石川県白山市にある株式会社六星は、地権者250名から約1,700筆、約148haの農地を引き受けており、水稲に関しては約140haと石川県最大の耕作面積を誇っている。また、社員の平均年齢は34歳と、日本の農業就業人口の平均年齢である66.8歳(2016年)のおよそ半分となっている。今回は株式会社六星の6次産業化の成功のポイントについて解説する。
6次産業化による多角的な販売戦略
"株式会社六星の売上高は約11億8,000万円(2017年3月期:見込)であり、主力商品は「米」である。しかし、売上構成比を見てみると、餅32.0%、米21.0%、惣菜食品18.0%、和菓子7%、その他22.0%となっており、主食用の米よりも、加工品である餅の売上比率が高くなっている。また、販売先別に見ても、直営店50.4%(4店舗)、卸39.4%、インターネット通販・その他10.2%とバランスとのとれた売上構成となっている。当社の商品となる米や加工するためのもち米は、全て自社で栽培している。例えば同じコシヒカリだとしても、農薬不使用の「特上コシヒカリ」、減農薬減化学肥料の「六星コシヒカリ」、「白山米コシヒカリ」と3種を栽培している。また、うるち米の「ハナエチゼン」、「にこまる」や餅の原料となる「白山もち」等、同じ米でも多様なニーズに対応できるようにしている。"
六星社員の集合写真と商品別売り上げ構成比
新たな顧客層を開拓するブランド戦略
主力商品である餅は、地元の伝統である塩味をきかせた餅で全国的にも珍しく、石川県特有の文化である紅白の丸餅も首都圏で人気が高まっている。しかし、少子高齢化や核家族化等、ライフスタイルが変化する中で、若い人の「米離れ」、「餅離れ」に危機感を抱くようになった。そこで、若者、特に若い女性をターゲットとして美味しいだけでなく、「おしゃれ感」を前面に出した和菓子ブランド「豆餅すゞめ」や、お土産や贈答用の「六星のお福分け」等、斬新なデザインパッケージやコンセプトによって新しい顧客層を開拓している。また、当社は米や餅、弁当やおにぎり、惣菜等を扱う大型店「むっつぼし」や、餅や和菓子を主体とした小型店「すゞめ」等、多様な形態による店舗を展開しており、餅・弁当・惣菜は添加物不使用で、「できたて」にこだわっており、生産者ならではのブランド戦略を展開している。
新たなターゲットの開拓に向けた斬新なデザイン
輸出を視野に入れた海外のマーケットの開拓
現在、世界的に和食ブームとなっており、その追い風に乗って海外のマーケットの開拓にも取組んでいる。特に、世界の先端をいくニューヨークでは餅つきイベントや試食・販売を行い、ただ商品を販売するのではなく、米や餅の食べ方まで提案している。その活動が功を奏し、カルフォルニア州を中心に店舗展開する日系スーパー「Mitsuwa Marketplace」との取引も始まっている。筆者は昨年11月、カルフォルニア州のトーランスにある「Mitsuwa Marketplace」で日本食イベントを開催したが、実際に「サトウのごはん」の隣に当社の商品が並んでいた。トーランスには日系人が多く住んでおり、当然、米や餅には馴染みがある。西海岸では日系人も含め、韓国系、中華系をターゲットとして米・餅文化の発信をしていくことで、さらなる販路の拡大にも繋げている。
海外での餅つきイベントと販路開拓
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