一般社団法人 次代の農と食をつくる会(以下「次代の会」)代表理事の千葉康伸と申します。
このたび次代の会として、農業の未来をテーマにコラムを連載させていただくことになりました。これから宜しくお願い致します。
私自身は、有機農業が本業です。10年ほど前、30歳でサラリーマンを辞めて農業の世界に入りました。高知県の土佐自然塾、山下農園で2年間研修したのち、神奈川県愛甲郡愛川町で新規就農しました。
「五感を研ぎ澄まして、畑で自分の感性に焼き付けること」という山下一穂氏からの教えを実践し、野菜類を約50品目栽培しています。主な出荷先は県内の生協・イオン・ビオセボン、小田原市内のレストランへの販売などになります。
また、農場では常時5名以上の研修生を受け入れる傍ら、農場外でもNPO法人有機農業参入促進協議会代表、アグリイノベーション大学校専任講師、丹波市立農の学校特別顧問などを務めるなど、人の育成にも注力しています。
そんななか、2018年より「一般社団法人 次代の農と食をつくる会」代表理事にも就任しました。
次代の会について
私たち次代の会は2023年現在、6名の理事と1名の監事で運営する小さな組織です。
有機など環境負荷低減を志向した農業技術が広がっていくための、様々なボトルネックを解決することで、子供たちが夢をもって安心して農業を職業の選択肢として数えられるような社会を目指しています。
そのためにまずは、各地で様々にいま積み重ねられている経験やノウハウの蓄積、人のつながりなどが全国で共有しあえるようなネットワークづくり、場づくりを様々な仕方でおこなってきました。
さらに現在は、農水省のオーガニックビジネス拡大支援事業を活用しながら、有機農業の産地拡大を包括的に支援するコンサルティング事業を展開しています。
一例としては、千葉県いすみ市の公立学校給食に使用を目指す有機野菜の、栽培技術向上を目指すプロジェクトの講師をつとめるなどしています。
みどりの食料システム戦略が示した、農業の課題
さて、農業の未来といえば、昨今では農水省の掲げる「みどりの食料システム戦略」が話題になることが多いと思います。
既に周知されている通り、そこでは化学合成農薬・化学肥料の使用削減、有機農業の普及を目指して大胆な目標が掲げられており、また一方では、それらを実現する手段としてスマート農業化など最新テクノロジーへの高い期待も伺える内容となっています。
同戦略は食と農の未来を、環境的側面も踏まえて作られており、具体的にはプラネタリーバウンダリーで示された
①生物の多様性
②チッ素資源
③リン資源
この3つがすでに地球上で危機的状況を迎えていることに言及されています。
特に②③は農業生産の三大要素の二つになります。
農業生産におけるエネルギーの代替えを図ると共に、①の自然と生態系を保全・改善していく為に有機農業を推進することを目標に掲げたということです。
これからの農業にできること
誤解のないようにお伝えしておきたいのですが、ここで大切になるのは、何が○で何が×だとかのポリシーを異なる立場からぶつけ合う、押し付け合うことではありません。
農業者のみならず、社会全体がこの危機的状況を認識し、少しでも出来ることから、それぞれが行動していくことでは無いでしょうか?
理想と現実の中で葛藤しているのは、社会も農業者も常に一緒です。次代の会では、単なるオーガニックや有機農業という枠をこえて、持続可能で多様性のある豊かな社会を目指しています。
有機農業が良くて慣行農業が悪い、などという単純な話ではありません。
どんな形で農業に関わっていても、それぞれを認めあい、協力関係を作っていきたい。そのために出来る行動の種類や、その行動はどうすれば出来るかなどを、今後のコラムでは触れて話していきたいと思います。
未来から資源を前借りするだけでなく、循環をテーマに新しい仕組みと社会を一緒につくっていきましょう。
今後のテーマ
これからの連載では、一例として下記のようなテーマを取り上げていくことを考えています。
とはいえ、読者からのリクエストには積極的にお応えしていきたいと思いますので、下記以外の内容でも、ぜひお気軽にご要望をお寄せください。
・病害虫抑制のための土づくり
・野菜ごとの土づくり
・コンパニオンプランツを知る
・認証制度の基本
・有機農産物のマーケット事情
・グリーン購入法について
・地域活性とオーガニックビレッジ
・持続可能な農業を学べる学校の紹介
◆テーマのリクエストはinfo@jidainokai.comまでお願いいたします。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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