これまで3回にわたってムスリムマーケットとハラル認証について述べてきた。今回はこれまでの統括も含めてどのようにムスリムマーケットに取組むべきかを改めて検証してみたい。
「ハラル」とはムスリムの生活全般における基準である
ハラルマーケットに向けたインバウンドの対応方向
「ハラル認証」を取得することができれば、ムスリムは安心してその商品を購入することができる。しかし、「ハラル認証」を取得したからといって必ずしも他の製品よりも高く売れるわけではない。また、認証の取得や更新の際には少なからず費用がかかることにも注意したい。
まず国内で考えて見た場合は、日本に観光に来たムスリムが購入する選択肢を提供することによって販売チャネルが増えることは間違いない。しかし、「ハラル」は食分野に限ったことではなく、生活する上での行動基準になっているので、「食」だけではなく、「宿泊」や「ライフスタイル」についても対応をする必要がある。
世界各国で異なる「ハラル認証」
「ハラル認証」について気をつけなければならないことがある。それは各事業者の事業戦略によって必要な「ハラル認証」が異なるということである。輸出向けにはインターナショナル認証や承認認証(その国が輸入を認めたハラル認証)が必要であり、日本国内の認証機関で取得した「ハラル認証」がどの国と相互認証をされているのかを確認する必要がある。そこを見落とすと「ハラル認証」は取得したものの、輸出したい国に輸出することができないというミスマッチが起きてしまう可能性がある。
輸出に向けた「ハラル認証」以外の切り口
では海外市場に進出することは不可能なのか。結論から言うと決してそんなことはない。畜産物の輸出という視点ではまだ乗り越えるべき壁はあるが、すでに日本の大手外食企業はムスリムの多いマレーシア、インドネシアにも進出をしており、成功を収めつつある。海外で成功している事例の一つが前々回に取り上げた「No Pork(ノーポーク) No Alcohol(ノーアルコール)」である。つまり、「原材料に豚肉・アルコールに由来する原材料は使用していません。」とムスリムにアピールすることが重要なのである。つまり、「ハラル認証」を取得はしていないけれども、「No Pork No Alcohol」としてトレーサビリティが確立できていれば、許容できるムスリムも大勢いるのである。
重要なことは「認証」ではなく事業戦略
図:ハラルマーケットに向けたアウトバウンドの対応方向
海外市場をターゲットにする場合に大切なことはしっかりと事業戦略を立てることである。どの国に進出したいのか、その進出したい国の所得水準やマーケット、今後の見通しをしっかりとマーケティングすることが求められる。その後、「製品(何を):Product」、「価格(誰に):Price」、「流通(どのように):Place」、「販促(どうやって):Promotion」という、いわゆる「4P」を検討したうえで、戦略に合った「ハラル認証」を取得することが重要である。
「ハラル認証」のような考え方は無宗教が多い日本人にとってはなかなか馴染まない文化かもしれない。しかし、「ハラル」をきちんと理解し、しっかりと「ハラル認証」を含めたビジネス戦略を構築することができれば、世界の4人に1人、将来的には3人に1人になりうる巨大なハラルマーケットにおいてビジネスチャンスは無限に広がっているのである。
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