(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
こんにちは。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。最近は急に寒くなりましたね。私自身気温差で体調を崩しがちです。皆さんは、お身体大丈夫ですか?無理なさらないで下さいね。そんな極端な気温の変化は野菜にとっても負担が大きく、皆さんも今年はいつも以上に栽培に苦労されているのではと思います。
今月は寒さが増し、これまでの暑さが嘘だったかのように大雪も心配されます。農業に役に立つお天気情報「農てんき」は、そんな異常な天候に打ち勝つための貴重なコラムです。ぜひ最後まで読んで頂き、日々のお仕事に役立てて頂けたら幸いです。では今月も農てんきスタートです。
今月は平年並みの寒さ
先月28日気象庁発表の1か月予報(平均気温)によると、今月は全国的に平年並みの予想となっています。
今年は暑い、もしくは暖かい日がしばらく続いていた訳ですが、いよいよ今月はこの時期らしく本格的な寒さが到来しそうです。
昨シーズンの冬は全国的に深刻な雪不足となりました。今シーズンは暖冬ではなく、冬らしい寒さですし、しっかり雪も降る予想です。
今シーズンの冬は日本海側で大雪注意
また、何度かコラムでもお伝えしていて、もういいよという声が聞こえそうですが、大切な事なので今回も書きます。
今シーズン(12月〜2月)の冬は日本海側で大雪になりやすい傾向は変わっていません。また、ほどよく雪が降ったり止んだりで積もってくれたらいいのですが、そうではなく一気に雪が積もるドカ雪となる可能性が高いです。
雪の重みで果樹などの枝が折れたり、冷え込みで野菜が枯死してしまったり、もしかするとハウスが積雪で倒壊する可能性もあります。
平地で雪のサインは-6℃
平地で雪になるかどうかが分かるサインがあります。気象予報士が平地で雪が降るかどうかを判断する時に使うのが、上空1500メートルの温度です。―6℃の寒気が流れてくる時は、山だけでなく平地でも雪が降る可能性が高いと判断しています。
早速、12月7日(土)には北海道から九州の日本海側を中心に-6℃の寒気が流れてくる予想です。この枠内に入っている地域では平地でも雪が降る可能性が高いです。
大雪のサインは-36℃
さらに大雪になるかどうかが分かるサインというものもあります。今度は、さらに上空5500メートルの寒気を見ていきます。-36℃の寒気がやってくるような時は山はもちろん、平地でも大雪となる可能性が高いです。
12月8日(日)の予想を見ると、北海道から山形・宮城あたりまで-36℃の寒気に覆われているため、このあたりは一気に雪が降りドカ雪となる可能性が高いのです。
今シーズン初の本降りの雪に注意
こちらは、メッシュ天気予想です。色の違いで各地の天気を表しています。これを見ると、今月は早々に本降りの雪に注意です。白い表示が雪、水色がみぞれや雪となっています。
先ほどの寒気の流れ込み具合を見ると日本海側を中心に平地でも雪が降り、山沿いはしっかりと積雪し、北海道や東北は各地で大雪となるおそれがあります。今シーズン初の本降りの雪にご注意ください。
地球温暖化で大雪になりやすい
さて、今月中旬〜年末頃には雪の降り方もパワーアップしていきそうです。一体なぜそんな事が予想できるのでしょうか?
もちろん上空の寒気もどんどん強まりますが、大雪の原因はそれだけではありません。実は、今年の猛烈な暑さとも関係があるんです。
大雪の原因は、上空の寒気と海の温度差です。この差が大きければ大きい程、海から水蒸気が大量に発生するため、雪雲が発達し大雪となりやすい訳です。ですから、地球温暖化で海がいつもよりも高い状況であると、その年は大雪に注意が必要といえます。
海面水温が高く
では、その海の温度はどうでしょうか。こちらは、気象庁が発表している海の温度の予想です。
こまかい図で少し見にくいかもしれませんが、日本の周りが真っ赤になっていますね。これは平年の12月後半に比べると海の温度がかなり高い事を示しています。
そのため、ひとたび日本に強い寒気が流れてくれば、海との温度差が大きいため、どんどん発達した雪雲が作られる訳です。年末は日本海側を中心にドカ雪になる可能性があるため、雪への備えはしっかり早め早めにしていきましょう。
今年は野菜の育成が難しく
私は広島テレビ局内の敷地で、野菜を育てていますが、中には生育が厳しい品目がありました。こちらはサニーレタスです。
10月9日に種をまき、その後10月18日にようやく発芽しました。ただし、この時の気温は29.3℃と9月中旬頃の暑さでした。その後も10月の終わりまで25℃の夏日を観測するなど記録的残暑がサニーレタスの体力を奪いました。
寒暖差疲労は野菜も
11月に入り、心地よい暖かさの日は少なく日に日に寒さが増していきました。こちらは11月28日に撮った写真です。発芽してから1か月以上経つというのにほとんど成長していません。サニーレタスは暑さが苦手ですが、15℃以下の寒さでは成長が遅くなると言われています。
野菜の卸売会社、「広印広島青果」さんに取材したところ、「多くの農家さんが、今年は暑さの影響で植えても野菜が枯れてしまい、植え直した後も急な寒さで生育が遅れたりと非常に厳しい状況にあります。」と話してくれました。
私も実際に野菜を育てる事で、今年の異常な天候での野菜の生育がどれだけ難しいか身をもって感じました。
今年もありがとうございました。
今年を振り返ると、暖冬による深刻な雪不足から始まり、記録的な猛暑、9月には能登半島での豪雨など、地球温暖化の影響がやはり年々深刻になっているなと感じます。異常な天候は農業の現場にも襲いかかり、葉物野菜が育たず、数年に一度の高値などと報道される事態にもなりました。
私も取材を通し、農家さんの厳しい状況を目の当たりにする事が多く、とても心苦しく感じる一年でもありました。この「農てんき予報」コラムでは農家の皆さんに寄り添った、いちばん農業に役立つお天気情報として今後も全力で発信していきます。
厳しい天気に一緒に立ち向かって行きましょう。今年も一年ありがとうございました。
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