(株式会社Agriee)
本シリーズでは、実際に寄せられた相談の事例を交えながら、栽培管理や土づくりのポイントを解説して参ります。
第二回となる今回は、適切な土づくりを進めるための3つの視点「物理性」「化学性」「生物性」について解説します。一番作物の成長に影響するのは「物理性」です。
畑・田んぼとして使われている土の環境は、自然界にある他の土とはまったく異なります。一つの種類の植物が、あれだけ密植している環境は、自然界のどこを見わたしても存在しないのです。そのため、疲弊のスピードも、自然界の他の土に比べると比べ物にならないくらい早く進んでしまいます。
だからこそ、きちんと管理をしなくてはどんどん疲弊をしてしまい、使い続ける(作物を作り続ける)ことが難しくなってしまうのです。これからもずっと畑・田んぼとして使い続けるために、継続的に、適切な土づくりを心がけましょう。
土の「物理性」「化学性」「生物性」の視点
土づくりを進めるためには、まずは「土」を知ることから始めましょう。「土」を見るときには、「物理性」「化学性」「生物性」の3つの視点に分けて観察します。
物理性
この中で一番作物の成長に影響を及ぼすのは「物理性」です。なぜなら、しっかり土に根を張ることが出来てこそ、作物が成長を始める準備が整うからです。
まずは、踏ん張って立つことが出来、ごはんが食べられるカラダを作る、というイメージです。これが出来ていないと、いくらごはん(肥料)を用意しても全然大きくなってくれない、逆にお腹を壊してしまう(肥料焼けなど)ということに繋がってしまいます。
意識するべきは、根張りのしやすい環境を作る(団粒構造など)、ごはんを食べやすい環境を作る(水管理など)です。
化学性
次に効いてくるのは「化学性」です。大きくなるために必要なごはんをちゃんと準備してあげる、というイメージです。作物も、成長ステージによって必要とする栄養素の種類、量は変わってきます。これを意識して、食べやすい(吸収しやすい)形で準備してあげる必要があります。
生物性
最後に大切なのが「生物性」です。これは、例えるなら、腸内細菌を整えるイメージに近いです。これさえすれば確実に効果が出る!というものではないですが、ヨーグルトを食べる、食物繊維を取る、発酵食品を食べる、等を続けることで人の健康を維持するように、長い目で見て対策を取ることが必要になります。
作物が腸内細菌(共生する微生物)を得られるのは土からだけなので、土の微生物のバランスを整えることで、作物の免疫力を上げるお手伝いをします。
具体的には、たい肥を施用する、有機物を施肥する、輪作をする、など土の微生物が偏りなく増えられるような環境を提供するための対策に加え、病害菌が増えてしまった場合に太陽熱消毒をする、なども生物性を整えるための事例として挙げられます。
「物理性」「化学性」「生物性」の順に土を見る
土づくりの対策は総合的に行いますが、上記からご理解頂けるように、土を見るときの順番としては、「物理性」→「化学性」→「生物性」の順でチェックをする必要があります。
前回もお話しましたが、土について困り事が起こると、「土壌分析しなくちゃ!」と考えられる方が多いですが、実際には、分析する前に現地で確認することで改善できることもたくさんあるのです。
物理的な条件の確認方法
では現地で何を確認したらよいのか?ですが、「おかしいぞ?」と思ったら、まずは土の物理的な条件を確認しましょう。
長めの棒をさしてみて、どのくらいの深さまで力を入れずに差し込むことが出来るか(根張りのしやすさに関係します)、握ってみてどのくらいの硬さがあるか(団粒構造の有無を確認できます)、それから、「おかしいぞ」と思い始めた日からの、降水量、日射、気温等の情報があるとより良いです。
まず、「踏ん張って立てる環境か」「ごはんが食べられるカラダになっているか」を確認します。柔らかく、団粒構造も出来ていれば、踏ん張ってごはんが食べられる状況です。
ただ、作物は土の中に「水」がないとごはんが食べられません。土の中にいくら栄養が入っていたとしても、これを運んでくれる「水」がなくては吸い上げられないのです。
そのため、実際にどのくらい雨が降ったか、どのくらいの日射・気温条件にあったか(これによって土からの蒸発量や植物からの蒸散量を推測出来ます)も情報としてあると、どのくらい水が残っていたか(栄養を吸える環境にあったか、逆に、多すぎて水ばかり吸ってしまっていたのではないか)を推測することが出来、状況把握に役立ちます。
また、品質を向上させるにあたっても「水管理」はとても重要です。収穫前に、いつ、どのくらい水を吸わせるかで「味の濃さ」が変わってくるからです。
「水」に関する物理性の課題
現場でお話させて頂いていると、この「水」にかかる問題で課題が起きている事例は意外に多いです。
例えば、雨があまり降っていなかったから成長が進んでいないのだろう、と、水を撒いたけれど全然回復しない、なぜ?とお話頂き、よくよくお話伺ってみたところ、気温の高い昼間に水を撒いてしまったために逆に土壌中の水の蒸発が促されてしまって、それまで以上の水不足を引き起こしていた、ということもありました(畑に水を撒くなら、気温が低く、水の蒸発量が少ない早朝または夕方がおススメです)。
異常気象が常態化しつつある昨今、こういった「水」「高温」に関わるお悩みの事例は増えてくるだろうと思います。経験による判断だけでなく、データに基づいて判断する、ということも重要性を増していくと考えています。
シリーズ『相談事例に学ぶ!栽培管理と土づくり』のコラムはこちら
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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