(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本です。
先月も各地で大雪に見舞われました。雪国の福島に来る前は、大雪は物流が麻痺するし野菜の生育も鈍るし、本当に冬が大嫌いでした。
それが40歳手前にして、スノーボードにはまってしまうんだから、人生って面白いです(へたくそですけど。)。
しかし、冬の終わりが見えてきました。しかも、今年は一気に暖かくなりそうです。
どういう事でしょうか。「ちょっと、まだスノボ滑り足りないんだけど。」と言う私の気持ちを無視するかのように季節は進みそうです。
では、今月も楽しい内容盛り沢山の、農てんきスタートです。
春に三日の晴れなし
「女心と秋の空」なんて言葉を聞いた事がある方は多いと思いますが、実は春先のこの時期も天気が変わりやすいんです。
冬は冷たい空気の勢力が強すぎるため日本海側の同じような所で雪が降って、太平洋側は晴れて空気カラカラなんて天気が続きます。
その後、3月頃になると冬の冷たい空気の勢力が弱まるため、日本付近には低気圧と高気圧が交互に通過するようになります。
春の天気が4日くらいで変化する事から「春に三日の晴れなし」なんて言われたりもします。
春の低気圧に注意
3月前半は、まだ冬の名残があるため、雪の降るような日があります。
3月の後半になってくるといよいよ雪ではなく雨が降り、しかも大雨となる事も少なくありません。なぜかと言うと、低気圧の力の源は、「異なる空気の気温差」です。
冬の冷たい空気も残りつつ、どんどん気温が上昇してくる季節の変わり目は、低気圧が急発達する好条件なのです。
近年は、低気圧の接近により、一日で100ミリを超える降水も珍しくありません。例年通りならば、今月は春の大雨に注意が必要なのです。
しかし、今年はどうやら様子が違います。
今年の3月は晴れが続く?
1か月予報の降水量を見ていきます。するとほぼ全国的に少ないか、平年並みか少ない予想。
そして、日照時間も合わせて見ると、ほぼ同じ場所が晴れる予想です。
気象庁はこの先、冬型の気圧配置が弱く、高気圧に覆われやすい日が続くだろうと見込んでいるのです。
今月は晴れの日が多くなるのでしょうか。
暖かすぎる3月か
続いて、1か月予報の平均気温を見ていきます。
3月の期間全体を通して全国的に平年より高い予想です。地球温暖化の影響なのでしょうか。近年は季節の変わり目がないくらい天気や気温が極端だなと感じます。
早くも4月頃の陽気続くか
ここからは、ウェザーマップ独自の16日予想でこの先の天気を見ていきます。
(最新の各地の予報はウェザーマップHPから確認する事ができます。https://forecast.weathermap.jp/)晴れマークが並び、さらに気温も平年よりかなり高くなっています。
おおむね4月頃の気温が連日続く見込みです。こうなると、植物の生育に大きく影響しそうです。
桜開花ラッシュと遅霜
先月のコラムでもお伝えした桜開花予報ですが、こちらも今回の予想を受けて大幅な修正となっています。
全国的に開花が早まっています。桜の開花が早まれば、桃やリンゴといった落葉果樹の開花も早まると言えるでしょう。
平年より早い開花は遅霜の危険性が増すため、黄色信号(注意)点灯だと個人的には思っています。
このあたりは、また来月のコラムでお伝えしていきたいと思います。
ハイブリット農業工場
話は変わりまして、私は先月9日に、喜多方市にあるAML植物研究所に取材しました。
このコラムではたびたびスマート農業(ロボットやAIなど最先端技術を使用した農業)について取り上げていますが、今回は少し違います。
驚きの最新機械を取り入れつつ、大自然の喜多方市ならではの環境を生かしたハイブリットな農業を実現していたので紹介したいと思います。
天気に左右されない野菜作り
こちらの工場では主にリーフレタスを栽培しています。特徴的なのは、土を使用しない水耕栽培という点です。
特殊な機械を使いLED照明、温度、湿度などを自動管理し、一年中同じ条件で栽培する事を可能にしています。
ただ、それだけではありません。そんな最先端の農業を可能にしているのは、喜多方市に流れる「おいしい水」です。この水が、液肥の素となります。
どんなに技術が進歩しても、自然の恵みがやはり大切なのです。
徹底した衛生管理 クリーンルーム
また、この施設内は衛生管理がはんぱないです。
スタッフは完全防備し、ミストシャワーなどで殺菌した後にようやく施設内で作業を開始。
なんでこんな事をしているのかというと、菌を入れない事で、完全無農薬の野菜を作っているのです。
環境にも配慮しているSDGsな農業ですね。
もはや災害時保存食
しかも、菌の数が極めて少ない事から、洗わずそのまま食べられる事や、袋を開けない状態なら約3週間日持ちするという驚きの事実。
後日、そんな事あるかいと疑いを持っていた私は、わざと3週間冷蔵庫で保存させたのですが、全然中身が傷んでいる様子がありません。
袋を開けて食べてみたら、シャキシャキとして新鮮で驚きました。疑ってすみません。もはや災害時用の保存食としてもいいなと感じました。
これらのレタスは「AMLブランド野菜」として販売しています。一体何か他のレタスと違う所があるのか?気になる所ですね。
野菜には元々健康に良いとされるビタミンやミネラルなど「機能性成分」が含まれています。
AML植物研究所では、独自の栽培技術によりそれらの濃度を調整させた「高機能性野菜」の生産に成功しました。
具体的には牛乳と同等のカルシウム量の商品や、赤ワインと同等のポリフェノールの商品などがあり、
これらを一つ食べるだけで、健康にも美容にも良いスーパーフードなのです。
一人暮らしでご飯作るのが面倒くさい自分にとってはとても助かります。
福島から世界へ
そんなAML植物研究所で働く人もスーパーな人でした。グローバル戦略部長の菅野さんは、取材の3日前に入社したばかりで元外交官のスーパーエリートな方でした。
外交官時代に社長と縁があり、また故郷である福島への想いから転職を決めたそうです。
菅野さんは「我々の栽培技術があれば、世界中のどこでも工場を立てる事ができる。福島から世界に広めていきたい。」と新たな外交の夢を語ってくれました。
福島から世界へ、今後の発展が楽しみです。
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