(気象予報士 寺本卓也)
こんにちは。農てんき予報士の寺本です。
5月と言えばゴールデンウィーク(以下GW)ですね。私はと言うと、仕事の思い出がほとんどです。また、5月は田植えや畑仕事が本格化する月でもありますし、このコラムを読まれている方も、意外に休みじゃない方が多いのではないでしょうか。そんな5月もバリバリ働く皆さんに感謝の念を抱きながら、農業に役立つ最新「農てんき情報」を盛り沢山でお届けします。今回も楽しく、読みやすい内容となっていますので、ぜひ最後までお付き合い下さい。
GWは野菜がない!品質不良も
私はレストランや居酒屋などに野菜を卸す、青果の商社に勤めていました。GW中は、仕入れ先である青果市場は基本的に連休です。そのためGW後半になる頃には、野菜が在庫切れとなる事態に度々陥りました。また、この時期は冬野菜がなくなる頃(端境期)でもあります。旬を過ぎた終了間近の野菜は品質も落ちやすく、大根に「す」が入っているなどの生育不良品も発生しました。「商品が欠品してるぞ!品質が悪いぞ!早く持ってこい!」とお客様からの怒りの電話が毎日鳴りひびきました。
GW中は帰宅できず
朝から晩まで大量のクレーム処理に追われ、2〜3時間睡眠してまた出社というような地獄の毎日を過ごし、頭がおかしくなるかと思いました。当時トイレの神様という曲が流行っていて、なぜか業務終了後にトイレ清掃をしようという残業がありました。トイレの神様は穏やかな生活を送りたいという私の願いは叶えてくれませんでした。深夜に帰れず、便器を掃除していると、悔しくて涙がこぼれてきたのは今でも忘れられない思い出です。だいぶ昔の話ですし、働き方改革も進んだ現在の職場は昔とは全く環境が変わっていると思います。
農てんきファーム始動
今年の私はというと、新たなメンバーとともに農てんきファームを開始しています。いよいよ畑作業も本格化です。5月は本来カラっと晴れて過ごしやすい日が多い時期ですが、近年は様子が違います。全国的に30℃を超える真夏日が続出したり、去年は西日本だけでなく東海など東日本でも例年に比べてかなり早い梅雨入りとなりました。暑さや大雨に見舞われる事も多く、天候が読みにくくなっています。今年の天気の傾向はどうなるのでしょうか?それでは、そろそろ本題へ入りましょう。
今年の5月は蒸し暑さ・大雨に注意か
気象庁発表の1か月予報を見てみましょう。まず平均気温は全国的に並みか高い傾向です。また同じく東・西日本を中心に雨量が多く、日照時間も少ない予想となっています。平年の5月ならば、高気圧と低気圧が交互にやってきて、強い雨風の日もあれば、晴れる時はカラッとした暑さの日もあるというイメージです。しかしながら、今年はどうやら違うかもしれません。農家の皆さんにはあまり嬉しくない天気となる可能性が高まっています。
5月に早くも「梅雨入り」発表あるか?
気象庁は1か月予報の中で、暖かい空気に覆われやすい一方で、湿った空気も流れ込みやすいと解説しています。もう少しかみ砕くと、梅雨前線ができて、早くも「梅雨入り」の可能性があるかもしれないというイメージでしょうか。最新の予報で随時確認する必要がありますが、今年の5月はカラッとした暑さではなく「ジメジメした蒸し暑さ」や「大雨」が待っているかもしれません。
今年の桃は、生育順調
少し話は遡りますが、去年の春、東北地方を中心に記録的な遅霜被害が発生しました。私は、先日桑折町の桃農家に取材しました。こちらは皇室へ献上する桃産地として有名です。去年の遅霜被害時にも取材しましたが、今年はある変化に気づきました。それは、霜対策用の「防霜ファン」が設置されていたのです。これは上空の暖かい空気を送る事で、地上が冷え込まないようにする装置です。この装置の助けもあり、今年の桃は順調に育っていました。
5月は黄色信号 病気発生に注意
遅霜の可能性はなくなりましたが、次に心配なのは病気の発生です。今月はまとまった雨や日照不足・ジメジメとした暑さなどが予想されています。まさに病気が大量発生する悪い条件が揃っていると言えます。今年の5月は病害虫防除を念頭に入れた野菜や果樹の栽培管理を考慮する必要がありそうです。
暑さも災害 「熱中症警戒アラート」開始
果樹や野菜の管理はもちろん大切ですが、一番気をつけなければいけないのは、作業する皆さんの健康です。5月は体が暑さに慣れていない時期です。そこに季節外れの暑さが予想されているのですから、なおさら注意が必要です。続いて紹介する最新の気象情報は、「熱中症警戒アラート」です。一体この情報はどんなものなのでしょうか?これは、去年の夏から全国的に発表が開始された比較的新しい情報です。暑い日の中でも特に暑くなると予想され、「熱中症にかかる危険性がかなり高まるおそれがある時に発表」されます。「いつも以上に、積極的に熱中症予防に努めて欲しい時に発表」される物だと覚えて頂ければと思います。
温度は古い?新たな暑さの表現方法
普段皆さんは、暑くなるかどうかを予想気温で確認されると思います。しかしながら、ここには問題がありました。気温のみの判断だと、熱中症で救急搬送される人数とどうも関係性が一致しないのです。そこで、暑さの判断を気温だけでなく、「湿度」、「日差しの強さ」などを取り入れる事にしたのです。その新たな情報が「熱中症警戒アラート」です。これは気温だけでは分からない、「猛烈な蒸し暑さ」を予想していると覚えておいてください。
熱中症警戒アラートが発表されたら
熱中症警戒アラートは前日の午後5時か、当日午前5時に暑さ指数33が予想される時に発表されます。この場合猛烈な蒸し暑さが予想されています。危険な状況ですから、原則作業は止めましょう。命の危険の及ぶ暑さと認識する必要があります。その他、農作業中の熱中症対策を4つお伝えします。①高温時の作業は避けましょう。②単独作業は避けましょう。(なるべく2人以上で作業を)③20分おきに休憩・水分補給④適宜マスクを外しましょう。今月も天気に振り回される日々が待っていそうです。上手に最新の気象情報を利用し、大雨や季節外れの暑さから農作物と自分の身を守っていきましょう。
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