衝撃だった今回の食味ランキング
29年産のコメの美味しさを評価する日本穀物検定協会の食味ランキングが発表され、今回は魚沼コシヒカリが特Aからはずれる一方、12の新たな産地銘柄が特Aとなるなど顔ぶれも大きく変わった。
魚沼産コシヒカリといえば、味や食感、香りなどにおいて優れ、長く日本最高のコメとして評価されてきた。穀物検定協会が今のやり方で評価を始めた平成元年以降、28回にわたって特Aをとり続けてきたコメは魚沼コシヒカリだけで、記録的な冷夏で全国的に不作だった平成5年にもこのコメだけが特Aをとり続けた。その魚沼産コシヒカリが、食味ランキングにおいて最高ランクから滑り落ちた。そのことが何を意味するのだろうか。
コメ価格への影響は
産地や流通関係者が心配するのは、コメ全体への影響だ。3月現在の魚沼コシヒカリの取引価格は60キログラム当たり20,640円。他の産地が軒並み14,000〜15,000円台であることを考えるとダントツに高い。年々評価が高まってきた山形のつや姫が18,057円と次点なのだから、魚沼コシヒカリがいかに特別扱いされているかが分かる。
一時の異常な高値には及ばないが、それでもこのコメなら仕方ないと消費者に思わせるのが魚沼コシヒカリであり、贈答用の高級米として価格全体を牽引してきた存在と言える。
その魚沼コシヒカリの価格が、下落することになれば、コメ全体の価格を引き下げかねない。そう産地や流通関係者に不安が広がっているのである。
食味ランキングの仕組みは?
コメの消費量が減る中で、どの産地も新たな品種を導入してきている。特Aをとれば売れ行きに差が出るだけに、検査する方も神経を使わざるを得ない。不公平にならないように、検査するのは毎日午前中の同じ時間。他のコメに影響されないように、評価は基本的に
1日3種類とする気の使いようだ。評価するコメは地元が持ち込み、それを協会が買い上げる。ランクダウンの可能性のあるコメは、念のためもう一度産地からコメを取り寄せて評価するだけに、評価に疑いの余地は少ないだろう。
大きい天候要因
今回なぜ魚沼コシヒカリは特Aを逃したのか。一般的にコメの栽培は、5月の田植えから10月の刈り取りまで半年にわたって行われ、中でも稲の穂が出る出穂期と、実の中にデンプンがたまる登熟期の天候は重要だとされる。
その間の魚沼市周辺の天候、7月の下旬から8月は雨が続いて日照不足が続き、十日市市の8月は例年の7割しか日照がない。しかもこの地域、9月には低温、そして10月には台風による日照不足に襲われていた。こうした不安定な天候に当たったことが、コメの美味しさを損なったとみられている。
産地の一つ、南魚沼市の林 茂男市長は「28年続いたことが奇跡。ふんどしを締め直して取り返したい」としており、検討会を立ち上げて、原因と対策作りに力が入る。
美味しさを支える天候不順対策
今回の食味ランキングのもう一つの特徴は、その顔ぶれがずいぶん変わったことだ。今回特Aとなった全国43の産地銘柄のうち、12が特Aに格上げ、16が格下げとなった。これだけ顔ぶれが変わった年は近年無く、福井県の「ハナエチゼン」は5年ぶりに特Aに格上げした。一方で岩?・県南「ひとめぼれ」は14年ぶりに特Aを逃した。
コメの産地では積極的に天候の変化に対応する新たな品種に取り組んでいる。寒さに強い耐寒性品種。北海道産で人気の「ななつぼし」や宮城県の「ひとめぼれ」はそうした特性を備えた品種だし、青森の「晴天の霹靂」や、山形県で有名な「つや姫」などは代表的ないもち病耐性品種だ。
今年特Aをたくさん獲った「にこまる」や、「さがびより」などはいずれも高温耐性。産地では積極的にこうした品種を取り入れ、ブランド作りを進めている。
もともと国内の多くの品種はコシヒカリを元に作り出されているだけに、味は何れも問題ない。開発はむしろ、持っている食味を落とさずに、安定的にどう作るか。今後もこうした天候異変に対応する品種開発とともに、競争が激化していくのは間違いない。
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