全国には休日のみならず平日も県内・県外から多くのお客様が来場し、地域経済の活性化に繋がっている直売所も多く見られる。しかし、その一方で、自ら生産した農産物を販売したくても、なかなか集客がうまくいっていない直売所も多い。多くのお客様が来場し賑わっている直売所とそうでない直売所では一体どこが異なっているのだろうか。
今回、店舗販売の成功ポイントとして、①お客様を魅了する看板商品づくり、②こだわり商品の品揃え、③お客様を呼び込むための仕掛けづくりの3点を挙げたい。
お客様を魅了する看板商品づくり
店舗販売、つまり直売所を運営するに当たり重要なことは、まずお客様にご来店いただくことである。それは、生鮮品であっても、加工品であっても同じである。お客様が全国に数多くある直売所の中からわざわざ買いに来てもらうための看板商品をいかに作り出すかが大切である。
北海道の上士幌町で酪農を経営している「(有)十勝しんむら牧場」は、親から引き継いだ酪農を「放牧酪農」へと経営転換し、牛が本来あるべき姿に戻そうと土づくりから取り組んできた。直営の直売所であるクリームテラスは、牧場という立地を生かしたショールームとして、生産現場に密着し、自然を感じてもらえる「場」となっている。また、新鮮な牧草を食べ、広大な草地を歩き回ってストレスなく育った牛の生乳を使用し、なおかつ、日本ではまだあまり知られていないミルクジャムを製造している。種類もシンプルなプレーンから、バニラ、シナモン、ジャワティー、モカ、イチゴミルク等を揃えており、全国各地のこだわりの素材ともコラボレーションをした看板商品となっている。
こだわり商品の品揃え
全国には直売所だけではなく、低価格志向の大型商業施設やスーパーマーケット、コンビニエンスストアがあふれている。そのような店舗との競争に勝ち残るためには、看板商品と合わせて販売するこだわり商品の品ぞろえを充実することが重要である。
愛媛県に内子町という人口1万6,000人の小さな町がある。この中山間地域の小さな町の道の駅「内子フレッシュパークからり」には年間74万人が来場している。この直売所では、内子町の生産農家約430人のみを「からり直売所出荷者運営協議会」の会員とし、内子産に徹底的にこだわった農産物を取り揃えている。また、トレーサビリティにもいち早く取り組み、使用した農薬や栽培履歴が登録されていないと販売することが出来ない仕組みを構築することで、お客様に安心・安全な農産物を提供している。品ぞろえも農産物や花卉だけではなく、地元産の農産物を使用して作った加工品や「内子豚」を使用したハム・ソーセージ、また地元の文化を守るために組織された「手仕事の会」が生産した工芸品等、品ぞろえも充実している。
お客様を呼び込むための仕掛けづくり
お客様の来店を増やすためには、新しいお客様を呼び込み続ける方法と、一度来場したお客様にファンになってもらい何度も足を運んでもらう方法がある。定期的にイベントを開催したり、来店するたびに違う刺激を経験できる工夫をすることでお客様のリピート率を上げるとともに、ファンによる口コミ等によって新たなお客様にも来店していただく仕掛けづくりをすることが大切である。
熊本県菊池市で養鶏事業を行っている(株)コッコファームが運営する「たまご庵」は、自社の卵商品の他に地元の熊本県菊池市の生産者250名と連携し、新鮮な野菜を、毎朝、並べてもらっている。また、「たまご庵」では、毎月20日を卵の日として「卵の詰め放題」のイベントを開催している。この網の袋にどれだけ卵がつめられるかというイベントには、朝から行列が出来るくらい大人から子供まで幅広く参加している。さらに、定期的に様々なイベントを開催することによってお客様が来るたびに違う刺激を味わえるようになっており、年間100万人が来場している。
店舗販売を成功に導くために
生産者による店舗販売は、栽培した生産物に自らが値段を付けて販売することでき、また自分の生産した野菜の評価を消費者から直接聞き、消費者が何を求めているのか「マーケット・イン」の視点で考える機会を得ることができることにつながる。消費者にとっても、直売所に行けばスーパーマーケットやコンビニエンスストアでは味わうことが出来ない、その地域ならではの風土・文化を体験ことができる。今回、紹介した三つのポイントを活かし、生産者と消費者がお互いに「ウィン・ウィン」となる関係を構築することで、生産者が店舗販売を行うメリットを最大限に生かすことが重要である。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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