(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 松瀬智仁)
こんにちは。インテージの松瀬です。
2023年も早1ヶ月が経ち、1年で最も寒い時期になりました。この時期に旬を迎える冬の野菜は色々ありますが、みなさんにとって"冬の定番"はどの野菜でしょうか?
私がパッと思い浮かべる野菜は、「大根」です。
私の実家には畑があって、いくつか野菜を作っている中に大根があります。年末年始に帰省すると必ず採れたての大根を使った料理が出てくるので、冬の野菜というイメージを持っていました。
冬の大根は甘みも強く、おでんや煮物など寒い季節の料理の主役でありながら、価格も安くお求めやすい食材。
今回は、大根に焦点を当て、消費動向を見ていきたいと思います。
大根の売上はいつがピーク?
まずは、全国のスーパーマーケット約600店より収集した「インテージSRI」のデータで、大根の販売金額の推移を確認します。
▼大根の販売金額規模の推移
(出所:インテージSRI)
年間を通してみると、大根の販売金額は10月にピークを迎えています。夏場よりも冬場の方が大きい傾向もみられますが、真冬でもないにもかかわらず10月の伸びが突出していました。
なお、2020年のみ4月にも伸びが見られます。これは、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い緊急事態宣言が発令され、巣ごもり需要が急伸した影響によるものです。
大根は12〜2月頃の冬に生産量が増えるはずですが、10月に最も売上が伸びているのはどうしてなのでしょうか。
その要因を探るため、10月に大根を使ってどんなメニューが作られているのか、1,260世帯のデータである「インテージキッチンダイアリー」で確認してみます。
▼大根を使用したメニューの出現率(2022年10月の上位ランキング)
(出所:インテージキッチンダイアリー)
出現率とは、大根を使用したメニューの総数を100した時の各メニューの割合です。差分は2022年10月の出現率から2022年計の出現率を引いた値であり、差分が1ポイントを超えるメニューを黄色で網掛けしています。
2022年10月、2022年計ともに1位の味噌汁の出現率が30%超と圧倒的に大きく、季節を問わない定番メニューである味噌汁で、大根が多く使われているようです。
差分に着目すると、豚汁やおでんと気温が下がる時期に食べられるメニューが上位に来ています。10月ともなれば秋も少しずつ深まり、体が温まる料理を食べたくなるためでしょう。
注目したいのが「塩焼き・素焼き(魚)」です。2022年計よりも出現率が2倍以上大きく、10月に消費が伸びていることが見て取れます。10月の焼き魚と言えばサンマが挙げられ、サンマと相性抜群の“大根おろし”需要が高まっているのではないでしょうか。
また、ランキング3位に「大根おろし」が入っていることからも、大根おろしの需要が大根の消費を下支えしていると窺えます。
キーワードは「免疫力の向上」、「腸活」
続いて、「大根おろし」が焼き魚以外にも、どういったメニューと一緒に食べられているのかを確認してみましょう。ここでは、大根おろしと一緒に食卓に並ぶ割合を「同時出現率」として見ており、2022年の上位10メニューを抜粋しています。2021年との比較で、2022年に出現率が10%以上伸びたメニューを黄色で網掛けしました。
▼大根おろしのメニュー同時出現率
(出所:インテージキッチンダイアリー)
先ほどの焼き魚はもちろんのこと、白飯、味噌汁、日本茶、野菜の浅漬け・塩漬けなど、伝統的な和食料理の1品として食べられていることが分かります。紅茶(ホット)も、出現率は大きくないものの、食中や食後の飲み物として飲用が増えているようです。
注目したいのが、納豆、ヨーグルトと一緒に食べられている点です。時系列でみても、2022年に大きく伸びています。
大根おろしは、すりおろすことで生まれる栄養素を含んでおり、整腸作用の効果があるとされています。
コロナ禍で健康志向が高まる中、免疫力の向上にもつながる腸活への関心が集まり、食べ合わせの仕方が多様化しているようです。
大根おろしは誰が食べている?
それでは、注目される「大根おろし」と「納豆」「ヨーグルト」の食べ合わせは、誰が行っているのでしょうか。年代別に確認してみます。
▼大根おろしの年代別メニュー同時出現率
(出所:インテージキッチンダイアリー)
納豆の同時出現率は、どの世代でも伸びており、大根おろしとの食べ合わせの相性の良さが見て取れます。40-50代や60-70代と比べると20-30代の出現率は低いものの、出現率は10%を超えており、幅広い世代で支持されていると言えるでしょう。
一方、ヨーグルトの同時出現率はどの世代でも伸びているものの、60-70代の出現率が突出しており、20-30代や40-50代の出現率は低い水準に留まっています。ヨーグルトは大根おろしと同様に整腸作用がある食べ物とされており、便秘解消の効果が期待される食べ合わせです。高齢の方ほど便秘に悩む傾向があることから、60-70代でとりわけ人気となったと推察されます。また、ヨーグルトには健康のためだけではなく、デザートとしても楽しみたいという需要もあり、果物などと彩りのある食べ合わせの方が20-30代や40-50代では主流だったのかもしれません。
免疫力向上の手段として、大根おろしの消費拡大を期待
今回の読み解きから、「大根おろし」の需要が大根の消費を支えていることが分かりました。背景には健康志向の高まりがあり、納豆やヨーグルトなどとの食べ合わせの良さも、大根おろしの人気理由と見られます。
コロナ禍の行動制限も撤廃され、世の中も戻りつつあるものの、まだまだ感染は広がっており予防も必要です。感染予防のために腸活で免疫力を向上させる食べ物として、大根おろしの人気が今後も高まっていくことが期待されます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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