農業と知的財産の関わりについては先回ご説明しましたが、今回はそれを踏まえて、農業分野においてどのような知的財産関係の施策が検討されているか、最新の政府の取り組みについてご紹介したいと思います。
1 知的財産推進計画について
「知的財産推進計画」というものを耳にしたことはあるでしょうか。これは、知的財産基本法という法律に基づいて、政府が知的財産の創造、保護や活用のために取り組むべき施策について定めるものです。これは、毎年定められているものなのですが、今年の5月に公表された最新の「知的財産推進計画2017」では、農業分野の知的財産についてもいくつかの施策が定められています。そう、実は農業分野における知的財産は今非常にホットな話題で、注目を集めているのです。
2 「知的財産推進計画2017」の内容
では、最新の「知的財産推進計画2017」では、どのような内容が定められているのでしょうか。
「知的財産推進計画2017」で農業関係について主に触れた部分には、「攻めの農林水産業・食料産業等を支える知財活用・強化」というタイトルが付けられています。その具体的な内容を見てみると、「日本の農産物が世界の市場で外国の農産物との競争に負けないように」という観点からの施策が多く挙げられていますので、もしかしたら「攻め」というのは、日本の農作物が世界の舞台に打って出ていくようなイメージで付けられているのかもしれません。
そして、その「攻めの農林水産業・食料産業等」を実現するための施策として主に挙げられているのは、以下のようなものです。
①農業関係の知的財産の有効活用
近年、農産物の輸出や輸入などの取引が、以前にも増して世界的に活発に行われるようになってきています。そのような中で、日本の農産物が世界で注目を受け、支持されるために、地理的表示(GI)の保護や、海外で品種登録をするためのサポートを充実させていこうという取り組みが検討されています。また、地理的表示保護制度や地域団体商標制度などを活用して、農産物のブランド化を進めていこうという取り組みも検討されています。(図1)
②JAS規格などの活用と国際化の推進
現在、一定の規格を満たした製品にはJASマークを付けることができるというJAS規格制度が設けられています。また、農産物の安全などに取り組む農場は、審査を受けて認証を取得することができるというGAP認証制度も実施されています。日本の農産物が今以上に世界的に受け入れられるように、これらのJAS規格やGAP認証を活用し、国際的に通用するようにしていこうという取り組みが検討されています。(図2)
図1:内閣府知財戦略推進事務局「『知的財産推進計画2017』概要」5ページより
図2:内閣府知財戦略推進事務局「『知的財産推進計画2017』概要」5ページより
③スマート農業の推進
日本は高齢化社会を迎えており、農業分野でも農業者の減少・後継者不足などの問題が指摘されるようになってきています。そのような状況の下で、これから農業が発展していくためには、AI(人工知能)、ICT(情報技術)、ロボット技術などを活用していくことも必要になってきます(このようなAI、ICT、ロボット技術などを活用した農業は「スマート農業」と呼ばれています。)。スマート農業の実現のために、様々な農業関係のデータが共有・活用できる「農業データ連携基盤」というものの立ち上げなどの検討がされています。(図3)
図3:内閣府知財戦略推進事務局「『知的財産推進計画2017』概要」5ページより
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