(株式会社インテージ 西日本支社 リサーチデザイン部 住吉雄大)
こんにちは。インテージの住吉です。
前回の「手軽さが人気!拡大するカットフルーツ市場_『データに基づく食生活のトレンド分析』Vol.27」にて、日本は毎日果物を食べている人の割合がアジア圏で一番低いということを紹介いたしました。
前向きに捉えると、日本における果物の消費量はまだまだ増える余地があると言えるでしょう。
今回は、果物の消費拡大の機会について、データに基づいて考えてみたいと思います。
果物市場の直近の動向
販売が伸びている果物はないかを確認してみました。全国のスーパーマーケット約600店より収集した「インテージSRI」生鮮POSデータにて販売金額の変化を見ています。
【果物の種類別販売金額の変化】
(出所:インテージSRI)
過去5年間の長期的な年平均成長率と、2021年と2022年を比較した短期的な前年比を確認すると、どちらも高いのは、バナナ、すいか、梨であることが分かりました。
バナナは近年ブランド化が進んだことと、機能性表示をパッケージに表示した商品が増えたことが背景として挙げられます。
すいかに関しては、1/8玉や小玉すいかなど、少人数の家族でも食べきりやすい少量のものが人気となっていました。
今回は、過去5年間も長期的に成長しており、かつ2021年と2022年の比較でバナナやすいかよりも伸長した梨に焦点を当てて、好調の要因を見ていきます。
特に販売が増えている梨の品種は何か
梨の販売金額の推移を品種別に見ると、その他以外では、幸水と豊水の販売金額が大きく、2019年から2022年にかけて増加傾向にあることが見て取れます。
2022年対2019年比では、幸水の109%に対して、豊水が117%ととりわけ大きく伸びているようです。
【梨の品種別販売金額の推移(2018年〜2022年の年別)】
(出所:インテージSRI)
続いて、品種ごとの季節性を見るために品種別かつ月別の販売金額の推移を確認します。
【梨の品種別販売金額の推移(2022年の月別)】
(出所:インテージSRI)
幸水は8月、豊水は9月が販売量のピークとなっており、品種によって旬となる月が違うことが窺えます。
ピークとなる月の販売金額が、そのほかの月の値を大きく上回っていることから、それぞれの品種で旬の時期が限られていると言えそうです。
口コミから見られた旬の大切さ
それぞれの品種を購入する時期によって、商品の評価や口コミは異なるのでしょうか。
いつ、どこで、だれが、何を、何と一緒に購入しているのか、30万人分の買い物がわかるCODE「買いログ」データから、2022年の幸水・豊水の口コミを見てみましょう。
8月が旬の幸水では、7月に「みずみずしいけど、少し甘さが足りない」という否定的な口コミが見られていましたが、8月になると「みずみずしくて美味しい」という好意的な口コミが多く見られました。
ところが、旬を過ぎた9月になると「少し傷んでいた」といった否定的な口コミが増加。豊水も同様に、旬の時期に好意的な口コミが多く見られました。(出所:リサーチ・アンド・イノベーション CODE「買いログ」)
消費者が旬を重視しているかどうかを定量的に見るため、幸水と豊水について、旬に関する口コミの発話量を年代別に比べてみました。
旬を表すキーワード群を「旬、秋、季節、時期、初物」と定め、幸水と豊水の商品別の口コミにおけるこのキーワード群の含有率を確認しています。
【幸水と豊水の口コミ内「旬」のキーワード含有率】
(出所:リサーチ・アンド・イノベーション CODE「買いログ」)
年代別に比較すると、30代を除くすべての年代で、幸水の含有率が豊水を上回っており、40代以上の年代では年代が上がるほど高くなる傾向が見られました。
豊水よりも早い時期に旬を迎える幸水で、より季節性が重視されるのかもしれません。
また、ご高齢の方ほど旬を重視する傾向が見られるということは、若年層には旬を意識してもらうことで梨を購入してもらう余地があるとも捉えられます。
さいごに
今回、梨のトレンドと、品種別の旬の時期と生活者の年代別口コミを分析しましたが、品種によって旬の時期が異なり、また旬を逃すと思ったより甘くなかったり、傷んでいたりといった口コミが見られました。
特に品種別にみると、幸水のほうが、旬に関する口コミが多く、旬を捉えることの大切さを意識して購買されている可能性があります。また年代別に見ると、若年よりも高齢層で、旬に関する意識が高いのではと思われました。
ここから読み取れることとして、梨のそれぞれの品種の旬を若年層にも訴求していくことで、各品種の需要を伸ばすことができるのではないかと考えられます。
今年の幸水と豊水はどのような売れ行きになるのでしょうか。私個人としても、梨に限らず、果物を買う際には旬の時期を意識して選んでみたいと思います。
今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。
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