アグリウェブをご覧の皆さん、こんにちは。渡辺パイプ株式会社です。
私たちはビニールハウスのメーカーであるとともに、設備や栽培技術を含めた総合提案によって、お客様の笑顔のために、ニーズにお応えできる企業を目指しています。
本連載では、農業経営を営む方々が安心して栽培し、農業経営が少しでも豊かになるような情報発信をしていきたいと考えています。
渡辺パイプのグループ直営農場である「げんき農場 羽生」(埼玉県羽生市)では、最新の温室設備の開発・運用実践のみならず、実際にイチゴの栽培・出荷・加工品販売事業までを行い、一農業経営体としてイチゴ農場の経営にチャレンジしています。今回は「いちご×スマート農業」についてご紹介します。
農業を取り巻く現状
本格的な夏に入り連日猛暑が続く時期となりました。
気温も上がり農作業中の熱中症なども増加する傾向にあります。
ビニールハウス内の温度は高温になりやすく、人体への影響だけではなく作物やハウス内機器へ負担がかかり,
収量減少や機器故障の原因などにも繋がります。
季節の変化だけでなく、一日の中でも刻一刻と変わっていくハウス内環境を一定に維持するのは大変労力がかかるものです。今回は労力の一部を軽減できる「スマート農業」についてご紹介します。
スマート農業とは
スマート農業とは、「ロボット、AI、IoTなど先端技術を活用する農業」のことです。施設園芸ですと、各種センサー情報(温度、湿度、日射量、CO2濃度、写真など)を基にかん水したり、植物に適した環境条件となるよう、各種機器を自動制御したりすることも指します。
これらの技術は、効率的な栽培環境の管理、品質管理の向上、生産性の向上、資源の効率的な利用などを実現します。
また、IoTとの連携により外出先からもハウスの状況を確認、制御できることで、ちょっとした旅行や家族の行事などにも気軽に参加することが可能になります。農業といえども「オン」と「オフ」のある、“次世代農業”を作り上げることが出来ます。
スマート農業の実施例
①栽培環境管理、品質管理について
厳寒期、日の出までにいかに温度を上げるかを重視しています。
イチゴの場合、光合成適温は20〜25℃と言われており、日の出とともに光合成を効率よく開始するには、日の出時刻に温度を上昇させておく必要があります。
しかし、夜温で冷えた環境から急激に温度上昇させるとイチゴに結露が生じ、気孔が開きにくくなり光合成効率が低下したり、灰色カビ病の発生リスクが高まります。
この注意点をふまえてハウス内機器を以下のように制御しながら最適な環境を作ります。
・暖房機
AM3:00から1時間ごとに1〜1.5℃刻みで温度上昇させています。
・換気
日の出後、光合成に必要なCO2を外気から取り込みます。天窓換気幅を小刻みに設定し、時間をかけて開けることで急激な温度低下を防ぎます。
・内張カーテン
日の出後、光合成に必要な光を取り込みます。段階的にカーテンを開けることで、少しずつ上層の冷たい空気と馴染ませることで急激な温度低下を防ぎます。
この様に自動制御システムを活用することで、光合成の促進や病害の抑制を人の手をかけずに行う事ができ、収量、品質の向上にも繋がります。
②生産性向上、資源の効率的な利用
植物への水やりは日射比例制御という、日射量に応じて植物に与える水量を調整する手法で行っています。
メリットとしては以下の項目が挙げられます。
・水の効率的な利用
晴れの日は蒸散が増え、植物の水需要も高まります。日射比例灌水を行うことで、水の節約につなげます。
・生育促進と品質向上
適切な水量を提供することで、植物の生育促進やストレスを軽減し、収量や品質の向上を期待できます。
・病害虫リスクの軽減
過剰な水やりは、病害虫の発生リスクを高めることがあります。
・自動化と効率化
作業労力を削減し、生産管理の効率を向上させます。
下のグラフは天候による灌水量の比較をした時の実験結果になります。
◆スマート農業の注意点
スマート農業を導入したからといって栽培が上手くいく訳ではありません。
センサーや自動化システムの設置や操作においては、適切な知識とトレーニングが必要です。
弊社では成功している篤農家さまの見学を通して、最新の営農を学ぶ事が出来るオンラインモデル農場見学会を開催しております。
もしご興味があればご覧ください。
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(招待者欄にアグリウェブと記載いただけましたら無料にてご視聴いただけます)
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【本コラムの執筆者】
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