皆さん、はじめまして。弁護士の髙丸涼太と申します。この度、アグリウェブでコラムを執筆させていただく機会をいただきました。このコラムをお読みいただいている方は、農業経営をされている方が多いと思いますので、これから、農業経営者の方々のお役に立てていただけるような法律関係のトピックを取り上げて解説していきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
記念すべき最初のトピックは、「個人情報保護法」です。実はこれは略称で、正式名称は「個人情報の保護に関する法律」といいますが、略称の方が皆さんにはなじみがあるかと思います。
1 個人情報保護法はこんな法律
個人情報保護法は、個人情報のデータベースを事業のために使う民間事業者(「個人情報取扱事業者」といいます。)が守らないといけない、個人情報の取扱いのルールなどを定めた法律です。このコラムをお読みいただいている皆さんの中には、「これまで個人情報保護法なんて意識してこなかったよ」という方もいらっしゃるかもしれませんが、それにも無理からぬところがあります。というのは、これまでは、事業で取り扱う個人情報の数が少ない事業者は、個人情報取扱事業者に該当せず、個人情報保護法に定められた義務が課せられないことになっていたからです。特に、事業規模がそれほど大きくない方などは、これまで個人情報保護法を意識する機会があまりなかったかもしれません。
しかし、個人情報保護法は昨年改正され、個人情報のデータベースを事業のために使う事業者は、事業で取り扱う個人情報の数に関係なく個人情報取扱事業者に該当することになりました。個人情報のデータベースを事業のために使う民間事業者は皆、個人情報保護法のルールに則って事業活動を行わないといけなくなりますので、これまで個人情報保護法を意識してこなかったという方は、特に注意が必要です。改正された個人情報保護法は、遅くとも来年(平成29年)の9月までに施行されることになっています。
2 個人情報保護法は農業経営者にも関係があるの?
「個人情報のデータベースを事業のために使う」というところで、「データベース」に引っかかった方はいらっしゃらないでしょうか。「データベース」というと、大がかりなシステムのようなものを思い浮かべて、「そんなハイテクなものウチにはないから、ウチには関係ない話だね」という風に思われた方も、もしかしたらいらっしゃるかもしれません。しかし、ここでいう「データベース」は、農業経営者の皆さんが普段使っていてもおかしくないような、とても身近なものです。
例えば、取引先の人などと名刺交換をすることがあると思います。多くの場合、名刺には個人情報が書かれていますから、名刺交換によって個人情報を取得したことになります。名刺は、バラバラのままでは必要な情報がすぐに取り出せませんから、五十音順に並べて見出しラベルを付けるなどして整理している方や、名刺に書かれた情報をパソコンに入力して表(名簿)などの形にまとめたり、携帯電話の電話帳に登録したりしている方も、少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。
このような、五十音順に見出しラベル付きで整理された名刺の束や、個人情報がまとめられたパソコンの表(名簿)、個人情報が登録された携帯電話の電話帳などが、ここでいう「データベース」なのです。より詳しい内容は次回以降のコラムで解説しますが、このような「データベース」であれば、皆さんも事業のために使っているのではないかと思いますので、農業経営者の皆さんも、決して個人情報保護法と無関係とはいえないのです。
3 個人情報保護法との向き合い方
最近は、大規模な個人情報の漏えいがしばしば起こっていることもあって、個人情報の保護に関する世間(消費者など)の関心は高まっていますから、個人情報の取り扱いは事業者としての信用・評判にかかわる問題だといえます。他方、個人情報保護法のルールを誤解して、本来問題なく行うことができる個人情報の利用を控えるという現象(これは「過剰反応」と呼ばれています。)も起こっていると指摘されているところです。
農業経営者の皆さんも、個人情報保護法のルールを正しく理解して、個人情報を適正に取り扱うことが重要です。次回以降のコラムでは、個人情報保護法の具体的な内容を解説していきます。よろしくお付き合いください。
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