(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士、寺本です。
先日は10年に一度と言われる大寒波が日本列島を襲い、各地で記録的な大雪となりました。被害に遭われた方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
さて2月に入り皆さんが気になるのは、このような大寒波が再び来るかどうか?という事ではないでしょうか。
私も、「もう心配いりません。」と言いたい所ですが、もう少し大雪や厳しい寒さに警戒が必要となりそうです。
その一方で、3月に入ると急に春がやってきそうな傾向もあり、この先は目まぐるしく天気が変わっていきそうです。一体どういう事でしょう。
では、農てんきスタートです。
2月も北・東日本は大雪・猛ふぶきに警戒
最新の1カ月予報の降雪量を見てみましょう。
すると、北日本と東日本の日本海側の降雪量は平年並みか多い確率となっています。
ここで大切なポイントはこれらの地域では「冬型の気圧配置がまだまだ強まる可能性が高い」という事です。それは、ただ大雪になるのではなく風もとっても強い事を意味します。
要するに北日本と東日本を中心に「大雪・猛ふぶき」に今月も警戒が必要という予想なのです。
北・東日本で厳しい寒さも続く
また、平均気温も見ていきます。すると、強い寒気の影響を受ける北日本は特に気温が低く、東日本の日本海側も平年より低い状況が続くかもしれません。
先日の大寒波の際は、北日本を中心に日中も氷点下という状況となりました。
福島県のイチゴ農家に取材したところ、「大雪の被害はなくても、この極寒の中では、ハウス内の気温がなかなか上がらず暖房代がかかりすぎてしまう。」と悲鳴を上げていました。
記録的な寒さも農業にとっては静かなる災害です。今月もまだ寒さ対策が必要となるでしょう。
大寒波の原因は「JPCZ」
先月の大寒波の原因の一つが、日本海に発生する帯状の発達した積乱雲のまとまり「日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)」です。
これはシベリアから日本に流れ込む寒気が、朝鮮半島の白頭山(ペクトサン)にぶつかり二つに分かれ、日本海で再びぶつかって一つになる所で巨大な積乱雲が次々に発生する現象の事です。
先月25日、このJPCZが流れ込んだ岡山県真庭市上長田では24時間降雪量は93センチを観測しました。1月に一気に降った雪としての記録を更新するドカ雪となりました。
温暖化も大雪の原因?
さらに、最新の研究によると、このJPCZによるドカ雪の原因の一つに地球温暖化が考えられる事が分かってきています。
それはなぜでしょうか。実は、地球温暖化の影響により近年どんどん海面水温が上昇しており、上空との温度差が大きくなっているのです。イラストをご覧ください。
海面水温が高いと、大気中の水蒸気量は増加します。この水蒸気は雲の素となります。海面と上空の温度差が大きいため、暖かい空気は浮力を得て、どんどん発達した積乱雲(雪雲)ができるのです。
今月もJPCZ発生の危険度高い
先月20日発表の気象庁の海面水温の予想を見ていきます。
すると2月20日までの日本海の水温は平年より高いとしています。水温が高ければ水蒸気量は増えるため、雪雲がどんどん発達する危険度が高まります。
ここに先日のような記録的な大寒波がやってきたら、再びJPCZが発生し、局地的なドカ雪が発生する可能性があるのです。
念のため、今月もまだ大雪には注意が必要といえるでしょう。
21世紀末はJPCZ増加のおそれ
気象庁は21世紀末の将来予測として、日本全国の年間の雪の降る量は「今より約70%減って、さらに冬の期間も短くなるだろう。」という見解を出しています。
ただ一方で、今回のような「10年に一度の大雪」は本州山岳部や、北海道の内陸で増加するおそれがあるとしています。
記録的低温で水道管が凍結
また先日の寒波は記録的な低温をもたらし、水道管の凍結や破裂といった被害も多発しました。
こちらの写真は、番組内で私が紹介した福島県のいちご農家さんが送ってくれたものです。朝方-12℃まで気温が下がり、水道管が凍結して困ったと言っていました。
今月も厳しい冷え込みが続く予想が出ているため、油断はできません。
水道管凍結対策
水道管凍結対策として、簡単にまとめました。よく言われているのは水道管を布なのでくるんで保温したり、少しずつ水を流す事で凍らないようにするという物です。
ここで気になるのは、その料金ですよね。福島市水道局に取材したところ、実は一日ポタポタ流しっぱなしにしても料金は100円未満、おそらく数十円程度との事でした。破裂してしまった時の修理代と比べたらよっぽど安いですよね。
今月、西日本は晴れの日多い
さて、ここで再び一カ月予報に戻ります。
さんざん大雪の話をしましたが、西日本に関しては、どうやら晴れる日が多くなりそうなんです。
高気圧に覆われる日が多くなり西日本で日照時間が平年並みか多いとしています。今月は、西と東で天気や気温の変化が両極端な傾向にあり、農作物の管理が難しくなりそうです。
3月は急に春の到来か
また今回は、さらに少し先の予想もみていきます。
なぜなら、今年は3月に入ると急に春がやってきそうだからです。最新の3カ月予報の平均気温を見ると、北日本・東日本では平年並みか高い予想です。
3月に入ると寒気が弱まり、各地で気温が上昇し春本番の暖かさになっていきそうです。
3月も西日本は晴れやすく
3月の降水量を見てみると、西日本では平年並みか少ないと予想しています。
要するに晴れる日が多くなりそうという事ですね。最近は季節の移り変わりがゆっくりではなく、急になってきているなと感じます。
果樹の開花早まる見込み
ウェザーマップでは独自にさくらの開花予想をしています。
さくらは気温と深い関係があります。さくらの積算温度を計算することで、開花する時期をある程度予測する事が可能なのです。
またさくらの開花の傾向が早いかどうかは、桃や梨、りんごと言った多くの落葉樹にも通じる事です。
今年は、どうやら全国的に開花の傾向が早まる可能性が高まっています。
3月で多くの果樹が開花する事になれば、今年は再び遅霜の被害も多発するのではないかと少し心配な気持ちでいます。天気予報を上手に活用し、農作物を守っていきましょう。
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