1.野菜の土づくりの考え方
作物は土壌に根をおろし水や養分を吸収して生長します。しかし、そこにある土壌が保持している養分や水分がどのような状態なのか、吸収する作物側の状態はどうか、など相互の関係作物の生育に深く関係しています。
特に根の活性と密接な関係がある地温や、土壌に含まれる空気、湿度、養分濃度が適正であること、さらには有害な物質がないことが重要になります。これらの状態を整えて土中に良い環境をつくるのが「土づくり」です。
まず初めに求められるのは「排水が良いこと」です。日本は長年にわたって地力保全基本事業が行われた結果、土壌の種類や地下水の状態など種々の要因が評価されたことで地域別に生産力が区分され、それぞれの土壌改良目標が設定され、それが土壌改良の基礎となっています。
例えば、多くの野菜では地下水までの土層を60cm以上確保する必要ありとされていますが、不良土壌ではそれより高い位置に地下水が上がりやすく湿害をおこしやすいところがあります。乾湿害は根に大きなダメージを与え、簡単には回復しません。下層にち密な層ができて排水が不十分になることもあります。毎年でなくても良いですが、穴を掘って土の層など土中をしっかり調べて対処するのが望ましいです。
稲の根は太くてしっかりしていますが、野菜は貧弱であり一般的に高濃度の肥料成分や水分に弱いものです(表1)。
表1 水稲と野菜の根の特徴(違い)
水田のように湛水することがないため、残った養分が失われにくく、下がったpHが補正されにくいため、次作に持ち越すことになります。また同じ作物を5年以上連作すると生育障害が発生しやすくなります。
いわゆる連作障害は土壌病害の発生などが実害ですが、その発生の背景には、養分の過剰集積や養分バランスの不均衡、pHの変化などがあり、障害のきっかけになる場合がほとんどです。野菜栽培では十分な土層の確保をしたうえで良質な堆肥など有機資材を投入し、根の活性を最大限発揮できるように土壌をつくることが大切です。
2.適正に養分を供給するために
野菜栽培では土壌養分を適性に保つことが基本です。まだ若々しい栄養生長の時期に収穫する作物(キャベツ、ダイコンなど)と生殖生長期に収穫する作物(トマト、マメ類など実を穫る作物)では養分の必要な生育ステージが異なり、その要求量に合致しないと過不足が発生し減収や品質劣化につながります。
近年、野菜栽培土壌ではリン酸やカリウムが多量に土壌に残存している場合がよくあります。高品質化をねらった堆肥など有機物の必要以上の多量、間隔を空けない継続施用などによりバランスが崩れ、土中にあっても吸えない養分が増え根を傷めることになります。
施肥や土づくりを実施する前には必ず土壌分析をし、必要な量を必要なだけ施用することを心がけてください。また投入する堆肥に含まれる窒素やリン酸、カリウムの量も前もって把握し、圃場の養分状態を想定しながら計画的に使うことが将来の圃場の保全につながります。
3.下層の物理性(硬さ、排水性、空気量など)の改善
物の生育には下層の根の発育が影響します。根が深く広く十分に張り、養水分が良好に吸収できる健全な状態であることが重要で、下層の根の発達に応じて収量や品質も向上します。
下層は根が下に伸びていくところの層(20〜30cm)で特に重要です。根は生長点に近い新しいものほど活発であり、生長が止まったら吸収する力も弱まってしまいます。下層付近の根は元気で勢いがあるため、土壌に適当な柔らかさと適度な養分、空気、水分があればいっそう活発にはたらきます。
図1はキャベツの例ですが、20〜40cmの深さでも全体の4割近い窒素成分を吸収していることが分かります。
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