6次産業は農場側が始めることが多い。当然工場が必要になり、新しく造ることになる。
工場を造る場合、従来からの倉庫などの中に作る場合や、新設の場合、いろいろな形があるが、衛生管理がやりやすく、そして製造効率も良い工場にする必要がある。コストパフォーマンス最高に持って行きたい。
そのために、かなり費用がかかるかと言うと、そうでもない。最初から製造動線とゾーニングを設計するなら特別な費用は必要ない。衛生管理についても、清掃洗浄しやすい構造にすればいい。
この解説では、できるだけいろいろな食品の事例を上げながら説明していく。
事例:伊万里グリーンファーム
この事例は、佐賀県伊万里にある伊万里グリーンファームで、ねぎの生産から、加工、販売までおこなっている。
農場生産でこれから必要なことは、GAP(適正農業規範、農場での一般衛生管理)が必要になってくることだ。
これは、水、肥料、農薬、圃場の清掃、害獣対策、畜産の場合は薬剤管理、といった安全管理とその記録だ。安全基準を満たした生産物と、産地偽装対応も含めたトレーサビリティになる。
GAPは2020年の東京オリンピック関連への食材食品のHACCPと併用した必須事項になっている。これはオリンピックだけでなく、このあとの一般的な購買基準になっていくだろう。
「HACCPがなぜ義務化(制度化)されるのか」だが、家庭の料理で衛生管理を怠って食中毒になるのは仕方ないが、工場や飲食店では大量の食品や料理を出荷提供するので、食中毒や怪我をする異物混入を起こさないようにする。
そこで、義務化が必要になるのだ。公共の場所での「きまり」、例えば道路には、道路交通法があり、守らなければ事故になる。
食品に関する営業は保健所の許可を得ている。これはトイレや手洗いといった常識的な基本的設備も含めたものだが、これは一般衛生管理であり、HACCPは入っていない。
これに加え、これからの義務化に繋がる「HACCP導入型基準」がHACCPを実施する軸になる。
ねぎ加工工場の図面だが、衛生管理対応と、製造効率化に対応している。
図の右に収穫したネギが入ってくる。選別し、根切りするまでが一般作業ゾーン(汚染ゾーン)で、ここで処理した生鮮ねぎのまま箱詰めされて出荷に行くルートがある。もう一つのルートは、準清潔ゾーンで一次洗浄したあと、清潔ゾーン(衛生ゾーン)に入り、カットねぎに加工される。更にここからのルートは、ドレッシングや乾燥ネギ製品へとなっていく。
http://www.imari-gf.com/
で、動画で工場内を見ることが出来る。
この工場は、乳牛生産者が作った店舗併設の加工工場で、主製品の牛乳、ヨーグルト洋菓子などの販売店と、工場の製品は多店舗に配送されている。
略図面だが、この工場の特徴は、通路が無いことだ。
通路を無くすことで、工場内を広く使えるし、通路の清掃も不要になる。製造上も待ち受けや移動の手間とコストが無くなる。
ゾーニングは、これら2つの工場とも3段階になっているが、基本的には2段階(汚染と清潔)でいい。ただ、ある程度の規模がある工場なら3段階にしたほうが、中心部の清潔ゾーンへの虫の侵入問題がほとんど無くなる。
ゾーニングの境目は、壁でなくてもよい。
パーティション(衝立)、ライン、パススルーの棚や冷蔵庫、チェーン、表示、簡易カーテンなどで出来る。
境目だが、原材料の入っているダンボールは外側が汚染されていて、虫、ホコリ、ゴミなどの問題があるので、このダンボールをどこで止めるかになる。
ダンボールを置くのは、外ともつながっているので、汚染ゾーン。その奥の製造エリアに持っていくときに、ダンボールから中の原材料を出して移動する。
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