消費者が直売所に求めるのは「鮮度」
農産物直売所で消費者が求めている野菜、果物は、どういうものであろうか?
以下に東京都が平成27年に消費者1,653人に対して行った生鮮食品を購入する時に重視するポイントに関するアンケート調査の結果を示す。
【生鮮食品を購入するときの重視ポイント(3つまで)】
この調査では、回答した消費者のうち86%が「鮮度」と回答しており、その割合は「価格」(63.9%)よりも20ポイント以上大きい。さらに、日本政策金融公庫が平成23年に実施した農産物直売所に関するアンケート調査結果も見てみよう。
【直売所の魅力は、どのようなものですか?】
この農産物直売所に関する調査でも、価格が低い(65.2%)よりも鮮度が良い(75.2%)を選ぶ消費者の方が多い結果となっている。ここから分かるのは、消費者は「価格」よりも「鮮度」を求めて直売所を利用している、ということである。よって、農産物直売所で何を最も訴求するべきかと言えば、「鮮度」なのである。
今、多くの直売所で非常に大きな売上を上げるカテゴリーがある。意外かもしれないが、それは「切り花」である。なぜ切り花が人気なのか、筆者はある直売所で朝一番に並んで、開店後にすぐ切り花を購入した消費者に聞いたことがある。その答えは、「この直売所の切り花は新鮮で、仏壇に飾った時の日持ちが全然違うから」というものであった。消費者は、売場での見栄えもあるが、それ以上に実生活の中で「鮮度」を理解する。それは仏壇に供えた時の日持ちであったり、冷蔵庫の中に入れた後の痛むまでの時間であったりするのである。当然ながら、「朝採りトウモロコシ」のように明らかに味で鮮度が分かるものは味で鮮度を理解するだろう。つまり、直売所で売れる商品とは、消費者にとって理解できる「鮮度」を持つもの、ということである。
「鮮度」をしっかり訴求しよう
では、鮮度の訴求はどのようにすればよいか。その答えはシンプルで、本当に鮮度の良いものは、それを正直に売場でアピールすれば良いのである。非常に勿体ないのは、本当は鮮度が良いのに、それを訴求しないことである。実際に多いのは、早朝に生産者が収穫して、それを直売所に持っていき、開店前に売場に陳列して販売している場合、それはいわゆる「朝採れ」なのであるにもかかわらず、それを全く訴求していないケースである。生産者にとって、朝に収穫し、それをそのまま直売所で販売するのは「当たり前」であり、特段アピールすることではないと思っていても、それが消費者にとっては「特別なこと」なのである。スーパーなどの大手量販店では「朝採れ」を販売することは流通システム上、難しいことも多い。そのため、生産者にとっての「当たり前」を訴求するだけでも効果がある。同様に、収穫したその足で売場に並べた商品に「本日の○○時に収穫」とPOPを付けるだけでも大きく売り上げは変わるだろう。これは、パン屋の店頭で「焼きたて」表示をするのと同じことなのである。
さらに、近隣に競合店が多く、自店舗の方が鮮度で勝っている自信がある場合は、鮮度の見極め方、つまり目利きの方法を消費者に伝えることも効果的である。「○○○(野菜の品目)の鮮度はここで見極める」といった内容の告知物を店頭に掲示し、消費者に実際に店頭で確認してもらうのである。ここでその品目の目利きの方法を知った消費者は、他店で購入する時も見るようになるし、場合によってはその知識を周囲の人に広めることもあるだろう。他店で同じ方法で鮮度を確認した消費者は、こちらの方が鮮度が良ければ必ず戻ってくる。これは、輸送経路の長い輸入品との差別化においても有効な手段である。
直売所の「売り」をどうしようか迷ったときは、ぜひ「鮮度」を一番の押しにして頂きたい。
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