今の作業のやり方は、本当にベストなのだろうか?
これ以上に良い方法は考えられないのだろうか?今回のコラムでは、【方法を変える】について、儲かるカイゼンのポイントを解説する。
【方法を変える】改善を推進するためには、①問題を発見する、②問題を解決する、ことが重要である。先ず、問題を問題として認識することが肝要で、問題に気づかない状態では、あえて今のやり方を変える必要性がないので、改善しようとは思わないし、動機付けも働かない。では、どのようにしたら問題に気づくようになるのか?
1つめは、常日頃からベストな作業は何か?を追求し考えることである。もっと良い方法はないか?自分で思いつかない場合は、他の事例を参考にすることも有益である。貪欲に同業他社や異業種の改善事例の情報を収集し、自社への適用を考えることで、徐々に改善のポイントが見えてくる。異業種でも参考になるヒントは多く、どんな視点から、何を問題としてとらえているか?の検討ポイントを理解することが重要である。
2つめは、やりづらい点を事実として認識し、【方法を変える】ことを諦めないことである。
やりづらい点に慣れてしまい、やりづらさを感じなくなるのが一番の課題であり、多く見られるケースである。問題を認識することが、方法改善のスタートとなる。こうなれば作業が楽になるのになぁ、と先ずは、あるべき姿を考えることが必要である。
問題を発見したら、次は、問題を解決する、ということになるが、難しく考える必要はない。機械化などの設備投資に頼ることも一つの手段であるが、資金制約もあり簡単に投資することは難しい。設備投資するにあたって、現状のやりにくい作業を自動化しても、ロスを含んだ作業方法を機械化することになり、投資額も大きくなり、投資対効果を考慮すると、難しいと判断されるケースが多い。投資を考える前に、まず、シンプルな改善により、現状の【方法を変える】ことでロスを徹底して削減することがポイントとなる。
今回は、現状の【方法を変える】ためのシンプルな改善着眼として「動作経済の原則」を紹介するので、是非、農業現場で、すぐに試して欲しい。動作経済の原則は、「動作の数を減らす」「両手は同時に使用する」「移動距離の短縮」「動作をシンプルに、簡素化する」の4つある。
「動作の数を減らす」とは、ある作業をするために、6つの動作で作業していたものを4つの動作にして、動作を少しでも減らすことである。例えば、葉物野菜の包装工程で、葉などを調整して、袋詰めする作業において、現状は、野菜を取る、調整する、調整後野菜を置く、次の野菜を取る、調整する、調整後野菜を置く、を繰り返し、ある程度野菜がたまった段階で、調整後野菜を取る、袋に入れる、袋を置く、という動作になる。一見まとめて作業するので効率的に見えるが、1商品当りの動作数は、①野菜を取る、②調整する、③調整後野菜を置く、④調整後野菜を取る、⑤袋に入れる、⑥袋を置く、6動作が必要となる。この作業は、調整と袋詰め作業を連続して行うことで、①野菜を取る、②調整する、③袋に入れる、④袋を置く、となり、2つ動作数を減らすことが可能になる。小さなことであるが、余分な取り置きを減らすことで、生産性は20%程度向上する。
「両手を同時に使う」とは、左右の手を機能させることを意味する。ここで気をつけてほしいのは、ただ手を同時に動かしていれば良いということではなく、機能させる(価値を産む)ことが重要である。農作業では、左手で農作物を保持して、右手で作業するケースが多いが、この左手は真の意味で価値を産んでいるだろうか?保持しなくても良い改善ができれば、左手も右手同様に価値を産む作業ができて生産性は2倍になる。着眼ポイントは、左手での「保持」、「抑え」、「持つ」などの動作を、問題として認識し、改善することである。
「移動距離の短縮」とは、文字通り、移動する距離を短くすることで、効率化を図ることである。改善検討でのポイントは、商品を持って移動することの距離短縮だけでなく、空手(何も持たない状態)での歩行や空運搬にも着目することである。人の動き、流れを分析して、どのようなレイアウトで、モノ流れ、人の流れを設計すると、効率的かが見えてくる。流れをコンパクトに改善した上で、コロコロコンベアなどの導入を検討することが重要となる。流れを改善しないまま、ただ設備を導入しても、面積効率、投資効率が悪く、何のための改善か?見えなくなるためである。
最後に、「動作をシンプルに、簡素化する」とは、自動化などの設備投資も手段一つであるが、自然の力や、人間工学的な視点から改善すること、である。例えば、農作物の運搬は、重力を利用して上から下に移動させる、小さい穴を通す作業であれば漏斗(じょうご)のように大きなガイドを使って簡便に通せるようにする、などが考えられる。やりにくいと感じる作業は、自然の力や人間の動きに反した動作になっている。そこを問題点ととらえ改善することが重要となる。
ひとつ事例を挙げて改善検討してみよう。袋詰めした商品を、箱入れする作業において、商品を入れるために、箱の高さ分持ち上げていることを問題点として認識できるか?がポイントとなる。箱の高さ分、重力に反した動きをしていることで、疲労の蓄積、移動時間がロスにつながってくる。改善としては、平面的な商品の流れの改善に加えて、立面(高さ)で見た商品の流れと人の動作を分析し、改善案は、商品と箱の高さ位置の改善、箱への投入を持ち上げずスライドさせる、商品をまとめて投入する、など検討できる。また、小さな改善点ではあるが、箱の蓋部分の高さを問題点として、蓋を折り曲げ維持できるようにすることで、大きな改善成果につなげた事例もある。
このように、【方法を変える】とは、設備導入による改善だけでなく、動作に着目し、ムダな動作を定義して、改善し成果につなげることも重要である。まずは、何を問題点として感じるか?ロスの感度を高め、小さな改善着手で、大きな成果につなげることからスタートしてみては、いかがであろうか?
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