こんにちは!フィデスの久保京子です。
私は消費生活アドバイザーとして、消費者目線で考えるこれからの食ビジネスのヒントをお届けします。
今や国民の半数程度に摂取されているとされる「健康食品」ですが、健康被害問題がクローズアップされています。健康食品の多くは、成分の含有量や製品全体の品質管理についての法的規制がなく、製品としての安全性や有効性の確認は製造者の自主性に委ねられています。
そのため、安全性が明らかでないものが流通する可能性も排除できない現状があります。
最近の問題では、ビワの種子を粉末にした食品から、天然の有害物質が高い濃度で検出され、製品が複数回収されています。農林水産省は2017年12月6日、「ビワの種子の粉末は食べないように」という注意喚起を行っています。
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◆ビワの種子の粉末は食べないようにしましょう
(農林水産省 平成29年12月8日)
http://www.maff.go.jp/j/syouan/seisaku/foodpoisoning/naturaltoxin/loquat_kernels.html
しかし、ネット上では、未だにレシピサイトや個人ブログに「ビワの種の杏仁豆腐」のレシピが紹介されていたり、まとめサイトではビワの種の「抗がん作用」をうたうもの、ビワの種の粉末のサプリを販売している通販サイト等が数多く見られる状況が続いています。
このような状況を受け、リスクの高い成分を含む「健康食品」による健康被害防止に向けて、食品衛生法改正が検討されています。
11月15日、厚生労働省は「食品衛生法改正に向けた懇談会」の取りまとめを公表しました。
懇談会において健康食品の健康被害防止についての提言がなされた背景として、今年7月に起きた「プエラリア・ミリフィカ」の健康被害問題があります。
プエラリア問題では、国民生活センターに、過去5年で不正出血など209件の危害情報が寄せられ、これを受けた厚労省の調査でも223件の被害事例が明らかになりました。
食品衛生法では、健康被害発生時の対応として、健康に危害を及ぼす食品の「販売禁止措置」(第6条)と「暫定流通禁止措置」(第7条)の規定があります。6条の運用は、因果関係が明確であることが必要ですが、7条は因果関係が不明瞭な場合に適用されます。
過去にも、「コエンザイムQ10」「スギ花粉」「アガリクス」等の健康被害問題がありましたが、食衛法の販売禁止や暫定流通禁止の適用はありませんでした。
(営業の自由に対し大きな影響を与える等の理由から)
「プエラリア」も同様に、食衛法の販売禁止や暫定流通禁止の執行には至らず、消費者への注意喚起と事業者への通知による安全性の対策強化のみに留まっています。このため委員の問題意識が健康食品の安全対策の不備に集中したといえます。
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◆「食品衛生法改正懇談会」の報告書を取りまとめました
(厚生労働省 平成29年11月15日)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi2/0000184683.html
◆美容を目的とした「プエラリア・ミリフィカ」を含む健康食品
-若い女性に危害が多発!安易な摂取は控えましょう-
(国民生活センター 2017年7月13日)
http://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20170713_1.pdf
◆プエラリア・ミリフィカを含む健康食品の取扱いについて
(厚生労働省 平成29年7月13日)
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11130500-Shokuhinanzenbu/pueraria-letter_1.pdf
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懇談会提言の中で、特に私が注目しているのは、食品安全に関する国民の理解促進のための「リスクコミュニケーションの強化」です。
先の報告書では、リスクコミュニケーションについて以下のように記載されています。
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リスクコミュニケーションとは、行政、消費者、事業者などの関係者が食品の安全に関する情報を共有した上で、それぞれの立場から意見を出し合い、お互いがともに考える土壌を築き上げ、その中で関係者間の信頼関係を醸成し、社会的な合意形成の道筋を探ろうというものである。----------------------------------
いわゆる「健康食品」については、誤った情報や消費者の健康食品に対する過大な期待が見られるとして、適切な情報が消費者や事業者に確実に伝わるようにすること、インターネット等に氾濫する情報について監視を行うことを求めています。
その際、いわゆる「健康食品」は食品であって、医薬品のような効能効果はなく、医薬品の代わりではないという前提を特に強調すべきであるとしています。
行政による健康食品のリスクに関する情報発信として、消費者庁は、10月に消費者向けパンフレット「健康食品Q&A」を公表。11月、12月には、消費者庁が今夏新拠点を設置した徳島県で、「健康食品の正しい利用」をテーマにした、リスクコミュニケーションのイベントを開催しています。
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◆健康食品に関するパンフレット及びリーフレットを掲載しました
(消費者庁 平成29年10月2日)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/food_safety/#pamphlet
◆食品のリスクコミュニケーション (消費者庁)
https://www.caa.go.jp/future/project/project_005/
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他方、民間の取り組みとして注目されるのは、Googleが12月6日に行った日本語検索におけるページの評価方法の大幅変更です。
これは、医療情報のまとめサイトが不正確な医療情報を量産し、検索結果を独占していたことが問題視されたことを受けての、Googleの対応策といえます。
この変更は、医療や健康に関する検索結果の改善を意図したもので、例えば医療従事者や専門家、医療機関等から提供されるような、より信頼性が高く有益な情報が上位に表示されやすくなっています。
この変更によって、情報の信頼性が疑問視されてきたメディアや記事の多くが、検索結果の上位から姿を消しています。
薬機法違反が疑われる、健康食品などを扱うアフィリエイトサイトも例外ではありません。
違法な表現、手段で顧客誘導する集客手法は、今後通用しなくなると考えられます。
ただし、この改善においても課題がない訳ではありません。現在ネット上にある「信頼できる医療・健康に関するコンテンツ」は、専門用語が多いという点です。これは、一般のネット利用者が検索で使う日常的な言葉ではヒットしにくく、内容も分かりづらいものとなっていることが懸念されます。そのため、Googleは医療関係者に、専門用語を多用せず、わかりやすい言葉で情報発信をするように、対応を求めています。
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◆医療や健康に関連する検索結果の改善について
(Googleウェブマスター向け公式ブログ 平成29年12月6日)
https://webmaster-ja.googleblog.com/2017/12/for-more-reliable-health-search.html
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検索エンジンとして不適切な情報は排除できても、信頼できる情報が一般のネット利用者に見つけられ、理解されるためには、情報発信者側の協力が不可欠です。
商品を販売する事業者も、信頼性の高い、わかりやすい情報提供を行う事業者こそが存在感を示していくことができると期待しています。
消費者に対するリスクコミュニケ―ションも重視される中、品質管理の側面だけでなく、デメリットよりも効能効果に着目しがちな広告表示のあり方にも影響を与えることになりそうです。
当該コンテンツは、担当コンサルタントの分析・調査に基づき作成されています。
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