「農業法人における採用のポイント」
〜人が集まり、活き活きと働き、成長する農業法人づくり〜
少子高齢化にともなう労働力人口の減少や有効求人倍率1.59(平成30年3月期)が示すとおり、戦力となる人材確保のための企業間採用競争が激化しています。中小企業はもとより農業法人にとっても「採用が厳しい状況」となっています。
また、1人でも雇用すれば、個人・法人経営を問わず、労働基準法が適用される「労働契約」にもとづくことから法令遵守が強く求められることになります。
本コラムでは、「応募者(求職者)が会社を選ぶ現状である」との認識のもと、正しい労務管理基盤を構築したうえで、農業法人が効果的な採用をしていくためのポイントを連載してまいります。
経営計画(経営ビジョン)の策定
採用するにあたって、まず企業経営者が取り組むべきことは、経営計画を策定することです。
経営計画の策定により、将来の経営ビジョンを達成するためには、「こういうスキルを保有する人材(要員計画)」が「〇名必要である(人員計画)」ことが明確になるからです。
(例)【5年後の経営ビジョン】
<経営ビジョン達成のための組織化計画>
- 要員計画:マネジメントスキル、業務遂行スキル
技術力、資格などの保有者数計画 - 人員計画:従業員総数計画(定年等の退職予定者数を加味)
経営ビジョンを達成するための「要員計画・人員計画」により、既存従業員での不足分を補完する「要員・人員」が、自社が採用するにあたって「求める人材像・必要人員数」であると言えます。
求める人材像は「どういう人」
自社が求める人材像が、「どういう人物なのか?」を具体的にイメージするために、以下の視点で考えていきます。
①スキル(農業適性)
- 農業に従事するうえでのスキル、行動特性
- 物事への関心、ひらめき、疑問を持つ
②職務内容および役割
- 入社後、従事する仕事の内容
- キャリアプラン(勤務年数による仕事内容・役割)
③雇用形態
- 正規雇用:期間の定めのない雇用者
- 非正規雇用:期間の定めのある雇用者(有期雇用)
④新卒 or 中途採用
- 新卒:就農経験無
- 中途:これまでの職務経験、職務レベル、役職
⑤就農経験の有無
- 有:生育・栽培技術力、資格(業務実績、年数)
- 無:新規就農者 ※自社での業務指導体制が必要
⑥現在の居住地(応募者居住地の範囲)
- 地元
- 県外(Iターン、Uターン)
- 県外からの移住
⑦想定する年齢層、性別
- 若年層、中高年層
求める人材像を具体化することで、
- 人材獲得のための効果的な採用媒体
- 職務内容に応じた雇用形態、労働条件(待遇)
などの方向性が明らかになってきます。
効果的な採用媒体の選択
下図は、厚生労働省「雇用動向調査」(平成25年)の調査結果で、入職者(入社者)が、どの採用媒体を利用して入職(入社)に至ったかを示す図表です。
図1は、企業規模別に分類してあり、上表が入職者全体、下表が転職者(中途入社者)を表わしています。
99名以下の中小企業の場合、
- 「職業安定所」「広告」「縁故」が上位を占める結果となっています。
図2は、性別・年齢階級別の入職経路を示す図表です。上表が男性、下表が女性を表わしています。
男性は、
- 「広告」が、若い世代であるほど効果的
- 55歳以上は「縁故」構成比が増える
女性は、
- 各世代とも「広告」が他の媒体よりも効果的
- 55歳以上は「縁故」構成比が増える
という結果となっています。
また、性別・年齢を問わず、「職業安定所」も一定の効果が認められます。(※広告:求人情報誌、インターネットも含む)
今後の傾向として、新卒・中途採用を問わず、また性別・年齢層に限らず、「広告」をうまく活用していくことが効果的な採用媒体であると言えます。
<参考>
「効果的な採用媒体」
※執筆者の個人的見解です
(図1)入職者の企業規模別入職経路
(図2)入職者の年齢階級別入職経路
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
公開日