(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。前回のコラムにおいて、3年いた福島を離れますとお伝えしましたが、先月から広島テレビで働く事になりました。
とは言え、どこに行っても私のやる事、農業と天気の関係を楽しく伝えるスタイルは変わりません。広島ではレモンやはっさくなどの柑橘類が有名なので、今後取材するのが今から楽しみです。そしてなぜか番組デビュー初日から農大名物大根踊りを披露し、出演者をはじめ視聴者の皆さんに若干引かれてしまったと思われます。
空回ってはいましたが農業と天気に対するとても熱い想いが、広島の人にも伝わってくれたらと思っています。さて、その気になる今後の天気はどうなるかと言うと、熱い想いではなく「とても暑い」5月になりそうです。では今月も農てんき楽しくスタートです。
5月は全国的に気温かなり高い
4月25日気象庁発表の1か月予報(平均気温)です。全国的に真っ赤となっていて、例年の5月より気温が高くなる予想となっています。大体例年ゴールデンウィークあたりまでは、急な冷え込みによる遅霜に注意しなければいけないものなのですが、今年はあまり心配する必要はなさそうです。
上空に強烈な寒気が流れ込む気配がないのです。一方で、上空には暖かい空気が流れ込みやすい状況が今後も続く見込みです。今月はたまに肌寒いとか、少しヒンヤリするなという日はあっても、全国的にこの時期より暖かい日が多くなりそうです。
高温に関する早期天候情報
また、気象庁は4月30日に「高温に関する早期天候情報」を発表しました。これは、発表日の6日後〜14日後までを対象として、5日間の平均気温が「かなり高い」もしくは「かなり低い」となる確率が30%以上と見込まれる場合に発表されます。
気象庁がこの情報を発表する時は、この先の異常な気温で農作物に影響が出ないように注意して欲しいという想いが込められています。今回で言うと、全国的に暖かい日が続く見込みのため、作物の生育が急速に進み出荷が早まる物が出てくるかもしれません。
東京は連日25℃以上か
ウェザーマップ独自の16日予想を見てみます。するとやはり気温の高い日が多いですね。そして気になるのは、早期天候情報で予想されている5月9日よりも前から25℃前後の日が多くなっています。一方で30℃、35℃までの上昇は予想されていません。
こうして考えると、5月は単発で猛暑となる日は少ないかもしれませんね。その一方で、「5月に入ってから、ずーっと暑いなー。」とか、「〇日連続で25℃以上の夏日で暑い」というような所が全国的に出てくるかもしれません。また東京以外の地点をご覧になりたい方はhttps://forecast.weathermap.jp/をぜひご確認ください。
九州は日照不足に大雨も
一方で、こちらは日照時間の1か月予報です。すると、今月九州では日照が少ない可能性が出ています。こちらは暑さに加え、湿った空気が流れやすい予想となっています。九州南部の平年の梅雨入りは5月30日です。そろそろ雨雲がかかりやすくなる時期になってくる九州では、日照不足や急な大雨にも注意が必要となりそうです。
メイストームに注意
スーパーコンピュータによるこの先の雨雲の動きも見ていきましょう。今月はまだ梅雨時期のような長時間の雨が降り続くというよりは、発達した低気圧に伴う単発の大雨に注意が必要となりそうです。台風並みの暴風や大雨となりやすいこの時期の低気圧は「メイストーム」などと呼ばれたりします。
特に西日本などでは、活発な雨雲がかかりやすい予想となっています。先月のコラムでもお伝えしましたが、今月も急な雷雨、突風、ひょうなどが発生しやすい状況も続きますので、天気の急変に注意が必要です。
広島まいたけ総合レジャー施設に潜入
さて私は、先月28日に広島県東広島市にある、入野舞茸ふれあいの里を取材してきました。広島市内からは車で1時間程です。広島空港が近くにありますが、このあたりはほぼ山に囲まれた自然あふれる素敵な場所です。ここでは、まいたけの栽培工場の見学、収穫、そして食堂、宿泊施設まで併設されており、ゴールデンウィークにぴったりの場所でした。
絶品まいたけそば
ここには、まいたけ食堂という、まいたけづくしのお食事処がありました。まいたけごはん、そば、うどん、そしてピザなどメニューも様々。その中でも私はまいたけそばを注文しました。めちゃめちゃ大きいまいたけの天ぷらや漬物がどっさり、肉厚で味がしっかりしていてとても美味しかったです。
まいたけ工場へ
案内して下さったのは、まいたけ作り34年の東さん。三菱重工を脱サラした後、会社を始めた異色の経歴の持ち主で、まいたけ作りの知識0から始められたそうです。国産のおがくずの使用、地元の天然水を利用するなど試行錯誤を重ねていくうちに、肉厚がしっかり、味の濃いまいたけ作りができるようになったそうです。
湿度90パーセントを保つ
工場の中は、ジメジメとした体感です。上を見ると、巨大な霧吹きが何個も設置されていました。ここから、入野の天然水が噴射される仕組みで、部屋の湿度が90%にしているという事です。上質な水と湿度で、まいたけに適した環境作りをしています。
ただの電灯ではない
また、霧吹きの他に電灯も沢山設置されていました。微妙なほのぐらさにしているのにも理由がありました。実はこれは、紫外線の電灯です。人が歩けるくらいの明るさにしているのではなく、紫外線をあてる事でまいたけを黒くさせているのです。人間でいうところの日焼けですね。
白いまいたけ
紫外線電灯のあたりにくい、下の方にあったまいたけは確かに白色でした。こういった白いまいたけを手作業で上に移動させながら、綺麗に色付けをしていくのだそうです。
まいたけ収穫
収穫したまいたけ4株を頂きました。どれも大きく、味もしっかりしていて、とてもおいしく頂きました。ただ、東さんのお話の最後に、実は種菌を売っている会社が最近高齢のため廃業したとの事で、今後の経営が難しいかもしれないと話してくれました。
素晴らしい技術をもった生産者が失われていく現実に寂しさを感じます。私自身もっと農業の楽しさを伝えられるように日々精進しなくてはと考えさせられる取材となりました。
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