつき)の開花の平年値は4月13日。さくらの開花から約1週間後です。また梨(幸水)の開花の平年値は4月20日でさくらの開花から約2週間後です。
昨年は開花が早まった
そこで昨年はどうだったか振り返ると、2月3月が全国的に平年より気温が高かったため、さくらの開花が各地で早まりました。
福島のさくらの開花は3月25日。桃(あかつき)は3月30日、梨(幸水)は4月7日と、やはりさくらの開花に引きずられるように、それぞれ約2週間程度開花が早まる事態となりました。そう、さくらや果樹の開花のカギを握るのは、気温なのです。
さくら開花600℃の法則
さくらには、「600℃の法則」というものがあります。これは2月1日からの最高気温を毎日足して大体600℃に達する頃に開花するという法則です。
これは積算温度と言われ、農業においてもよく利用されています。ある一定の温度に達すると開花するというような積算温度による考え方は、落葉果樹にも言えます。また、農家さんにとっては、その他あらゆる農作物の生育状況を予測する上でよく使う馴染み深いものだと認識しています。
暖かく感じると開花
落葉果樹にとっても気温の変化は成長に大きく影響します。落葉果樹の成長の特徴のイメージを図にしました。
夏に翌年のために花芽を作り、秋になると冬の寒さに耐えられるように、力を蓄えます。葉っぱを落とし、余計な力を使わず、じっと寒さをこらえます。冬が終わり日中の気温が高くなり暖かさを感じると、「よし、春が来た。今が花を咲かせる時だ!」と一斉に開花します。
春は霜害に注意
そして、ようやくここからが今回の本題です。この季節で心配なのは「霜害」です。
昨年福島県の桃(あかつき)や梨(幸水)などは先述した通り、春先の気温が高かった事で、平年より約2週間早く開花しました。その後4月11日、この日は急激な冷え込みとなりました。福島市では最低気温0.9℃を観測(平年のこの時期の最低気温は、約6℃)。この強烈な冷え込みの影響により多くの果樹の花が枯れました。
福島県では約30億円、山形県で約130億円など南東北を中心に襲った深刻な被害。それが「霜害」です。
開花が早いと「霜害」の危険が増す
この開花するタイミングが重要です。開花をしてしまうとそれまで蓄えていた力は花を咲かせるために使ってしまうので、もはや寒さに耐えられる力は残っていません。そうすると花は枯れてしまうのです。
3月下旬〜4月の日中は、日差しのぬくもりを感じられる時期ですが、まだまだ朝は急激な冷え込みが発生する頃でもあります。開花が早いという事は、それだけ急激な冷え込みに遭遇する期間も長くなります。「霜害」に遭う危険度が増す事に繋がるのです。
こんな天気図に注意

春先になると、上の図のような天気図を見かける日があると思います。これは移動性高気圧です。
こんな日の日中はよく晴れて各地で暖かくなるのですが、夜になると急激に寒くなります。それは、上空に雲がないので、地上から暖かい空気がどんどん逃げてしまい、冷え込むからです(放射冷却)。雲は例えるなら、熱を逃がさないようにする布団の役割をしています。
普通に生活するときは夜の天気を気にすることは少ないと思いますが、霜害について考えるときは夜の天気を気にしてみるといいと思います。
「放射冷却」と連呼し出したら「霜」のサイン
そして移動性高気圧に覆われる日が多くなるこの時季に、お天気キャスターは「放射冷却」という言葉を使う事が多くなります。放射冷却=夜の冷え込みが強まる=霜害の危険度が高まる、と思って頂いてまず間違いないと思います。
普段であれば聞き流してしまうような言葉かもしれませんが、ぜひ霜害への対策として覚えておいて頂けると嬉しいです。
予想最低気温2℃以下に注意
また天気予報の最低気温を見るときも注意が必要です。予想気温0℃以下に気を付ければよいのかと言うと、答えは NO です。
予想最低気温が2〜3℃であったら霜害となる可能性が高いでしょう。なぜかというと、一般的に発表される天気予報の気温は地上から1.5メートルの高さを想定しています。という事は1.5メートルの気温が2〜3℃予想だとしても地面の温度はさらに低く、0℃以下となるのです。

霜注意報を確認しましょう
春先に、最低気温2〜3℃以下が予想されると、前日には気象庁から「霜注意報」が発表されます。この数字は各市町村で明確に決められています。
気になる方は気象庁HP「警報・注意報基準一覧」で確認しておく事とよいでしょう。
今年の夏は暑くなりそう
最後に、2月25日気象庁は暖候期予報を発表しました。これは、今年の夏(6〜8月)の平均気温や降水量などがどうなるか、大まかな傾向を予報するものです。
これによると今年は、全国的に暑くなる確率が高いとの事です。この冬は立て続けに大雪に見舞われましたが、夏は猛暑になりそうという事で、どうやら極端な天気がこの先も待っていそうです。
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