(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは、農てんきな気象予報士の寺本です。
梅雨空の中、先日私は宮城県「やくらいガーデン」の菜の花畑でかくれんぼをしました。
さて、気象の世界では、「雷が鳴ると梅雨が明ける」という言葉がありますが、先月末は全国的に大気の状態が不安定となり各地でゲリラ雷雨が発生しました。
そう、梅雨末期は大雨が発生しやすいのです。そして、長期予報では、まさに今月大雨の予想が出ています。
能天気ではいられません。今月も農業に役立つ天気の情報「農てんき」を皆さんにお届けします。ぜひ最後までお付き合いください。
九州は特に大雨警戒か
まずは1か月予報(降水量)を見てみましょう。すると北海道や東・西日本で降水量が平年並みか多い予想です。
特に九州では降水量が平年より多くなる見込みとなっています。実はこの予報は31日間合計の雨量予想のため、いつ頃、どれくらい降るかまでは分かりません。
そのため、この雨量が一気に降る可能性もあるのです。実際に近年7月上旬は突然の豪雨による災害が多発していますので、今年も十分注意が必要となるでしょう。
梅雨前線がしつこくやってくる
この大雨の原因となるのは、梅雨前線です。本州付近にしつこく停滞する見込みで、活発な雨雲が日本列島に次々にやってきそうです。
黄色い表示の所は、大雨を表現しています。もしかするとこの雨雲が線状降水帯となるかもしれません。
線状降水帯とは活発な雨雲が帯状に連なる現象の事で、発生すると数時間のうちに平年の1カ月分を超える雨が降り、土砂災害や、河川の増水・氾濫など命に関わる危険な状況を引き起こします。
大雨への備えを早めにしておくとよいでしょう。
7月は雷雨が発生しやすい
そして7月中〜下旬、梅雨明けが各地で発表されるような頃になると、今度は各地で雷雨が発生する事が多くなります。
夏の強い日差しは地面付近の湿った空気を暖め、激しい上昇を起こし、雷雲を発生させるのです。これが、いわゆるゲリラ豪雨です。
夏の晴れた日の午後は、急速に雨雲が発達しやすく、雷雨・突風・ひょうなどに注意が必要です。
北・東日本で高温の7月
続いて、1か月予報(平均気温)を見ていきましょう。すると、北日本と東日本で高い予想となっています。
気象庁は、特に北海道と東北で深刻な暑さが予想される事から、高温に関する早期天候情報を発表しています。
これは、熱中症対策はもちろん、農作物や家畜の管理などにも十分注意してほしい暑さになるよ、という内容の情報です。
曇天続きで蒸し暑く
ウェザーマップ独自の16日予報で福島の天気を見ていきます。
予想最高気温は30℃以上の日が多く続く見込みです。さらに天気を見てみると曇天続きです。
日差しがなくても気温が下がらず、また湿度が高いためかなりの蒸し暑さが予想されます。
その他の地点をご覧になる場合はウェザーマップHPを是非ご活用ください。
高温による農作物の管理に注意
稲は出穂前の高温で、葉の色が薄くなって十分に栄養が取れなくなる可能性があり、これから収穫最盛期を迎えるトマトなどは、しおれや葉焼けに加え、花粉障害が発生するおそれがあります。
稲には、光合成ができるよう必要に応じ追肥を施したり、ビニールハウス内で作る農作物に対しては換気や遮光シートなどで室内の温度を上手に下げる必要がありそうです。
熱中症警戒アラート
今月は人間も暑さに注意が必要です。
熱中症警戒アラートをご存知ですか?これは、「熱中症の危険性が極めて高くなると予想された時に、危険な暑さへの注意を呼びかけ、熱中症対策をぜひしてください!」という内容のものです。
前日17時頃と当日5時頃に都道府県単位で発表されます。
農作業中の熱中症
農林水産省のデータによると、毎年約30名の方が熱中症で死亡しています。
また死亡事故の約85%が7〜8月に発生しています。
また熱中症にかかりやすい人を年代で見てみると、70代以上が約9割を占めています。
一般的に高齢者は暑さや水分不足に対する感覚機能が低下するとされているため、特に熱中症に注意が必要です。
農家向け熱中症対策
①70歳以上の方は気温の上昇を感じづらくなるため、日中の高温時(午前10〜午後3時)を避けましょう。
②高齢者はのどの渇きにも気づきづらいとされています。のどが渇いていなくても20分おきにコップ1杯分の水分補給をしましょう。
③単独での行動は、熱中症になった際に発見が遅れる可能性があるため、複数人で作業するよう心掛けましょう。
オーガニック農業「旬彩ファーム」
私は先月27日に福島県白河市の旬彩ファームさんを取材しました。
こちらでは年間約100種類の野菜を育てていますが、栽培方法にはこだわりがありました。
化学肥料や農薬を使用せず、米ぬかなどを発酵させて作った有機肥料のみで栽培を行っていました。
自然本来の育て方で、環境に優しい農業を目指すオーガニック農家です。
大雨の影響もすくすく育った玉ねぎ
玉ねぎ畑を見ると、マルチはせず、むき出しの状況でした。そのため雑草も少し目立ちましたが、マルチをしないのには理由がありました。雨が多いとマルチの内側で蒸れて玉ねぎが腐ってしまうおそれがあるからです。今年の6月の白河市は平年の1.5倍の雨量の大雨となりましたが、収穫期を迎えた玉ねぎの茎が枯れた程度で、実は大きく育ちました。
こだわりの土には栄養が豊富で、雑草による影響もなく、とても甘くて味が濃く、美味しい玉ねぎでした。
6次化で農業の新たな魅力を
さらに、こちらの旬彩ファームでは作ったオーガニック野菜を販売するだけでなく、自分達で加工も行っています。
色鮮やかなサラダボウルや、ジャム、ドレッシングなど普段の野菜をもっと美味しく、目で見ても楽しんで頂けるような農園オリジナル商品作りを季節の野菜に合わせて随時開発しています。
若い人に農業の魅力を伝えたい
また店頭だけでなく、インターネット販売や、関東でマルシェ出店と精力的に販路拡大に取り組んでいます。
お客様に直接お会いして販売する経験が、さらに生産の現場においておいしい野菜作りに活かされるそうです。
若い人達が農業に魅力を持ってもらえるようにという大きな目標を掲げる旬彩ファームさんの取材を通し、私自身もさらに頑張らないとという気持ちになりました。
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