(株式会社ウェザーマップ 寺本卓也)
明けましておめでとうございます。農てんきな気象予報士の寺本卓也です。今年も何卒よろしくお願い致します。
昨年は記録的に暑い一年となりました。2024年の年間平均気温と日本近海の海水温は、これまで1位の記録(2023年)をいずれも大きく上回り統計開始以降最も高い値となりました。地球温暖化は年々加速している状況となっています。
しかしながら、この冬はかなり寒いですし、日本海側を中心に度々大雪となっています。一体なぜでしょうか。
この農てんきコラムでは、今年もそんな気になるお天気の疑問や最新情報を農業に役立つ視点からわかりやすく・楽しくお伝えしていきます。ぜひ最後までお付き合いください。
今年は暖冬ではなく寒冬
早速、気象庁が先月発表した1か月予報(平均気温)を見ていきます。今回初めて、私のコラムをご覧になる方もいらっしゃると思いますので、簡単におさらいです。
この情報は、1か月先の天気や気温、雪や雨の降り方など大まかな予想を発表するものです。毎日の天気予報のように詳しくは予想できないけど、なんとなく大ざっぱに1か月先の天気を知りたいという方にとても有益な情報です。
日本全国が青い表示となっていて、平年の1月と比べると、どこも気温が低くなるという予想です。昨年は暖冬でしたが、今年はいつも以上に寒い日が多くなりそうだという事が分かります。イチゴの暖房費などが心配なところです。
日本海側でドカ雪注意
では雪の量は、どうでしょうか。続いて降雪量の予想を見ていきます。
すると北は北海道から西は島根県まで日本海側を中心に青や水色の表示です。今月はいつもの1月と比べて「雪の量が多くなるぞ。」と予想しているのです。
昨年は暖冬のため各地で雪不足となり、スキー場がオープンできなかったり、水稲に必要な貴重な山の雪解け水がなかったり深刻な問題となりました。今年は雪が降る日は、ドカッと大雪となるおそれがあり、雪の降り方に注意する必要があります。
ではなぜ、今年は日本海側でこんなに雪の量が多くなるのかというと、それは冬の典型的な天気パターン「西高東低の冬型の気圧配置」が強まるからです。
シマシマが増えるとドカ雪・猛吹雪に
この図は以前のコラムでも紹介しましたが、冬の荒天を判断するのにとてもわかりやすいので再度お伝えします。冬の天気図でよく見かけるこのシマシマ模様は、「西高東低型」、「冬型の気圧配置」などと気象業界で呼ばれています。名前は覚えなくて大丈夫です。
このシマシマの数が多ければ多い程、「風が強く」、さらに「ドカ雪」となる可能性が高いという事を表しています。シマシマの数が日本に5〜7本以上あると警報級のドカ雪・猛吹雪になりやすいです。
ちなみに冬型の時に太平洋側で雪が降らないのは、日本海側の山で雪として全て降ってしまうからです。太平洋側の地域は反対に、晴れて空気の乾燥する日が続きそうです。
海面水温が高いとドカ雪の原因に
大雪の原因で、「上空の寒気」という言葉を皆さんも耳にした事があるかもしれません。ただ、ドカ雪の原因はこの寒気だけではありません。実は海の温度も関係しています。もっと言ってしまえば地球温暖化で、ドカ雪の可能性は増えていると言えます。
なぜかというと、雪の素となるのは、海からの水蒸気です。この水蒸気と言うのは海の温度が高い程、大量に発生します。ですから、強い寒気がやってきた時、もし海の温度がいつもよりも高い状態にあると雪雲がどんどん作られて大きな雪雲に成長するのです。これがドカ雪の原因です。
日本海暖かく・日本海側はドカ雪注意
気象庁の海面水温予想を見てみましょう。少し見づらいかもしれませんが、日本からすぐ近くの日本海では若干赤くなっているのがわかるでしょうか。
この赤い部分は、いつもの1月と比べると海面水温が高くなっている事を表しています。ですから、上空の寒気が流れ込む時には、日本からすぐ近くの海が暖かいため、水蒸気が大量に発生し急激に雪雲が発達する可能性があるということです。
昨年は深刻な雪不足でしたが、今年は急なドカ雪に十分注意する必要があります。ひと昔前は雪はシンシンと降るイメージでしたが、今後も地球温暖化が進むと、降る時は一気に降る極端な冬の天気が多くなってくるかもしれません。
ウェザーマップ独自の2週間予報
令和6年能登半島地震から1年経ちました。昨年1月の輪島の1月の降雪量は27センチ、最深積雪(1か月で最大どれだけ雪が深く積もったか)は9センチでした。一方、平年の1月の降雪量は54センチ、最深積雪は22センチと雪の多い地域です。今年は、雪やみぞれの日が多い予想となっています。
昨年9月は豪雨にも見舞われ、本当につらい一年を過ごされたと思います。今年は平穏な天気を願い、私自身も詳しい情報を発信する事で、今後の防災減災にお力添えできればと思います。
改めまして自己紹介
今回初めてこのコラムをお読みになっている方も多くいらっしゃると思いますので、ここで改めて簡単な私の自己紹介をしようと思います。
私は東京農業大学を卒業後、青果会社で7年間働いていました。当時も台風や猛暑による野菜の被害は毎年のように発生して、時には仕入れ先の畑が冠水し、キャベツの収穫に急遽遠方に応援するなど天気に大きく振り回されてきました。
そんな自身のこれまでの経験を活かして、農家の皆さんのためになるお天気をお伝えしたいという想いから、気象予報士を取得し、現在農てんきな予報士としてこのコラムを執筆しています。
今年も全国の農家さんのために
また普段は広島テレビで天気を伝えています。広島テレビの「テレビ派」という番組内でも、農てんきというコーナーを定期的にしています。そこでは、「広印広島青果株式会社」のさかたさんの取材を通して、天気と農業のリアルな現状を伝えています。こちらは昨年末に放送した内容です。
2024年は本当に暑くて野菜や農家さんのダメージが大きい一年となりました。「寺本さん、ぜひテレビで野菜を沢山食べてとお伝え下さい!」と、さかたさんから切実なお話を受けその想いを放送しました。私が農家さんのためにできることがあれば、今年も全力でやっていこうと思います。
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当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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