6次産業化によって地域にお客様を呼び込む方法の一つとして、農家レストランという形態がある。全国には決して交通の便が良いとは言えない場所でも多くのお客様が訪れる農家レストランがある。そういった農家レストランの取組みから導き出される成功ポイントとして、①共感を生むストーリー性、②地域の特性を活かした料理形式、③心あたたまるおもてなしの3点を挙げたい。
共感を生むストーリー性
お客様にわざわざ遠くから自社の農家レストランに足を運んでいただくためには、その地域ならではの共感できるストーリーによってお客様を魅了することが大切である。
三重県多気郡多気町で㈲せいわの里が運営している農家レストラン「まめや」は、名古屋から電車とバスで2時間以上かかる中山間地域にある。この「まめや」に土日祝日には約170名、平日でも100名のお客様が来店している。「まめや」で提供する山菜は地元の子供達が採ってきたものを買取って提供している。例えば、つくしの場合はその鞘(はかま)を取ってくることを買取る条件にしており、子供達は、おじいさんやおばあさんと一緒に作業をすることで会話が生まれ、それが伝統が引き継がれる機会となっている。「まめや」ではお客様に子供達が収穫してきた山菜を見せて説明し、また、お客様の反応を子供達に伝えることで子供達も地元を誇りに思うようになっている。このような地域での取組みそのものが魅力あるストーリーとなり、遠方からでもお客様が訪れる付加価値となっている。
地域の特性を活かした料理形式
地元に肉牛や魚介類のような特産品があれば、それらを目玉商品に利用することで集客ができる。しかし、目ぼしい特産品がなかったり、年間を通じて原材料の安定調達が難しい地域であっても、地元で手に入る材料にこだわって工夫した料理を提供することにより、付加価値を生み出すことが可能である。
福岡県の福岡市と北九州市の中間に位置する遠賀郡岡垣町に(株)グラノ24Kが運営している「ぶどうの樹」という健康ビュッフェレストランがある。岡垣町は多種多様な農産物が収穫できるが、これといった特産品がない地域であった。しかし、この特性を逆手にとり、減農薬で栽培した見た目は悪いが新鮮で美味しい野菜を地元生産者から買取り、新鮮な魚介類と一緒にビュッフェ形式で提供している。特に、新メニューの開発に向けた定期的な品評会は、社員であれば誰でもエントリーできる仕組みにしており、また、社内のみならず取引先の業者や食材を提供している生産者も参加して評価を行い、アンケート結果上位の料理が新メニューとして採用されている。
心あたたまるおもてなし
農家レストランは、お客様を接客するサービス業(3次産業)である。どんなに素材が新鮮で料理が美味しくても、店内の雰囲気や店員の対応が悪ければお客様は気分を害し、再度来店する可能性は低くなる。そのため、快適に過ごしていただけるように工夫することで、また来店したいと思ってもらうことが大切である。
鳥取県八頭郡八頭町で、鳥取県内唯一の平飼養鶏を行っている㈲ひよこカンパニーは、平飼い卵を活かした牧場スイーツを提供している「ココガーデン」を運営している。店内はオープンキッチンでゆったりと席が配置された開放的な空間となっており、平日の昼間でも多くの女性が来店している。また、ハロウィーン等、季節ごとのイベントに合わせて店内を装飾し、店員もイベントに合わせた衣装やメイクで接客して、お客様を楽しませている。2016年4月21日にはココガーデンの隣に新たにナチュラルリゾート「大江ノ郷ヴィレッジ」をオープンし、大自然を背景とした快適なリゾート空間を提供している。
農家レストランを成功に導くために
農家レストランというと、古民家を改装したレストランのイメージを持っている人も多いと思う。しかし、自分が生産している農産物やその地域性、また、誰をメインターゲットにするかによって、農家レストランの外観、料理の内容や提供の仕方は全く異なってくる。今回、紹介した3つのポイントを活かし、お客様に何度も来店していただけるような「その地域ならでは」の農家レストランを展開することが重要である。
表 農家レストランの成功ポイント
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